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土用の丑の前日に

 15年くらい前からだろうか、鰻はコンビニやスーパーでは買わず、外で食べるときも専門店でしか食べない――と決めている。鰻が好きすぎて、食べるのをやめることはできないが、専門店だとまず高いから、自動的に「たまーにしか食べられない」という状態になるので……という計算だ。

 仕事をしたりして長居するいきつけの蕎麦カフェは、私の住む稲毛駅近辺よりも新検見川よりにあるので、常連さんたちもそちらの地域の人が多い。
 で、お店の人が他のお客さんから聞いた「美味しい鰻屋」の話をしていて、検見川の小さなお店で出す鰻が美味いらしいと知った。
 詳しい話を聞くと、新検見川駅から少し入ったところにある、私も知っている通り。銭湯が最近まであったので、よく行っていたので。
 あそこにそんな飲食店あったかな? と思っていたら、どうやら魚屋さんが併設している魚介専門の飲食店らしい。今は魚屋はやめてしまって、年配の御婦人が一人で居酒屋兼魚介料理店を切り盛りしているらしい。仕入れのルートは魚屋さんのころからのものがあるので鰻も生きたのを仕入れて店で割いて蒸して焼いているとのこと。ネットで調べても、Googleマップには検索しても出てこないし、食べログでも店があることぐらいしかわからない。常連さんだけが利用する隠れ家みたいな店なのだろう。
 でも鰻だし。安いらしいし。気になったから、帰ってから電話してみた。ダメ元で~と。
 そしたら女将さんが電話に出てくれて、丑の日は無理だけど、前日の土曜日なら昼間に大丈夫――とのこと。土曜はオンラインで地球防衛軍6をプレイする約束をしているので、後があって時間に追われるが仕方ない。さっそく予約した。
 スクーターで新検見川に向かう。うろ覚えで道に迷いながらも、なんとかたどり着いた。

通りかかっただけだったら、たぶん私は入れない。


 通りに面した魚屋さんはシャッターが半分くらい締まっていて、「ここから入るんじゃないんだ~」と横に入ると、くっついて建っている縄のれんの店が。ここか? ここを入るのか? ちょっと早いからまずいかな。
 と、うろうろして時間になってから、のれんをくぐる。
 お客は誰もいなくて、小さな店内はがらんとしている。
 五人くらいのカウンターと、テーブル席が二つくらい。
 年季を感じる。
 名前を告げると、もう準備を整えて待っていてくれたらしい。
 カウンターに陣取ると、「今、焼けたところですからね」と小鉢とお重がすぐに出てきて、しばらくして肝吸いも。


 酢の物と、奈良漬けと、肝吸い付き。美味かった。割いた鰻の肝吸いもついてて、3500円はまあまあま安いと思う。
 ジャズが好きな女将さんは素敵な感じで、色々と話した。こちらで40年やっているとのこと。蕎麦カフェで伝え聞いた話をしたら、そこに行っている常連からカフェのことは聞いて知っていて、誰が話したか見当がつくよ~と言っていた。
 お酒を飲みに来るのはちょっと……と話すと、土日は刺身定食のランチをやっていると言っていた。まあ、明日は鰻一色なのだろうけど……とそのときは思ったが。

 Googleマップにお店の情報を紹介して提案したら通ったので、さっそくレビューを上げておいた。
 今度はランチにでも行ってみよう。

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