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【月曜更新】 #1) 宇佐見りん 『推し、燃ゆ』 〜購入を一度ためらい、購入後も本棚で眠っていた積み本〜

月曜更新「積み本読破録」です。

「積み本読破録」

このnoteは、その時の欲求やノリで購入したはいいが、いつまで経っても読まれることなく、本棚で眠り続けている本たちを週に1冊読み進めていこうという趣旨のマガジンです。


今週読んだ一冊は・・・

宇佐見りん作 『推し、燃ゆ』



〜この本を買うまでの経緯〜


この『推し、燃ゆ』は言わずと知れた第164回の芥川賞受賞作。もちろん本屋さん巡りが好きなジャスさんの目や耳にガッツリ入ってきた小説です。その当時の自分も、当然のように本書を手に取りました。


しかしその時に思った第一印象が「ハードカバーで厚さをかさ増ししてるし、この本思ったより薄くないか???」という今思うと全力でぶん殴ってやりたいようなファーストインプレッション。


なぜなら当時の自分が読んでいた本は基本的に280〜330ページ台のビジネス書や勉強系の本ばかり。

そんな中での『推し、燃ゆ』は全128ページの1冊。本のコスパという言い方はしたくないけれど、そこに大きく心残りがあったのは事実。結果として購入に踏み切らないまま時が過ぎて行きました。


そして年が明けて2022年1月はじめに百貨店に行く機会があり、そこで再び本書との再会を果たします。

こんな積み本を紹介するマガジンを始めようと思うほどには積ん読が家に溜まり、読書の習慣も完全に吹っ飛んでいた時期だったので「むしろ今ならサクッと読める良い一冊なのでは?」という思考に切り替わり購入に至った。


そして2月28日になりました。
( 結局読まずじまいのまま )

でも読ませていただいたので、読んだ感想や個人的に思ったことなどを紹介していこうかなと思います \(( °ω° ))/ ヒサシブリノ読書タイム!!


〜風景描写が繊細で美しかった〜


作者の宇佐見りんさんは21歳、そして主人公は高校1年生の女の子。だけれど、日常で捉えている情景の解像度がとても高い。普段目にする見慣れた風景をYouTubeの144pとするならば、彼女はずっと1080pで見続けている感じ。

「寝起きするだけでシーツに皺が寄るように、生きているだけで皺寄せがくる。」

(皺←しわ)

「廊下窓から差し込む日差しが一段と濃くなり、西日に変わっていく。頬の肉が灼かれる。」

引用した文章はほんの一部しか過ぎず、じっくりと読み進めていくうちに『推し、燃ゆ』の世界にハマっていけると思った。というか、ハマった。

本を読み進めながらも一度読む手を止め、文章に書かれた鮮明な光景を脳内でじっくり想像してみるのもいい読み方かもしれない。


気になった点は他にもある。主人公が推しているアイドル「上野真幸」のことを作中では「推し」としか書かれない。きっと他の呼び名があるはずなのに。

冒頭の「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。」のように「推し」という言葉が「ジャスさん」のような固有名詞と同じ意味を持っている。なので読み進めていくと「推し=上野真幸」という前提条件が僕らの脳内に構築されていき、主人公への感情移入・主人公との感情の共有などがしやすくなっていた。


読んだ後に「また読もう」と思える一冊。



〜主人公に心情を重ねる人は要注意かも〜


一方で小説の内容的には、主人公が「毎日を生きる目的」になるほどまで熱狂的に応援し続けている推しのトラブルなどで主人公の心や肉体が削られていくお話なので、メンタルが弱っている状態でこの本を読むと逆に自分自身が病んでしまうなと感じた。(病み状態の自分だったら間違いなく気持ちが落ちていた)

自分が本書を読んでいて気持ちが若干落ちてきたなと感じた理由としては、作中内の主人公が陥った状況や境遇に対して、自分も似たような経験や事象があったな・・・と読書中なのに現実に帰ってきてしまったのが原因だと思う。

(主人公に自分を照らし合わせながら読み進めていくタイプの人間)


もちろん、気分が落ちている状態でなければ読んでほしい一冊です。話の内容がとても現代的な流れで進んでいくので本をあまり読まない人でも入り込みやすい設定になっているし。(SNSの炎上・インスタライブなどなど)


自分がはじめに購入を躊躇った128ページという少なさは一切感じなかった。

正直サクッと読める本だと思っていたけど、読んだ後はとても考えさせられる内容だった。

自分と主人公を照らし合わせて読むもよし、小説だ・ファンタジーだと割り切って読むもよし、そんな十人十色で楽しめる作品でした。


それでは、また次回。

ジャスさんのTwitter → @j_masa516

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