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中国のショート動画マーケティング「Netjoy+」が香港IPOへ。2年で売上10倍、時代の波に乗る企業の目論見書をチェック

NetEaseやJD.comの重複上場をきっかけに香港市場でも上場申請が増えてきました。

中国のマーケティング企業「Netjoy+」という企業が上場するようで目論見書を覗いてみると、なかなか凄まじい伸びっぷり。

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Netjoy+の売上は2年でなんと10倍に。爆発的な成長を遂げるNetojoy+とはどのような企業なのか調べてみたいと思います。

Netjoy+概要

Netjoy+の創業は2012年。Wang氏とQin氏が立ち上げたWebメディアが原点です。

花边娱乐

Huabian

Huabianという娯楽メディアで、現在も運営を続けています。芸能ニュース「Hippie Entertainment」やインタビュー番組「Idol Answers」等も制作しており、毎月2,400本ものショート動画を自社チームで制作しているとのこと。

2013年にはマーケティング・ソリューション事業に参入し、DMP(データ・マネジメント。プラットフォーム)の提供を開始しました。

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Netjoy+は広告代理店のような役割を担っており、自社メディアや提携先のソーシャルメディア等を活用して顧客の広告活動を支援します。

広告主からのコンサルティング料、自社メディアでの広告費が主な収益源となります。

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自社で独自開発したDMPを活用し、TikTokやToutiaoのインフィード広告等へ出稿してクリック数ベースで成功報酬を受け取ります。

Netjoy+は2016年に広告配信サービス「Ocean Engine」と連携。2019年には「快手(Kuaishou)」、「小紅書(Xiaohongshu)」と、2020年に入ってTencentとの提携に成功しました。

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株式の半数は経営陣が保有しており、著名なネット企業の資本は入っていない模様。気になるところでは、クラシファイドサイトを提供するeBay子会社「Kijiji」から13%出資を受けています。

Netjoy+の業績チェック

Netjoy+の業績をもうちょっと詳しく見ていきます。

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2019年の売上は23.1億元(347億円)で、2年前の約10倍と爆発的な成長を遂げています。当期損益は7,293万元(11億円)で利益率は3%ほど。

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爆発的な成長はマーケティング・ソリューションによってもたらされています。自社メディアは減収傾向にあります。

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直接取引がある広告主はエージェントも含めて695社に。2019年にかけて100社以上も増加しました。主要な顧客としてはファッションEC「蘑菇街(MOGU)」や家電「國美(GOME)」、金融アプリ「卡牛(Cardniu)」等が挙げられています。

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Netjoy+の収益の源泉となる広告インプレッション、クリック数は爆発的に増加。2019年のショート動画におけるインプレッション数は約1,800億、クリック数は45億回におよび、CTR(Click-through Rate)も2.5%に上昇しています。

HuabianのMAUは1億を超えていましたが、2019年は5,000万人程度に減少。マーケティング・ソリューションに経営資源を集約したことが要因です。

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広告主の業種別で見ると、オンラインゲームが約6割を占めます。そのほか、金融やEC、インターネットサービスが成長を牽引しているようです。

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手持ちキャッシュは3,484万元(5.2億円)、主な調達原資は純資産が2.8億元(42億円)のほか、銀行借入が9,154万元(14億円)に増加しています。

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キャッシュフローはマイナスで、上に見たように有利子負債等で資金を賄っている状況です。

ショート動画マーケ市場規模は今後5年で8.7兆円と5.7倍増の見通し。コロナ禍がどちらに転ぶか

ショート動画市場は言うまでもなく急速に拡大しています。

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2019年のショート動画マーケティング市場は1,025億元(1.5兆円)と、前年の3.4倍に。今後5年のCAGRは35.6%で、2024年には5,825億元(8.7兆円)と5.7倍に増加すると推計されています。

中国は数年後にはショート動画だけで日本の広告費(6兆9,381億円)に匹敵する市場を持つことになります。

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Netjoy+の市場シェアはトラフィックベースで3.6%と第3位。1位と2位のシェアはそれぞれ10%を超えており、少し壁があります。

コロナ禍を受けて世界的に広告需要が減退した一方で、中国ではライブコマース市場が沸騰中。TikTokの成長からもショート動画には追い風が吹いており、新たな市場機会を掴むことができれば引き続き高成長が見込めそうです。

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