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電気的地球科学への招待②ー空洞地球

現在の科学では地球内部には地表にあるよりも密度の高い岩石と金属が充満していると考えられています。その根拠として重要なキャベンディッシュの実験があります。18世紀末にイギリスで2番目に金持ちだったキャベンディッシュが行った地球の比重を測る実験です。しかし、この重要なキャベンディッシュの実験には問題があると指摘されています。また、国際宇宙ステーションで行われた微小重力下での物体の回転実験は、意外な結果をもたらしています。液体の入った容器はうまく回転しないのです。地震の解析からも地球内部は従来考えられていたものとは大きく違うようなのです。
人類が実際に地球を掘ったのは、たった12キロメートルの深さでしかありません。地球の半径6378キロメートルあるうちの12キロメートルです。地球内部の大部分はわかっていないのが現状です。この巨大な岩石の塊の中をいくつかの証拠から新たに予想してみます。


地球内部はどのようにして予想された?

現在の地球科学では、地球内部には物質がみっしりと詰まっていると予想されています。図にしたイメージは次の通りです。

予想されている地球の内部構造
wikipediaより

もう少し詳しく紹介すると、まず、地球の半径は約6360キロメートルです。地球全体の比重は約5.5と推定されています。地表から5~70キロメートルが地殻です。この地殻は私たちが目にする岩石、玄武岩、花崗岩などで形作られています。比重は2.7~3程度です。地殻の下70~2890キロメートルにはマントルが存在します。マントルは主にカンラン石という比較的比重の重い岩石で、3.3程度です。マントルの更に下、2890~6360キロメートルには比重が11の核があります。核は外核と内核に分かれていて、内核は鉄、ニッケルの固体ですが、外核はそれらが溶けた液体だと考えられています。

Wikipediaより

人類は12キロメートルしか掘ったことがないのに、どうして内部構造がわかるかといえば、2つの理由があります。一つは、地球の比重を測ったとされるキャベンディッシュの実験です。現在も18世紀末のキャベンディッシュと同じ方法で重力定数ーGが測定され、Gから地球の比重が推定されています。地球の比重、5.5は次のような方法で測定されています。

キャベンディッシュの実験を簡単に説明すると、160キロの鉛の玉と700グラムの鉛の玉を近づけ、それぞれの玉が発生するはずの重力によって引き合う様子を、ねじり天秤という非常に敏感な測定装置で観測します。ねじり天秤は電荷の力を測定したクーロンが考案した測定装置です。ワイヤーがねじれるときに生じる振動を測ることで、そこに加えられた力を推測できます。

キャベンディッシュの実験装置
wikipediaより

ところがこのキャベンディッシュの実験には大きな間違いがあるようなのです。

間違いに気がついたファラデー

ファラデーは19世紀に活躍したイギリスの大実験家です。ファラデーは電磁誘導など電気に関する研究で知られていますが、晩年を重力の研究に注力したことはあまり知られていません。ファラデーは実験の名手でしたが、数学の教育を受けておらず、自身が行った実験結果を数式にまとめないままでした。そうしたときにマクスウェルが王立協会から派遣されます。マクスウェルはファラデーの実験やアンペールなどほかの実験家の成果をまとめて、電磁方程式を完成させます。実験結果をまとめるのはファラデーに対してが最初ではなく、じつはそれ以前にもキャベンディッシュの実験ノートをまとめる仕事をマクスウェルは請け負っていたのです。
ファラデーの元にマクスウェルが来たのは19世紀中ごろです。そのころからファラデーは重力研究を始めたのです。
歴史には残っていませんが、ファラデーはマクスウェルからキャベンディッシュの実験を聞いたのではないかと推測できます。じつはこのころ、ファラデーは鉛が反磁性体であることを発見していました。おそらくキャベンディッシュの実験でねじり天秤が動いたのは、反磁性のせいだと直感したのです。
ファラデーの重力実験は、大気中に流れているはずの微弱な電流を検出することでした。高所からコイルを落下させることで電流を検出しようと試みますが、結果は否定的でした。それでもファラデーは重力が電磁気力であることを確信していたと伝わっています。(参考「ファラデーの電磁気学研究における力・力能・粒子」夏目賢一)
現在では大気中に数ピコアンペアの大気電流が流れていることがわかっています。この微弱な電流はファラデーの時代には計測できなかったのです。

キャベンディッシュの実験では鉛の質量が発生しているはずの重力を測定しているとされますが、反磁性のほうが重力より10^38倍も強い力です。また、ねじり天秤は反発力と引力を区別できません。ニュートンは重力は物の量に比例するとして、それをキャベンディッシュの実験が証明したと考えられています。質量が重力を生む、という根拠になっています。でも、電磁気力と重力ではその力の桁が違いすぎます。キャベンディッシュの実験が示したのは鉛の反磁性であると考えたほうが妥当です。

地震波による構造診断

地球の内部構造を推測できたもう一つの方法は、地震波による診断です。地球上ではほとんど毎日のように地震が起きています。この地震波の伝搬を調べることで、地球内部の構造を知ることが出来ます。

https://www-old.eps.s.u-tokyo.ac.jp/epphys/solid/earthnow.html  より

地震波は比重の違う境界で反射されます。硬い領域では速度が速く、柔らかいと遅くなります。この性質を利用して、地球内部を推測したのが上の図です。マントルは地震波の速度が上部と下部で変化します。また、外核と内核では速度が遅くなり、減衰が大きくなります。このため、マントルは固体、外核は液体、内核は固体と推測されているのです。
この地震波による領域の変化にキャベンディッシュの実験で分かった地球の比重を合わせて、最初に説明したような地球の内部構造が考えられているのです。しかし、キャベンディッシュの実験では質量が発生するはずの重力を測定しているのではないことがファラデーの反磁性の発見でわかりました。地球の比重は5.5ではありません。もうひとつ重要な実験があります。

微小重力下での回転運動

国際宇宙ステーションではさまざまな実験が行われ、公開されています。下の動画はステーション内部で微小重力を利用して行われた物体の回転運動を示したものです。

この動画では、本や空の容器などいろんなものを回転させてその様子を見ています。興味深いのは内部に液体を入れると回転が不安定になることです。固ゆでの卵と生卵を回転させると生卵は回した直後に回転が不安定になります。
このことから、微小重力下では内部に液体があるとうまく回転できないことがわかります。つまり、地球内部に溶けた金属があると自転がおかしくなるのです。
地球の核は液体ではありません。すると地震波の解析から地震波が減衰しているのは液体ではなく、気体であることになります。地球内部には広大な空洞が存在するのです。
同じ国際宇宙ステーションでの実験では、水の玉を回転させる実験も行われています。

水玉を回転させると中心に円柱状の気体の柱が浮かんできます。遠心力が働くと軽い気体は中心に集まってきます。この動きを頭に入れ、地球内部を電磁流体としてシミュレートした図を見てください。

地球の内部構造をMHD(電磁流体)モデル解析で示した図

電磁流体というのは、プラズマのように構成する要素が電気を帯びている状態のことを指します。
岩石は電気を溜める性質を持つ誘電体です。地球内部が空洞であるとすると地球内部に重力は働いていません。地殻の表面だけを重力が押さえつけ、その内部は電気的反発力で押し広げている状態です。地球は電気的に球体を成していると考えられます。

質量は重力を生まない。地球内部に空洞がある。では重力はどのような仕組みで発生しているのでしょうか? 次回は重力の仕組みを解説します。

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