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生成AI(Stable Diffusion)による生成画像の著作物性を認めた北京インターネット裁判所判決の日本語訳(仮)


2023年12月1日に中国は北京インターネット裁判所が下した判決は、生成AIによる生成画像の著作物性を認めたものとして話題になりました。



日本では、この判決文の概要の情報はある程度広まっているのですが、実際の判決文の内容に言及している投稿・記事は本日(2023年12月5日)現在見られないようなので、私訳ではありますが、判決文の内容を紹介しようと思います。
(もし、翻訳に不自然な点・誤りがあれば指摘いただけると幸いです。)


※中華人民共和国著作権法(中国著作権法)の条文の翻訳は、CRICホームページ(https://www.cric.or.jp/db/world/china/china_c1.html)を参考にしました。

※判決文のページに合わせて翻訳しています。なお、本判決自体は著作物には該当しないようです(中国著作権法5条1号参照)。また、適宜体裁を整えていますので、本文とはやや体裁が異なります。

※判決文中の画像(図1~図6)はこの判決が掲載されているサイト(AI生成图片著作权侵权第一案判决书 (qq.com))を参照してください。
もし問題なければ、この記事に貼り付けたいとは思いますが…

※人名はマスキングしています。


判決文本文


北京インターネット法院

民事判決

 

(2023) 京0491 民初11279 号

 

 

原告:李●●、男、(以下住所)

訴訟代理人:●●弁護士(北京●●法律事務所)

訴訟代理人:●●●弁護士(北京●●法律事務所)

被告:劉●●、女、(以下住所)

 

原告李●●と被告劉●●は、著作物の氏名表示権、情報ネットワーク送信権の侵害紛争事件を裁判所に2023年5月25日にて提起した後、法律に従って、合議体を形成し、通常手続を適用し、公判前整理手続の後、2023年8月24日公開法廷で審理を行った。 原告李と原告訴訟代理人弁護士●●、●●●、及び被告劉●●は裁判所の電子訴訟プラットフォームのオンラインを介して手続に参加した。 この事件は現在終結している。

 

原告李は当裁判所に以下の請求を提出した:

1.被告が原告に対してBaiduにて謝罪声明を発表し、その権利侵害行為の原告によってもたらされた影響を排除することを命ずるよう求める。

2.被告に対し、5000元の経済的損失を原告に賠償するよう命ずることを求める。

事実と理由:原告は、2023年2月24日、オープンソースソフトウェア「Stable Diffusion」を使用し、プロンプト方式で指示を入力して当該画像を生成し、「春風が優しさを運ぶ[春风送来了温柔]」と称する画像を小紅書[小红书]プラットフォーム[1]に掲載した。


[1] 中国のSNSおよび電子商取引プラットフォームサービスである。Instagramに近い。


(2頁)

また最近、原告は、Baiduアカウント「我是云开日出」が2023年3月2日に「三月の恋、桃の花に[三月的爱情,在桃花里]」と題する記事を掲載し、同記事に本件写真が使用されていることを発見した。被告は原告の許諾を得ず、小紅書プラットフォーム上で原告の署名入りウォーターマークを切り取ったため、関連ユーザーは被告が著作者であると誤信し、原告の氏名表示権及び情報ネットワーク送信権を著しく侵害した。被告は原告の経済的損失を補償し、影響を排除するために謝罪すべきである。 以上のように、原告は法律に従って裁判所に提訴し、裁判所に請求通りの判決を求めた。
 
被告劉●●は、私はインターネット検索で本件画像を入手し、「三月の恋、桃の花に[三月的爱情,在桃花里]」というオリジナルの詩歌の挿絵[配图]として使用したのであり、本件画像の具体的な出典を提示できず、また当該画像のウォーターマークが付せられた事情を説明できず、原告が本件画像の権利を享有するかどうかは不確定であると主張した。 被告の投稿は主にオリジナルの詩であり、本件画像ではなく、かつ商用利用ではなかったため、権利侵害の故意はなかった。裁判所が権利侵害を構成すると判断した場合、被告は原告に謝罪する意思があるものの、原告の請求する経済的賠償額は高額に過るものであり、AIが作成した画像の市場価格は非常に低く、さらに被告は重病に罹患しており、賠償金の支払能力がない。 以上により、裁判所は判決の実際の状況を考慮することを請求する。
 
当事者は訴訟請求をめぐって法律に従い証拠を提出し、当裁判所は証拠交換と反対尋問を指揮した。当事者間で争いのない証拠について、当裁判所はこれを確認し、証拠カードに記載した。 当裁判所は、本件の事実を以下のように認定する。
 
原告は、2023年2月26日、自身の小紅書アカウント「董二千」(小紅書No.●●●)に、「春風は優しさを運ぶ[春风送来了温柔]」というタイトルで、


(3頁)
本件写真(図6参照)を投稿し、その中には本件画像の他に5枚の画像も含まれており、「#AI #[トピック[话题]] # #AIイラスト[AI 插画] #AI絵画[AI 绘画] #ポートレート[写真] #女の子[少女] #撮影[摄影] #春[春天] #美人[美女]」と表示されていた。裁判所が両当事者の検証を整理した結果、原告は携帯電話番号から認証コードを取得することで、本件アカウントにログインし、本件画像の投稿を閲覧することができた。
 
原告は、本件画像は2023年2月24日にソフトウェア「Stable Diffusion」によって生成されたと主張し、本件画像の生成過程を再現した動画を提出したが、その具体的な手順は以下のとおりであった。
 
1.bilibiliのサイトを開き、「秋葉aaaki」というユーザーを検索し、「【AI アート】Stable Diffusion 整合包v4. 2 发布!全新加速解压即用防爆显存三分钟入门AI 绘画...」というタイトルの動画を視聴し、動画の下に用意されているウェブリンク「https://pan.baidu.com/s/lsVmVqA2CGUsZwyRdjoASVg」を開き、「sd-webui-aki-V4.2.7z 」のzipファイルをダウンロードする。解凍し、「利用規約[用户协议].txt」を開き、以下のように表示される。「本MOD[整合包]は、Github上のオープンソースプロジェクトStable Diffusion Webuiに基づき、アルゴリズムの実行環境を提供するAIGC技術学習にのみ使用されます。本MODの利用は、以下の利用規約を読み、同意したことを意味します。利用者は、次の各号のいずれかに該当する行為、および法令違反を助長する行為を行ってはなりません。憲法の基本原則に反する行為、国家の安全を危殆化する行為、国家機密の漏洩、国家権力の転覆、国家の統一を破壊すること。国家の名誉と利益を毀損する行為。民族憎悪、民族差別を扇動し、民族の団結を破壊すること。」


(4頁)
国家の宗教政策を毀滅させ、カルト宗教や封建的迷信を広めること。 社会秩序を攪乱し、社会の平穏を損なう風説を流布すること。 わいせつ物、ポルノ、賭博、暴力、殺人、テロ、犯罪の教唆を流布し、他人を侮辱・中傷し、他人の正当な権利・利益を侵害すること。「 7つの基本方針[七条底线]」[1]に反する行為を行うこと。 その他、法令および行政法規で禁止されている内容を含むこと。 データの生成、収集、処理、利用において法令違反があった場合、その結果と責任はすべて利用者が負うものとします。」

 2.「A Launcher.exe[A 启动器.exe]」を開くと、図1に示すようなメインページが表示される。 バージョンを選択した後、One-Click Launcher[一键启动]をクリックする。

(図1)


3.bilibiliのウェブサイトに戻り、ユーザー 「K43」を検索し、


[1] 「七つのボトムライン」とは、2013年に国家インターネット情報弁公室が主催した「インターネット著名人の社会的責任に関するフォーラム」においてインターネット著名人が合意したもので、ネットユーザーが守るべき7つの原則が提示された。その内容は、https://baike.baidu.com/item/%E4%B8%83%E6%9D%A1%E5%BA%95%E7%BA%BF/9376709



(5頁)
「Stable Diffusionに最適化されたリアルな融合モデル あなたの絵でもっとキレイなアジア人、中国人風美少女を出力させる」という記事にあるURL「https://huggingface.co/dcy/AsiaFacemix/tree/main 」をコピーし、ブラウザで開き、モデルパッケージ 「AsiaFacemix-pruned-fix.safetensors」と「lora-hanfugirl-vl-5.safetensors 」をダウンロードする。
 モデル 「AsiaFacemix-pruned-fix.safetensors 」をフォルダ 「models」の 「Stable-diffusion」に移動した後、ランチャーのモデル(Stable-diffusionモデル)を次のように変更する。 「AsiaFacemix-pruned-fix.safetensors 」に変更する。 モデル 「lora-hanfugirl-vl-5. Safetensors」をフォルダ 「extensions」―「sd-webui-additional-networks」―「models」
―「lora」に移動する。 ランチャー「Additional -Networks」のモデル1を「lord-hanfugirl-vl-5.safetensors」に変更する。
 
 4.ポジティブ・プロンプトを以下のように入力する。「(ultra photorealistic:1. 3), extremely high quality highdetail RAW color photo, in locations, japan idol, highly detailed symmetrical attractive face, angular simmetrical face, perfect skin, skin pores, dreamy black eyes, reddish-brown plaits hairs, uniform, long legs, thighhighs[sic], soft focus, (film grain, vivid colors, film emulation, kodak gold portra 100, 35mm, canon50 fl.2), Lens Flare, Golden Hour, HD, Cinematic, Beautiful Dynamic Lighting"。中国語では、「(超逼真照片1: 3), 超高品质高细、


(6頁)

节的原始图像数据处理格式彩色照片,外景,日本偶像,高度细节对称且迷人的脸,棱角匀称的脸,完美的皮肤,皮肤毛孔,梦幻般的黑眼睛,红褐色的辫子,均匀,长腿,长筒袜,软对焦,(胶片纹理,生动的色彩,胶片仿真,柯达黄金肖像100. 35mm,佳能50 ft. 2), 镜头光晕, 黄金时间,高清,电影, 美丽的动态灯光)である。ネガティブ・プロンプトを以下のように入力する。「“((3d, render, cg, painting, drawing, cartoon, anime, comic: 1. 2)), bad anatomy, bad hands, text, error, missing fingers, extra digit, fewer digits, cropped, worst quality, signature, watermark, username, blurry, artist name, (longbody) , bad anatomy, liquid body, malformed, mutated, bad proportions, uncoordinated body, unnatural body, disfigured, ugly, gross proportions, mutation, disfigured, deformed,(mutation),(child: 1.2), b&w, fat, extra nipples, minimalistic, nsfw, low-res, bad anatomy, bad hands, text, error, missing fingers, extra digit, fewer digits, cropped, worst quality, low quality, normal quality, jpeg artifacts, signature, watermark, username, blurry, disfigured, kitsch, ugly, oversaturated, grain, low-res, Deformed, disfigured, poorly drawn face, mutation, mutated, extra limb, ugly, poorly drawn hands, missing limb, floating limbs, disconnected limbs,



(7頁)
malformed hands, blur, out of focus, long neck, long body, ugly, disgusting, poorly drawn, childish, mutilated, mangled, old, surreal, text, b&w, monochrome, conjoined twins, multiple heads, extra legs, extra arms, meme, elongated, twisted, fingers, strabismus, heterochromia, closed eyes, blurred, watermark, wedding, group, dark skin, dark-skinned female, tattoos, nude, lowres, bad anatomy, bad hands, text ,error, missing fingers, extra digit, fewer digits, cropped, worst quality, low quality, normal quality, jpeg artifacts, signature, watermark, username, blurry」。中国語では、((( 3d ,渲染,例如: 绘画, 素描, 卡通, 动漫, 漫画1. 2))' 糟糕的恃剖结构, 糟糕的手,文字, 错误,缺失的手指, 多余的数字,更少的数字,裁剪,最差的质 量,签名,水印,用户名,模糊,艺术家的名字, ( 长体),糟糕 的觯剖结构,液体,畸形,突变,糟糕的比例,不协调的身体, 不自然的身体,毁损,丑陋,粗大的比例.突变,毁损,变形, (突变), (儿童:1. 2) 黑与白,脂肪,多余的乳头,极简主 义,不适宜工作场所,低分辨率,糟糕的解剖结构, 糟糕的手, 文字,错误,缺失的手指,多余的数字,更少的数字,裁剪,最 差的质量、低质量,正常质量,jpeg伪影,签名,水印,用户名, 模糊,毁容,媚俗,丑陋。过饱和,纹理,低分辨率,变形,


(8頁)

毁容,没画好的脸,突变,突变,多余的肢体,丑陋,没画好的手, 缺失的肢体,漂浮的肢体,断开的肢体,畸形的手,模糊,失焦, 长脖子,长身体,丑陋,恶心,画得不好,幼稚,残缺,支离破 碎,显老.超现实的,文本. 黑和白单色,连体双胞胎,多个头 部,多余的腿,多余的手臂,模因,拉长,扭曲,手指,斜视, 异色,闭上眼睛,模糊,水印,婚礼,团体,深色皮肤,深色皮 肤的女性,纹身,裸体,低分辨率,糟糕的觯剖结构,糟糕的手, 文字,错误,缺失的手指,多余的数字,少的数字,裁剪,最差 的质量, 低质量,正常质量,Jpeg伪影,签名, 水印,用户名, 模糊。その中のネガティブ・プロンプトである、「((3d, render, cg, painting, drawing, cartoon, anime, comic: 1. 2))」は彼が自ら編集したものだが、それ以外のネガティブ・プロンプトはすべて、フォーラムでユーザーが共有したプロンプトの内容をそのままコピーしたものである。
 
 5.反復ステップ数を33、高さを768、プロンプト誘導係数を9、乱数シードを2692150200に変更し、「生成」ボタンをクリックする。操作インターフェイスを図2に、生成結果を図3に示す。


(9頁)

(図2)


(図3)


6.上記のパラメータは変更せず、「Additional-Networks」のモデル「lord-hanfugirl-vl-5.safetensors」のウェイトを0.75に変更した。 結果を図4に示す。


(10頁)


(図4)

7. 上記のパラメータは変更せず、乱数シード値を2692150199に変更した。生成結果を図5に示す。


(図5)

8.上記のパラメータは変更せず、ポジティブ・プロンプトに「shy, elegent, cute, lust, cool pose, teen, viewing at camera, masterpiece, bestquality(中国語では、害羞、优雅、 可爱、情欲、酷姿势、青少年、机前浏览、杰作、最佳质量。)」を追加した。生成結果は図6に示すとおりであり、この画像が本件画像である。


(11頁)

(図6)

 原告の画像は、法廷内での検証の後、個々のプロンプトあるいはパラメータを変更することにより、その画像生成の結果は同一にはならなかった。
 
 原告は、本件画像は美術の著作物であり、仮に裁判所が美術の著作物に該当しないと判断した場合には、「著作物の特徴を満たすその他の知的生産物」であると主張した。 原告は、以下の点で、本件画像は独創性が表現されており、美術の著作物に該当すると主張した。

 第一に、モデルの選択と選定である。 Stable Diffutionソフトウェアの描画の原理からすると、その本質は、すでに高度にぼやけさせたモザイク画像を、ユーザーによって入力されたプロンプトと組み合わされたモデルを介して、解釈・創作することであり、そのモデルは、画面での最終的な生成のために利用可能な素材を決定し、作品の全体的な芸術的な種類とスタイルなどに影響を与えることができる。現在、インターネット上には、オープンソースの作成者によって提供されている数万もの無料モデルがあり、そのすべてをインターネットからダウンロードすることができる。したがって、作品制作時点において、使用されるモデルは、ユーザーが自由に選択することができることに基づき、具体的にどのモデルを使用したのか、ユーザーの美的趣向の決定に基づいている。


(12頁)

 第二に、プロンプトとネガティブ・プロンプトの入力である。入力されたプロンプトの語彙から、原告が選んだプロンプトのフレームワークは、ジャンル[艺术型型]+主体+環境+構図+スタイルである。ジャンルとは、水彩画、イラスト、ピクセルアート、フィルムアートなど、作品の種類を意味し、主体とは人物、物体、動物などのことであり、環境とは、被写体が置かれている環境を意味し、さまざまな自然環境や照明効果などが考えられる。 構図とは、カメラのピントがどこに合っているか、被写体がどこを向いているかを指す。 スタイルとは、時代や参照したアーティストなど、いくつかの要素を含む。 本件画像において、原告は、夕暮れの光の下で、写真風の美しい女性のアップを表示するようにプロンプトの言葉を入力したが、これは原告の美的趣向を伝えるものであった。 したがって、プロンプトのジャンルは「超リアル写真」、「カラー写真」、被写体は「日本のアイドル」、顔の細部は肌、目、三つ編み等、舞台は「屋外」である。 環境は「外の風景」「ゴールデン・タイム」(日没前の1時間が光の絶好の時刻である)「ダイナミック・ライティング[动态灯光]」、構図は「クール・ポーズ」、「機械の前でじっと見つめる[机前浏览]」(カメラ目線の意味)、スタイルは、「フィルム調[胶片纹理]」、「フィルム風[胶片仿真]」など。 関連するプロンプトワードは、創作のニーズに応じて原告が選択・入力するものであり、原告の取捨選択、配置、デザインを反映することができる。
 
ネガティブ・プロンプトは、作品に現れることを望んでいないジャンル、主体、環境、スタイルやその他の要素に主な特別な重点を置いている。本件画像では写真のスタイルであり、これによって、ネガティブ・プロンプトにより原告は特に「絵画」、「アニメ」、「漫画[动漫]」など本件作品に登場させたくない言葉を追加しているが、これも原告自身の創作経験に基づいて追加されたものである。
 
 第三は、関連する生成パラメータである。このパラメータには主にサンプリング方法、明瞭度、誘導係数などが含まれ、


(13頁)
パラメータの設定が異なると、異なる描画結果が得られる可能性がある。 例えば、原告のように、アスペクト比が実際の人物写真の結果に影響を与えることを発見し、アスペクト比1:1は実際の人物のクローズアップ写真、アスペクト比3:2は半身写真、アスペクト比2:1は全身写真、アスペクト比1:2は2つの人物に表示される可能性がある等であり、これらの係数は、原告が何度も使用して実験した結果で、原告の知的労働の成果でもあり、もって原告の独創性を体現するものである。

 したがって、原告は、モデルの選択及び選定、プロンプト及びネガティブ・プロンプトの入力、生成パラメータの設定から、原告の取捨選択、配置及びデザインを反映することができ、原告の知的労働が凝縮されており、明らかに独創的であると考える。 特に、客観主義的な基準からすると、本件画像は、明らかに著作物の特徴を満たし、原告が小紅書に掲載したことで、多くの利用者が「いいね!」と見ており、一般的な基準からすると、独創性を有する著作物と認めることができる。

 被告は、2023年3月17日現在、合計21万件の「いいね!」と46,000人のフォロワーを獲得している百家アカウント「我是云开日出」(百家ID:●●)の登録者及びユーザーであり、被告は、同アカウントを通じて、2023年3月2日、「三月的爱情,在桃花里」と題する記事を掲載した。当該文書の内容は被告自身が執筆した詩であり、そのイラストとして5枚の画像を使用したが、そのうちの1枚目が本件画像であり、ウォーターマークは表示されていなかった。記事に対するコメント数は26件であり、記事下部には「詩作者/我是云开日出,图剪映[1]/我是云开日出,インターネットからの素材のため、著作権を侵害していれば削除します。大変申し訳ございません。[素材来自网络侵删致歉]」という文章が掲載されていた。質問の末、被告は画像のソースを説明することはできなかった。



[1] 「剪映」とは、中国でリリースされている無料動画編集アプリである。


(14頁)
 原告は、被告が小紅書プラットフォーム上で署名入りウォーターマークを除去したと主張し、小紅書から本件画像をダウンロードする過程を撮影した動画を提出した。この動画によると、本件画像をダウンロードして再度開くと、「小紅書」と「●●」(「小紅書」はプラットフォームの名称)のウォーターマークが含まれていた。 同動画によると、本件画像をダウンロードし、再度開いたところ、「小紅書」と「●●」というウォーターマークが含まれていた、 「●●」は小紅書プラットフォームがユーザーに割り当てた番号である。質問に対し、被告は、本件画像からウォーターマークを削除したかどうか記憶にないと述べた。
 
 原告は、被告が無断で本件画像を使用し、プラットフォーム上の署名入りウォーターマークを削除したため、原告の氏名表示権および本件画像の情報ネットワーク送信権を侵害したと主張した。
 
 さらに、原告は「CreativeML Open RATL++-M Licence」をGitHubコミュニティの「Stable diffusion」にアップロードしたが、それは「6. The Output You Generate. Except as set for thherein, Licensor claims no rights in the Output You generate using the Model. You are accountable for the Output you generate and its subsequent uses. No use of the output can contravene any provision as stated in the license.(6.生成された出力。 本使用許諾に別段の定めがない限り、ライセンサーはモデルによって生成された出力の使用についていかなる権利も主張しない。 ユーザーは、生成された出力およびその後の使用について責任を負うものとする。 出力の使用は、ライセンスのいかなる規定にも違反してはならない。)という内容であった。


(15頁)
 質問に対し、原告は、経済的損失の請求の根拠は、学習ソフトの費用、自らの知的創造の投入、本件画像の美観、被告のフォロワー層、権利侵害の状況等を考慮した法定賠償であると述べた。

 被告は、AIが生成した画像の市場価格は低いと主張し、以下の証拠を提出した。

1.闲鱼[1]プラットフォームの商品情報のスクリーンショットで、「1万2000枚以上の美女のAI画像...」という商品の価格は9.9元であった。 商品「約2万枚のAIキャラクター画像...」は4.99元で販売されている。商品 「3元で一組のAI世代の出力画像、一つの送信で...」の 価格は3元である。

2.拼多多[2]プラットフォーム商品情報スクリーンショットでの、商品「AIアバターカスタム実物写真30枚肖像アニメQ版手描きアバター制作ディズニー風」の販売価格は5元である。

3.知乎[3]ユーザーの「圈圈」による記事「美女のAI壁紙画像100枚、ウォーターマークなしで撮影」のスクリーンショット。

4.图虫[4]サイトのスクリーンショット。画像1枚が40元、画像5枚が130元、画像10枚が230元で販売されている。

 

 以上の事実は、本件画像のオリジナル電子ファイル、小紅書のスクリーンショット、本件画像の生成過程の再現動画、小紅書のダウンロード過程のビデオ、咸鱼[5]プラットフォームのスクリーンショット、拼多多プラットフォームのスクリーンショット、知乎記事のスクリーンショット、图虫のスクリーンショット等及び当事者の供述並びに公判前会議録及び公判調書によって裏付けられる。

 当裁判所は、原告および被告の主張と認定された事実に基づき、本件の主たる争点は次のとおりであると考える。 第一に、「春风送来了温」という画像は著作物に該当するか、どのような類型の著作物に該当するか、第二に、原告は本件画像の著作権を享有するか、



[1] 「闲鱼」とは中国のフリマアプリである。

[2] 「拼多多」とは中国のECサイトである。

[3] 「知乎」とは中国のQ&Aコミュニティサイトである。

[4] 「图虫」とは中国の写真家をターゲットにした共有・コミュニケーションのプラットフォームアプリである、

[5] おそらく「闲鱼」の誤植と思われる。


(16頁)
 第三に、本件行為は著作権侵害に該当するか、被告は法的責任を負うべきか、である。 当裁判所は上記の各論点について判断する。
 
一,「春风送来了温」という画像は著作物に該当するか、どのような類型の著作物に該当するか
 
 中華人民共和国著作権法(以下、「著作権法」という)第3条は、「この法律にいう「著作物」とは、文学的、美術的、および学術の分野における独創性を有し、かつ、一定の形式をもって表現することができる知的創造の成果」と規定している。 上記の規定によれば、原告の著作権請求の対象が著作物に該当するかどうかを検討するためには、以下の要素を考慮する必要がある。1.文学、美術、学術の分野に属するかどうか、2.独創的であるかどうか、3.一定の表現形式を有するかどうか、4.知的創造の成果であるかどうか、である。本件の場合、本件画像の外観からして、人々が普段目にしている写真や絵画と何ら変わりはないので、明らかに芸術の分野に属し、一定の表現形式を有しており、1と3の要素を備えている。
 
「知的創造の成果」の要件について、「知的創造の成果」とは知的創造的な活動の成果を指す。したがって、自然人の知的創造を反映した作品でなければならない。 本件では、原告は、本件画像を公開する際に「AIイラスト」と表示しており、原告は、Stable Diffusionモデルを用いて、原告が設定したプロンプトやパラメータに従って画像を生成する過程を復元することができたので、これに反する証拠がない限り、原告は、これに反する証拠がない限り、本件画像である「春风送来了温柔」は、原告が生成AI技術を用いて生成したものであると認定することができる。 公開資料及び関連研究によれば、Stable Diffusionモデルは、インターネット上の多数の画像とそれに対応するテキスト記述から学習されたものであり、同モデルは、テキストに含まれる意味情報と画像に含まれるピクセルの対応関係を利用することで、テキストコマンドに従いテキスト情報と一致する画像を生成することができたという。


(17頁)
 
 当該画像は、既成の画像を呼び出す検索エンジンで表示される既成の画像でなければ、ソフトウェア設計者があらかじめ定義した様々な要素の配置や組み合わせでもない。 平たく言えば、モデルの役割あるいは機能は、学習、ないしはいくつかの能力やスキルの蓄積を通じるという点で人間のそれと同様であり、人間が線を描き、色を塗る代わりに、人間が対応する画像のテキストの説明を入力することによって生成することができるという、人間の創意、すなわち構想を有形に現したものである。本件では、原告は、夕暮れという光の条件下で、写真風の美女のアップを描きたいと希望し、Stable Diffusionモデルにプロンプトを入力したが、プロンプトにあるジャンルは「超リアル写真」、「カラー写真」、主体は「日本のアイドル」で、肌の状態、目や髪の色など詳細に、環境は「外の場所」、「ゴールデン・タイム」、「ダイナミックなライティング」、「クールなポーズ」、スタイルは「カメラ目線」、「フィルム調」、「フィルム風」などの関連パラメータを設定すると同時に、最初の生成画像に従って、プロンプトを増やし、パラメータを調整し、最終的に自分の満足のいく画像を選択した。原告が本件画像を構想してから、最終的に本件画像を選択するまでの全過程において、原告は、キャラクターの演出を設計し、プロンプトの文字列を選択し、プロンプトの順序を整え、関連するパラメータを設定し、どの画像が期待に合致するかを選択するなど、一定の知的創造を行った。本件画像には原告の知的創造が反映されているので、本件画像には「知的創造の成果」の要件を具備している。


(18頁)

もちろん、知的創造のすべてが著作物というわけではなく、「独創性」のある知的創造のみが著作物となりうる。一般的に言えば、「独創性」は、著作物が著作者によって独自に生み出されたものであり、著作者個人の表現を反映したものであることを必要とする。「機械の知的創造物」は除外されるべきである。 例えば、ある作品が一定の順序、公式、構造に従って行われた場合、異なる者が同じ結果を得ることがありうるが、これは表現のもつ唯一性から独創的とは言えない。 AIを利用して画像を生成することが、著作者の個性的な表現を反映しているかどうかは、個別事例で判断する必要があり、一般化することはできない。ただ一般的に言えば、Stable Diffusionを使って画像を生成する場合、その者の要求が他人と異なっていればいるほど、また、画像の要素や配置構成に関する記述が明確で具体的であればあるほど、その者の個性的な表現を反映させることができる。 この場合、本件画像から見れば、先行作品との相違性が認識できる。さらに、本件画像の生成過程から見ると、一方では、原告は具体的な線を描いておらず、また、具体的な線や色の描き方を完全にStable Diffusionモデルに指示していないにもかかわらず、本件画像を構成する線や色彩は、基本的に、Stable Diffusionモデルによって「描かれた」ものであるといえ、人々がこれまで使ってきた絵筆や描画ソフトとは大きく異なるといえる。 しかし、原告は、プロンプトによってキャラクターやその演出などの画像要素をデザインし、レイアウトや構図のパラメータを設定することで、自らの選択やアレンジを反映させていた。 他方では、原告は、プロンプトを入力し、関連するパラメータを設定して最初の画像を得た後も、プロンプトを追加し、パラメータを変更し、絶えず調整・修正を加えながら、最終的に本件画像を得ており、この調整・修正の過程にも、原告の美的選択や個人の判断が反映されている。


(19頁)
当審中、原告は、個々のプロンプトあるいはパラメータを変更することで、異なる画像を生成した。このことは、モデルを使用することで、異なる人が新たなプロンプトを入力し、新たなパラメータを設定することで、異なるコンテンツを生成できることを示している。 したがって、本件画像は「機械による知的創造の成果」ではない。 これに反する証拠がない限り、本件画像は原告が独自に作成したものであり、原告の個性的な表現を反映したものであると認めることができる。 上述により、本件画像は「独創性」の要件を具備している。

 現在、新世代の生成AI技術が創作活動に利用される機会が増えており、Stable Diffusionモデルやそれに類するモデルは、文字記述に基づいて美しく精巧な画像を生成することができる。グラフィック技術がない人も含め、多くの人がこれらの新しいモデルを使ってコンテンツを生成し、アイデアやデザインを具体的に表現することで、画像作成をより効率的に行おうと試みている。生成AI技術は、人間の仕事を徐々に機械にアウトソーシングすることで、技術の進歩が歴史上何度もなされてきたのと同じように、人々の創造方法を変えつつあると言うべきだろう。カメラが誕生する以前は、客観的な対象のイメージを再現するためには卓越した描画スキルが必要だったが、カメラが誕生したことで客観的な対象のイメージを記録することが容易になった。現在、スマートフォンはますます高性能化し、使いやすくなっているが、スマートフォンで撮影された写真は、撮影者独自の知的創造が反映されている限り、写真の著作物とみなされ、著作権法で保護される。しかし、スマートフォンで撮影された写真が撮影者のオリジナルの知的創作の投入を反映している限り、それは依然として写真の著作物を構成し、著作権法によって保護される。テクノロジーが発展し、ツールが賢くなればなるほど、人間のインプットが必要でなくなることは明らかだが、だからといって、著作物の創作を奨励するために著作権制度を適用し続けることを妨げるものではない。上記のようなAIモデルが登場する以前は、芸術作品を手に入れるために、人々は時間と労力を費やして特定の絵画技術を習得したり、絵画を依頼したりしなければならなかった。


(20頁)
他人に絵を描くことを依頼した場合、委託者が一定の要求を出し、委託者はその要求に従って線を引き、色を塗り、一つの美術作品を完成させる。 委託者と受託者との関係においては、一般的に、筆を使って絵を描く受託者が創作者とみなされる。この状況は、人間がAIモデルを使って画像を生成する場合と似ているが、両者には大きな違いがある。つまり、受託者は自らの意思を持ち、委託者から依頼された絵画作品を完成させる際に、自らの選択と判断を絵画に反映させるという点だ。 現段階では、生成AIモデルは自由意思を持たず、法的主体でもない。 したがって、人がAIモデルを使って画像を生成する場合、両主体の間で誰が創作者であるかという問題を決定する必要はない。 要するに、道具を使って創作するのはやはり人間であり、つまり、創作過程全体において知的創造を行うのは人間であって、AIモデルではない。 創作性を奨励することは、著作権制度の中核的な目的として認識されている。 著作権制度を正しく適用し、適切な法的手段を通じて、より多くの人々が最新のツールを使って創作することを奨励することによってのみ、作品の創作とAI技術の発展をより促進することができる。 このような背景と技術的現実を踏まえれば、AIが生成した画像は、それが人間の独創的な知的創造を反映している限り、著作物として認められ、著作権法によって保護されるべきである。  

 結論として、本件画像は著作物の定義を満たし、著作物に該当する。どのような著作物に該当するかについて、原告は、本件画像「春风送来了温柔」は著作物であると主張し、裁判所が著作物に該当しないと判断した場合には、「著作物性を満たすその他の知的創造の成果」であると主張した。


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裁判実務において、対象物の著作物の類型を判断する場合、まず、著作権法に明示的に列挙された著作物の類型に該当するか否か、すなわち、その物の特徴や表現に基づき、著作権法3条1号から8号までに列挙された著作物の類型の特徴や要素と比較し、第1号から第8号までに列挙された著作物の類型に含まれ得る場合には、明確な著作物の類型であると判断され、第9号「著作物性を満たすその他の知的創造の成果」の適用対象から外れる。 対象物が第1号から第8号までに列挙された著作物の種類に含めることができれば、それは明確な種類の著作物として認められ、第9号の「著作物性を満たすその他の知的創造の成果」は適用されなくなる。「中華人民共和国著作権法施行条例」4条によれば、「美術の著作物とは、平面、立体を問わず、絵画、書道、彫刻などの造形芸術の著作物であって、線、色彩その他の方法により美的意味を構成したものをいう」とされており、本件では、当該著作物は美術の著作物であった。本件において、本件画像は線と色彩からなる芸術作品であり、美術の著作物の範疇に属する。 同時に、本件画像が特定の種類の著作物に帰することができ、「著作物性を満たすその他の知的創造の成果」に属しない場合には、他の著作物の条項によって保護される必要はない。

 結論として、本件画像は著作物であり、著作権法によって保護される。


二、原告は当該画像の著作権を享有するか否か

 
 著作権法11条1項には、「この法律に別段の定めがある場合を除き、著作権は著作者に帰属する」と規定されている。「著作者」については、著作権法11条に以下のように規定する。すなわち、「著作物を創作した自然人を著作者とする。法人または非法人機関が主宰し、法人または非法人機関の意思を代表して創作され、かつ、法人または非法人機関が責任を負う著作物については、法人または非法人機関が著作者とみなされる」と。この条文によれば、著作者は自然人、法人または法人格のない組織に限定されており、これは民法典上の民事主体と合致している。したがって、中国著作権法では、AIモデル自体が著作者になることはできない。 このため、本件画像は本件AIモデルによって「描かれた」ものではあるが、本件AIモデルは本件画像の著作者にはなり得ない。


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 本件AIモデルの設計者は、本件画像を生成する意思もなければ、生成されるコンテンツもあらかじめ定義されているわけではなく、本件画像を生成するプロセスには関与しておらず、本件生成ツールの製造者に過ぎない。 アルゴリズムやモデルを設計し、大量のデータを用いてAIを「学習」させることで、AIモデルがさまざまな要求に対して自らコンテンツを生成する機能を持つようにし、そのプロセスに知的創造を投資したはずであるが、設計者の知的投入は、本件画像に反映されるのではなく、AIモデルの設計、すなわち「創作ツール」の制作に反映されている。したがって、本件AIモデルの設計者は、本件画像の著作者ではない。

 また、本件において関係する主体のライセンスの観点からも、本件証拠によれば、本件AIモデルの設計者は、その提供したライセンスにおいて、「出力コンテンツに関するいかなる権利も主張しない」と述べていることから、設計者も出力コンテンツに関するいかなる権利も主張していないものと推認されうる。
 
 以上のとおり、本件AIモデルをニーズに応じて直接設定し、最終的に本件画像を選択したのは原告であり、本件画像は原告の知的創造に基づいて直接生成され、原告の個性的な表現が反映されたものであるから、原告は本件画像の著作者であり、本件画像の著作権を享有する。


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 なお、必要のために述べておくと、本件において当裁判所は、著作者である原告が著作権を享有すると判断したものの、信義誠実の原則と公衆の知る権利を保護する必要性から、原告は、自ら使用したAI技術またはAIモデルを明確に表示すべきであると考える。 本件では、原告が「AIイラスト」と表示したことで、原告のコンテンツがAI技術を使用したものであることを公衆に知らしめるのに十分であったと当裁判所は判断した。
 

三、訴追された行為が権利侵害にあたるか否か、また被告が法的責任を負うべきか否か
 
 本件において、原告は、被告が本件画像を無断で使用し、小紅書プラットフォーム上で署名入りウォーターマークを切除したため、本件画像について原告の氏名表示権及び情報ネットワーク送信権を侵害したと主張した。
 
 著作権法10条は、「『情報ネットワーク送信権』、即ち、公衆が個別に選択した時間および場所においてこれにアクセスできるように、有線または無線の方式により公衆に著作物を提供する権利」と規定している。 本件では、被告は、本件画像を無断でイラストとして使用し、被告アカウントに掲載することにより、自己の選択する時間及び場所において公衆が利用できるようにしており、本件画像に関する原告の情報ネットワーク送信権を侵害している。
 また、著作権法10条は、「『氏名表示権』、即ち、著作者であることを表明し、著作物にその氏名を表示する権利」を規定している。著作者は、実名を表示する権利と、仮名を表示する権利、または実名を表示しない権利を有する。本件において、ウォーターマークの切除について、原告の提出した証拠及び業界慣行によれば、小紅書プラットフォームからダウンロードし、アップロードした本件画像には、プラットフォーム及びユーザー番号のウォーターマークが読み込まれているはずであり、被告が使用した被告画像には上記ウォーターマークが表示されていないことから、上記ウォーターマークは除去されていると推認することができ、被告は、被告画像とウォーターマークの除去に関連する具体的な出所を特定することができないことから、被告によってウォーターマークが除去されていると認定することができる。


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 ユーザー番号のウォーターマークはプラットフォームの割り当てであり、ウォーターマークの動作を追加することもプラットフォームのインターフェイスであるが、ユーザー番号と原告には対応関係があるため、本件画像のウォーターマークを追加する形でユーザー番号も、その著作者の身元を示す役割を果たすことができる。 本件では、原告はユーザー番号を署名として選択したことを明確に示しており、当裁判所では争わない。 したがって、ウォーターマークを切除する被告は、原告の氏名表示権を侵害し、権利侵害の責任を負うべきである。
 
 結論として、被告は原告の氏名表示権及び情報ネットワーク発信権を侵害したものであり、謝罪及び損害賠償の民事責任を負うべきである。

 原告は、「被告が原告に対して、原告の影響によって生じた権利侵害を排除するために、本件百家アカウントにて公表した声明について、被告に賠償を命ずることを求める請求」をし、併せて原告が被告に対して遂行した行為によってもたらされた影響の範囲は相当であり、当裁判所もこれを支持する。

 著作権法54条は、「著作権または著作権に関連する権利を侵害した場合には、権利を侵害した者は、権利者がこれにより受けた実際の損害あるいは権利を侵害した者の不法所得に応じて賠償しなければならない。権利者の実際の損害あるいは権利を侵害した者の不法所得を算定することが困難である場合には、当該権利の許諾使用料を参考に賠償することができる。権利者の実際の損害、権利を侵害した者の不法所得、および権利の許諾使用料を算定することが困難である場合には、人民法院は侵害行為の事情に基づき五百元以上五百万元以下の賠償を判決するものとする」と規定する。


(25頁)
本件の証拠によると、権利者の実際の損失、権利侵害者の不法所得を計算することは困難であり、本件画像の使用料について、被告はウェブサイトの取引情報のスクリーンショットをいくつか提出したが、本件画像の取引と本件画像の創作性及び使用について確定することができず、本件画像の使用料の金額を証明することができなかった。 当裁判所は、本件画像の状況及び権利侵害使用の状況から、被告は原告に対し、500元で権利侵害行為を賠償すべきであると判断した。

 

以上により、当裁判所は、中華人民共和国著作権法第10条第1項第2号および第12号、第53条および第54条に基づき、以下のように判決を下す。

 

一、被告劉●●は本判決の発効日から7日以内に、百家アカウント「我是云开日出」(百家ID:●●●●)上で、原告李●●に対して声明文として、謝罪文を24時間以上公開すること(公開する内容は裁判所の審査と承認を受けなければならない。もし公開が履行されない場合、裁判所は全国発行の新聞を選択する、もしくは当裁判所の公式ウェブサイトで本判決の主な内容を公表し、その費用は被告劉●●の負担とする)。

 

二、被告劉●●は、本判決効力発生日から7日以内において、原告李●●の経済的損失500元を賠償すること。

 

第三に、原告李●●のその他の請求を棄却する。


(26頁)
 本判決で指定された期間内に金銭の支払義務を履行しない場合、中華人民共和国民事訴訟法260条の規定に基づき、履行遅延期間中の債務の利息を2倍にするものとする。

 事件受理手数料50元は被告劉●●の負担とする(本判決の効力発生日から7日以内に支払うこと)。


 本判決に不服がある場合、本判決の言渡しの日から15日以内に、本法院に上訴状を提出し、北京知的財産権法院に上訴することができる。


裁判長  ●●
裁判官  ●●
裁判官 ●●●

2023年11月27日

当本は正本と照合されている。
裁判官補佐 ●●●
書記官  ●●

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