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福島第一原発事故の被害地やニュースに出てくる場所を訪れて写真撮ってます。 機電系から…

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福島第一原発事故の被害地やニュースに出てくる場所を訪れて写真撮ってます。 機電系からIT業界にキャリアチェンジ。 元プラントエンジニア、生産技術者。現役プログラマ・システムエンジニア。

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福島第一原発事故では官僚が緊急用システムを活用できなかった

まえがき最近、フリー記者である烏賀陽弘道氏のYoutubeチャンネルで以下の動画が公開された。 2023.5.19 フクシマからの証言3 「原子力防災」著者・松野元さん その1 福島第一原発事故以前に原発事故の進展を正確に予測できたのはなぜか ERSSというシミュレーションを国団体で扱ったから 松野さんは技術者であり、一般視聴者にはイメージし辛い内容もあったかもしれないと感じました。なのでインタビュー内容を簡単にまとめて、気になった部分に私が肉付けしてみました。 要旨

    • 『ウクライナ戦争 フェイクニュースを突破する』 レビューと私見

      総評 2022年2月に始まったロシア・ウクライナ戦争についてその全体像を捉えようとした書籍である。  この大規模な国家間戦争がなぜ始まってしまったのかについて総体的に分析できていると感じた。まず、2022年2月の侵攻が突然始まった訳ではなく、この戦争は2014年のクリミア危機・ドンバス戦争から続いていることだ。その点で筆者はこの戦争を第二次ウクライナ戦争と呼称している。  また歴史を振り返ると過去数百年間、ウクライナという空間は侵略を受け続け大国に翻弄されてきた。ウクライ

      • ロシア支援国日本、ウクライナ戦争後の日露貿易を解説する

        概要 ウクライナでは今も殺戮の応酬が続く。そして、ロシアの軍事侵略を受けるウクライナに対して日本政府が財政的、人道的支援を行っているのはご存じの通りだ。  今年5月時点で日本政府は約1兆円を財政支援し、近隣諸国や在日避難民への援助も継続している。  ただ少し前に、戦争後でも日本とロシアの貿易額は拡大しているという記事を出してそこそこの反響を得た。  なのでこのウクライナ戦争後の日露貿易について、最新の財務省貿易統計を用いて更に掘り下げる。 日露貿易は縮小、ただ戦争後で

        • 日本はロシア支援国なのか

          誤って前記事を削除してしまったので復旧させました。 はじめに2022年にロシアがウクライナに全面侵攻した第二次ウクライナ戦争から1年が経過した。 戦争当初しばらくは新聞やネットメディアの一面がウクライナで埋め尽くされた。しかし例外に漏れず大衆の関心は薄れた。 指標として、キーワード毎にどれだけ検索されたかカウントしてくれる Google Trendsというサービスがある。ここで「ウクライナ」と検索すると、1年前が100だとすると今現在は4か5程度だ。 ただ人々の興味が

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        • 書評
          4本
        • 安全保障
          5本
        • 福島原発
          6本

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          福島第一原発事故のスタディツアー記録

          まえがき2023年4月中旬、フリー記者である烏賀陽弘道氏(Note)の案内で2011年に発生した福島第一原子力発電所(福一)事故により住民が強制避難させられた地域を中心に現地を見聞することになった。 烏賀陽氏の紹介をしておくと、事故発生時から現在までの12年間、一貫して現場を取材し続けてきた数少ない記者である。 福一関連では複数書籍を出版しており(Amazonでの著者履歴)、取材経験も豊富で、福一事故により被害を受けた地域を定点観測している稀有な人物でもある。 同氏から受

          福島第一原発事故のスタディツアー記録

          書評『福島第一原発事故10年の現実』(著者:烏賀陽弘道、出版:悠人書院)

          総評 レビューが長くなったので先にまとめを書いておく。  本書は福島第一原発(以下、福一)事故から10年経過した時点での中間決算報告書だ。  ご存じの方も多いだろうが、企業の中間決算は毎年第2四半期に行われる事が多い。ただ福一については廃炉というゴールまでどんなに短くても数十年、最長シナリオでは100~300年(日本原子力学会)という時間を要する。  こうした現状を鑑みても『10年』という期間は福島第一原発事故にとっては短期的な区切りとしかならない。そういう意味でも、1

          書評『福島第一原発事故10年の現実』(著者:烏賀陽弘道、出版:悠人書院)

          書評 『世界標準の戦争と平和』 - 烏賀陽弘道

          まえがき 2021年12月23日、増補新版の『世界標準の戦争と平和 - 初心者のための国際安全保障入門』が自宅に郵送されていたのでレビューする。 総評  レビュー内容が長いので総評を先に書いておく。  本書は国際情勢の理解に必要な国際安全保障政策についての入門書だ。ロシアがウクライナを侵攻しようとする理由、尖閣諸島の係争点や根本的な知識、核保有国はなぜ核を手放そうとしないのか、米軍が沖縄にこだわる理由は何なのか。  こうした疑問が、付焼き刃的な知識ではなく根本的な土台

          書評 『世界標準の戦争と平和』 - 烏賀陽弘道

          書評 『海洋戦略入門』

          海洋戦略入門 平時・戦時・グレーゾーンの戦略 まえがき 書店を巡っていて良い本を見つけたので紹介する。  本書はアメリカ海軍大学教授である著者が海の戦略について解説した本である。なぜ海洋が重要なのか、シーパワーは何のために行使されるべきか、海軍の役割とは何なのかなど、海に関する総合入門書であると私は例えたい。  本書は軍事戦略から見た海に限らず国家発展の源泉となる貿易の観点からの海、『公共財としての海』をめぐる戦略について分かりやすく綴っている。海の歴史や国際法・概

          書評 『海洋戦略入門』

          【福島第一原発メルトダウンまでの50年】著者・烏賀陽弘道氏による復刻記念講演会記録

          まえがき 2021年11月20日(土)、山形駅近くの霞城セントラル23階にて「福島第一原発メルトダウンまでの50年」(以下、本書と呼ぶ。)の復刻記念講演会が開催された。  本書は2016年に明石書店から出版されたが、長らく絶版となっていた。そして出版から5年以上経った2021年9月、悠人書院という出版社から内容を増補した復刻版が発売された。 悠人書院『福島第一原発メルトダウンまでの50年』復刻版表紙。 本書の説明  本書は、福島第一原発(以下、福一と呼ぶ。)事故が何故

          【福島第一原発メルトダウンまでの50年】著者・烏賀陽弘道氏による復刻記念講演会記録

          福島訪問記 2021年9月(2) - 福島原発のある双葉町、飯舘村の伊藤延由さん訪問

          はじめに この記事は、福島訪問記 2021年9月(1) - 大熊町(福島第一原発所在地) の続きです。  大熊町を訪問した翌日、同町と同じく福島第一原発(以下、福一)がある双葉町を訪問した。双葉町は、私が最初に訪れた原発事故の被害場所であり、忘れられない土地であった。  前回、回ることが出来なかった場所を中心に歩き回り、写真を撮りまくった。相変わらず、行く度に生気を失われていく様な感覚を覚え、ここは現実なのかと疑いたくなる。  双葉町の地図を示す。赤丸は福一。  双葉町

          福島訪問記 2021年9月(2) - 福島原発のある双葉町、飯舘村の伊藤延由さん訪問

          福島訪問記 2021年9月(1) - 大熊町(福島第一原発所在地)

          はじめに2021年9月下旬、福島第一原発(以下、福一)の所在地である大熊町と双葉町、そして飯舘村や浪江町を訪問した。前者2町はもちろんのこと、飯舘村や浪江町も放射能汚染され、現在でも立ち入りが制限されている。その実情を、この目で確かめたくなった。 2020年における避難指示区域 - 福島県HP https://www.pref.fukushima.lg.jp/img/portal/template02/hinanshijikuiki20200310.pdf 今回の訪問につ

          福島訪問記 2021年9月(1) - 大熊町(福島第一原発所在地)

          東京五輪開催1週間前の見聞録

          はじめに東京五輪開催の1週間前である7月16日金曜日。休みが取れたので、東京五輪開会式会場であるオリンピックスタジアム周辺、月島にある五輪選手村などを散策した。 理由としては、都民や国民の税金の使い道を知りたくなったから。コロナウィルスで国民が苦しんでいる中、東京都と国、JOCやIOCは何をしようとしているのか見届けなければという思いがあった。 最初に断っておくが、私は五輪に全く興味が無い。五輪開催に賛成・反対もしていない。というかスポーツ全体に無関心だ。 ただ、3兆円とい

          東京五輪開催1週間前の見聞録

          素人の福島被災地訪問記 無人の双葉町~伝承館~津波で壊滅した沿岸部

          はじめに 2021年3月中旬、福島第一原発(福一)の所在地である福島県双葉町を訪問した。  きっかけは単純で、東日本大震災から10年という節目を迎えたこと。福一に関する書籍やネット記事も読んでいたので、それに感化されてということもある。  初めに断っておくが、私は素人だ。原子力学科出身でも、地質学者でも、何らかの専門家でもない。  この記事はその素人が書いた訪問記録であるが、私が最も伝えたいことから先に書く。  被災地、とりわけ原発近くの場所ほど復興などしていない。復興とい

          素人の福島被災地訪問記 無人の双葉町~伝承館~津波で壊滅した沿岸部