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不穏行動を伴う認知症への対応状況

今回は、昨年一年間(2023年1月~12月)の認知症対応に係る援助についての集計データをお届けします…。

私どもの年寿無休電話相談サービス『お困りごとホットライン』に寄せられた、家族の認知症関連の相談は全部で70件。うち24件については、(電話でのガイドの延長線で)実務代行に至っています。要するに、療養先を当方で確保してさしあげたということです。ちなみに、例年20件から30件程度で推移しています。

認知症に係る実務代行ケース(2023)

患者の年代は、以下のようになっています。

実務代行24件における患者の年代

また、認知症のタイプ別に見ると、以下のようになっています。

実務代行24件の認知症種別

不穏行動を伴う(もしくは、不穏行動が激しい)ケースでは、『物忘れ外来⇒医療保護入院⇒老健』を標準対応にしていますが、24名の現在の療養場所は、以下のようになっています。

実務代行24件における当事者の療養場所

経験則として、保護入院の期間は『6ヶ月~9ヶ月』がほとんどですが、当然のことながら、そのまま病院で最期を迎える場合もあります。特に秋以降に入院した人たちは、今後、老健等に療養場所を移すことになります。

短期間で特養に入所できた人もいますが、これは『コネのある特養に空きが出た』・『生活保護を受給する』・『遠隔地で空きのある特養に入る』といった理由によるものです。お子さん世帯の扶養を外して世帯を分ける(世帯分離)ことで、確実に特養の待機期間は短縮することができます。

ローカルの施設に入ることは必ずしも悪ではありません。積極的におすすめするケースもあります。環境がいいことに加え、(家族側とすれば)頻繁に見舞いに行かずに済む大義名分もできます。結果的に、たまに見舞いに行ったときに優しく接することができるようになります。

本来的には生活保護を申請しなくていいにもかかわらず、戦略的に生保受給していただいたケースは5件でした。また、相談者がいわゆるビジネスケアラーであったのは、24件中13件でした。

ビジネスパーソンの介護離職が社会問題化しています。累計300万人もの現役世代の人たちが、老親(もしくは配偶者や親族)のために仕事をやめなければならない状況に至っています。

ただ、私ども独自の調査によれば、介護離職者の半数以上が非正規雇用の人たちです。誤解を恐れずに申し上げれば、この人たちには退職リスクとか転職リスクは、さほどありません。経済的ダメージが大きいのは、正規雇用の人たちが離職することです。それは、会社を辞めて(介護休業を経て)再就職した場合、下手をすれば収入が半分以下になってしまうことさえあるからです。

昨年の13名のうち、介護休業期間中の人はひとり、介護休業の取得を検討中の人が10名でした。介護休業は最大93日間で、この間はハローワークから通常賃金の67%を受給することができます。ただし、93日間では精神病棟や予算内で賄える施設を確保できず、そのまま在宅家族介護を続けざるを得なくなって、結果的に介護離職に至ってしまう…というケースが目立ちます。

運よく私どもに行き当たっていただければ、(医療・介護の世界に精通していない人たちには)かなりハードルの高い精神病床の確保とか、限られた予算で入所できる介護施設の確保とかを代行してさしあげることができるので、社会福祉士という社会資源を知っておくと役に立つと思います。非常に世間的認知度が低い国家資格ではありますが…(苦笑)

あと、認知症にはふたつの悲劇があることを知っておきたいところです。第一の悲劇は、当然のことながら、不穏行動やら昼夜逆転やら不潔行為やらで同居人や介護者が心身ともに疲弊しきってしまうことです。でも、むしろ事の影響がデカいのは第二の悲劇です。

認知症第二の悲劇は、やっとのことで入院もしくは入所させた後に襲ってきます。おカネの問題です。本当であれば(現金でもキャッシュカードでも)親のおカネを事前に預かっておいて、そこから病院や施設の支払いを済ませるのが筋というものです。しかし、親子間でそこを段取りしていなかったとしたら、子どもの側が立て替えざるを得なくなります。それほどまでに、(非常に不条理なことですが)銀行は厳しくなっています。

現代は、なんといってもエンディングに至るまでの療養期間が長いです。直近(令和4年)のデータでは、平均寿命と健康寿命(医療や介護等の制約がなく自由に生活できる状態)の差が10年です。最悪、こんなにも長期にわたって老親の療養コストを肩代わりしなければならなくなります。私の経験則では、不穏行動を伴う認知症の場合、療養期間は平均7年6ヶ月です。

療養に係るおカネの話を子どもとしていない親ですから、当然、遺言等の法的段取りをしているとは思えません。そうだとしたら、療養期間中のサポートをした子どもに兄弟姉妹がいる場合、遺産分割の際に立替分を別に受け取ることができなくなる…というリスクが高くなります。これはもう、踏んだり蹴ったりです。

認知症第二の悲劇は、病院や施設からの請求書を受け取って、親の口座からおカネを引き出そうと銀行に出向いた際に発覚することがほとんどです。非常に多いのが、親のキャッシュカードの暗証番号を知っていてATM操作をしようとして、エラーとなってしまった時です。要は、キャッシュカードの磁気損傷のためクリーニングもしくはカードの交換を強いられて、そこで本人でないことがバレて成年後見制度にまっしぐら…となるわけです。

最近では少なくなりましたが、バカ正直に「親が認知症になっちゃったんでぇ…」と自己申告してしまう人もいます。それに、そもそもキャッシュカードの暗証番号を親から教えてもらっていないとか、親の預金口座がすべて定期預金だったとか、ちょっと信じられないケースも散見されています。

すべて老親が元凶なのですが、本人はすでに認知症を患ってしまっているので「そんなの、知ったこっちゃない」という話です。面倒や不利益を被るのは子どもの側です。にもかかわらず、何ら対策を講じていない親がいかに多いことか!

こうして、老い先にそなえていなかった親の子どもは、認知症第二の悲劇によって地獄に足を踏み入れていくことになります。実はこれ、介護離婚や介護別居の要因にもなっています。

なので、わが子にこうした迷惑をかけないために、わが子の仕事や家庭を損なわせないために、親たるもの、いざという時のサポート依頼と(それに必要となる)おカネをセットにして子どもに託しておかねばなりません。

そしてこれは、なにも後期高齢の老親世代に限った話ではなくて、四捨五入百世代(50歳以上)で子を持つ親であれば、すべての人たちに関係することだと認識してほしい…。そう思っています。

加えて、不慮の事態に陥ってしまったときの相談相手として、相談援助の国家資格・社会福祉士の存在を知っておいてください。認知度は低いですが、確実に役に立つ専門職ですからね。おそらく、解決できない問題はありません。介護離職せざるを得なくなった人たちの原因を眺めていてつくづく思います。

社会福祉士に相談すれば、医療のことも介護のこともおカネのことも、すべて解決します。だって、社会福祉士は、こうしたお困りごとを日常的に取り扱っているからです。バックには医者や弁護士などの専門職もついているからです。

まぁ、とは言っても、医者や弁護士同様、使える人材というのは(パレートの法則に従えば)全体の2割に過ぎない…かもしれませんが…。

それでは、また。

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