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愛を語るような挨拶の仕方…

前回は、周囲から「あっ。なんか感じのいい人だな」と思われるような立ち居振る舞いの具体的な方法として、『ヒューマンベーシックナイン(人格曼荼羅)』を紹介しました。

今回の記事では、そのなかの『挨拶』にフォーカスして解説していきます。「なるほど」と思われた読者のみなさんには、今この瞬間から、『愛語』という挨拶の仕方を実践してほしい…。そう思います。

曹洞宗の開祖である道元さんは、その経典とされる『正法眼蔵』の中で、「『愛語』には、芳しくない状況下にある人をさえも、前向きな気持ちにさせ得るほどの計り知れないパワーが秘められている」と書いています。

ちなみに、180度、事態が好転することを「廻天」と表現しています。太平洋戦争の特攻では、人間魚雷の名称にもなりましたね…(涙)。研修では、ボスが「ガッツ石松さんが『愛語』の話を聴いた時には、世の中が360
度かわる!」と感激していた…というオチまで話してくれました(笑)。

道元さんを師と仰ぐ良寛さんによると、「愛語」の基本ルールは、「笑顔で」・「相手の名前を呼びながら」・「何かひとつ質問をしてあげて」・「相手の答えをそのまま受けとめて」・「褒めてあげましょう」…とされています。

「笑顔で」というのは、他者から見て、「あの人、話しかけやすそうだな」と思わせるような表情です。不愛想な表情の人がいると、確実に周囲の空気が重くなりますよね。ロールプレイでは、笑顔を作って鏡に映してみて、そこに映っている人に街で出会ったとして、声をかけてみたくなるかどうか…。そんな視点で各自チェックしていました。

相手の名前を呼ぶ」。私たちは、基本的に他者の話を聴きたがらない動物だとか。たしかにそうかもしれません。関心のない話や、好感の持てない相手の話は、積極的に聴きたいとは思えませんからね。

例えば、カラオケボックスをイメージしてみてください。上司もしくは先輩がマイクを握っていたとして、同席する社員たちの反応はどうでしょうか。今の時代、おそらく誰ひとり聞いてやしないかも。スマホをいじったり、ピザをほおばったり、タッチパネルで選曲したり……。

人間というのは、耳栓をすることもなしに興味のない話をスルーできる高等動物なのだそうです。聴いているフリだけでもしてくれていたらまだ救われるのですが…。

でも、他者の話を積極的に聞こうとするケースが2つあります。ひとつは、好きな人の話。もうひとつが、相手の口から自分の名前が発せられたとき。他者の口から自分の名前が発せられたのを感知することで、快楽ホルモンが分泌されることがわかっています。それほどの快楽なのです。

だから、人に声をかける時は必ず名前を添えるべきです。ただ単に「おつかれさま」ではなく、「あっ。桜井さん、おつかれさまです」といった具合に。相手は自分の名前を認識してくれているのだなぁと明確にわかることで、ポジティブな感情が喚起されるようです。そして、自分の名前を呼んでくれる相手には好感を抱く…という一石二鳥のオマケまで付いてきます。

何かひとつ質問する」。これには、どのような意味があるのでしょうか。人は他者の話など聞きたくない一方で、自分の話を話したい。誰かに聞いてほしいという身勝手な本能を持っています。だから、あなたが質問してあげることに価値があるのです。

質問は、相手に対して関心を持っていますよ…という意思表示です。相手の側に立つと、自分に質問してくれる(=関心を持ってくれている)人に対しては、良い関係を深めたいという意識がおのずと芽生えてくるもの。きっと、あなたが困った時には、積極的にサポートしてくれるかもしれません。きっと、その確率が高まると思います。

「田中さん、夕べはよく眠れましたか?」・「木村さん、朝食はいつもどうしてるんですか?」・「石田さん、今日はなんかキマッてますね!」・「大田さん、なにかお手伝いすること、ありませんか?」…。

何だっていいのです。単なる挨拶にひとつ質問を付け加えることで、相手の存在を認識して、気にかけているということが伝わればいい。ボスに言わせると、「OK牧場」なのです(笑)。

相手の答えをそのまま受けとめる」。これは簡単です。あなたから質問された相手は、おそらく何かしら言葉を返してくるでしょうから、それをしっかりと肯定的に受けとめてあげればいい。笑顔で受けとめるも良し。頷くのでも良し。親指を立てるのも良し、です。

そして、最後が「ほめる」。これをあまり仰々しく考えないことです。相手の答えを受けとめた流れで、何か相手の心を前向きにしてあげるような言葉を添えてあげるだけで構いません。

「さっすがですねぇ!」・「よかったですね!」・「イケてますね!」・「やりますね!」・「すごいっすね」……等々。

こういったポジティブな心で共感・受容してあげるのです。相手の存在をまるごと認めてあげるのです。笑顔や相槌、頷くだけでもいい。同性であれば、軽く肩を叩いたり、握手したりもOKです。

この挨拶の仕方『愛語』を積極的に積み重ねていくことで、職場も家庭も友人関係も、あらゆる人間関係が円滑に回りだすから不思議です。ときに、何かの事情でネガティブな状況下にある人に、あたかも暗雲からひと筋の光が射しこんだかのように、勇気や希望をもたらす可能性を秘めています。道元さんは、それをもって「廻天(かいてん)する力(ネガティブな状況を180度好転させることのできる力)」と教えてくれているそうです。よかったら是非、実践してみてください。

そして、この愛語。単なる挨拶の場面だけでなく、いろいろな応用が利くのが素晴らしいと、私は思いました。仕事で成果を出してノッてる人に。ミスをして落ち込んでいる人に。体調を崩している人に。回復して現場復帰した人に。身内に不幸があった人に。サポートしてくれた人にお礼を告げるときに。

さらに……。ランチの会計をする際にレジの人に。バスやタクシーの運転手さんに。買物をしたときの店員さんに。大きな荷物を抱えて大変そうな人に。もちろん、恋人や配偶者やわが子に対するあらゆる場面で。5つの要素の「笑顔」のところを状況に応じて変えればいいだけです。表情に加え、音調・語調も相手の置かれている状況に応じてアレンジすることは忘れないよう気をつけてください。

それにしても、この『愛語』のロールプレイは楽しかったなぁ~。新入りの私も、しかも人間関係が不得手だった私でさえも、すぐに先輩スタッフたちと打ち解けるきっかけになりました。懐かしい思い出です。

普段の考え方にもよりますが、変わることをためらう人は多いものです。それは現状を変えないのがいちばんラクだから。でも、仕事や人生で然るべき環境を整えようと思うのなら、自分から変わってみてはどうでしょうか。意図的に変化することをエンジョイするくらいのつもりで。

もちろん、はじめは周囲から不可解な目で見られるかもしれません。でも、人目を気にしている場合じゃないですよね。是非とも『愛語』を使ってみてほしいと思います。

というのも、愛語は他者の気分を良くしますが、それよりも大きいのは、前向きな挨拶を発した本人、つまり私たち自身が最大の恩恵を受けるからです。愛語を実践してみるとわかるのですが、満員電車で年長者に席を譲ったときのようなハートウォーミングな気持ちになれるのです。そしてそれが、体内の免疫力を高め、健康を維持する上でも大いに役立つという効能があると教わりました。すごいッ!

まずはダマされたと思って1日。出会う人に、終日、意識的に愛語を使って声かけをしてみてください。相手が呼応してくれたら儲けもの。最悪、怪訝な顔をされたり無視されたりしたとしても、自分自身のこころとカラダにプラスの作用があることはまちがいないので、決してムダということはありません。

そして、もしも3日つづけることができたとしたら、周囲の景色が少しずつ変わっていくのを体感できるかもしれませんよ。


ビューティフル・サンデーです。有意義な一日をお過ごしください。
それでは See you !

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