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タイで10日間のヴィパッサナー瞑想修行①〜どんなコースだったのか

タイ・カンチャナブリにあるダーマ・メディテーションセンターでの10日間の「ヴィッパサナー瞑想」の修行を終えました。

ヴィッパサナー瞑想は、自分自身を深く内観することを通じて心の浄化を目指す手法で、ブッダが悟りを開いた技法です。70年代以降になって、ミャンマー人のゴエンカ氏によって世界中に広められました。

現在世界に約240のセンターがあり、各地で幅広い支持を得ていますが、参加者に厳しい戒律と覚悟を求める過酷なコースとしても知られています。

今回、自分自身を鍛えなおそうとこの瞑想修行への参加を決意しました。

どんな体験をして、またそこからどんな気づきを得たのか。それらをnoteにまとめてみたいと思います。

どんなコースなのか

コースは10日間続きます。より正確には移動やオリエンテーションなど含めて「12日間」の拘束が求められます。

私が参加したコースは「ダーマ・カンチャナ」というカンチャナブリからさらに西に下ったミャンマー国境にほど近いエリアで開催されました。バンコクから休憩含め6時間バスに揺られました。

施設には、約100人ほどが収容できるホールと、集団生活を営むための居住設備があります。施設は自然豊かな場所にあり、宿泊部屋も簡素ではありますがとてもキレイに整っています。

温暖なタイとはいえ、山間部になるとこの時期は多少冷えますので、夜は毛布にくるまって暖を取りました。

森の中に小屋が並んでいます。1つの小屋が2部屋の個室に分かれています

参加者は100人程度で、いつもコースは満員です。

コースがオープンしてもすぐに埋まってしまうので、私も予約を取るのに苦労しました。本当は3年ほど前に行きたかったのですが、コロナでキャンセルになってしまい、そこから3年経ってようやく実現しました。

タイではタイ人向けと外国人向けのコースがそれぞれ開催されており、私は後者に参加しました。外国人向けのコースにもタイ人参加者は3割くらいいました。

コース内の説明は英語とタイ語で行われます。日本語含めそれ以外の言語は、ヘッドフォンで聞くことが出来ます。

メインの瞑想指示や講義がゴエンカ氏の英語の音源なので直接それを聞くのが理想ですが、インドのアクセントがかなり強いです。なのでインド英語に慣れていない方は音声サポートをリクエストした方が良いです。私はなるべくオリジナルを聞きつつ、念のため音源をもらってわからない所をヘッドフォンで確認しました。

参加者は非常に多種多様で、確認できただけでもアメリカ、イギリス、ロシア、フランス、エジプト、スイス、ノルウェー、韓国など、ありとあらゆる国から参加者が居ました。
職業もアスリートやビジネスマンなど様々で、信仰に傾注した人というよりは、ごく普通の人が多い印象です。
男女比は3:7くらいで女性の方が多いです。宿泊設備も女性側の方が大きいので、毎回女性の方が多数派のようです。
ちなみに、今回参加した日本人は私一人だけでした。(おそらく)

基本、瞑想を行うだけで途中でお互いを知りあうことは一切ないのですが、最終日には会話が許されます。自由時間にあるイギリス人と会話してみると、今ヨーロッパではかつてないほどに瞑想がブームなのだそうです。
アスリートもビジネスマンもみんな瞑想をしています。
ヨーロッパにもダーマ・センターは各国に数多くあるのですが、参加希望者が多く何年もウェイティングになってしまう。
タイは開講数が多いので運よく今回参加できたんだ、と言っていました。

ヴィパッサナー瞑想は仏教を下敷きにはしていますが宗教ではなく技術なので、全ての人に門戸は開かれています。
そのイギリス人に「信仰は自分たちを救ってくれないのか?」と聞いてみると「最近は宗教のパワーが落ちているんだ。だからみんな何か違うものを求めているんだよ」という答えが返ってきたのが印象的でした。

リピーターが多いのも特徴で、「私は3回目」「私は8回目だ」などと、口々に教えてくれました。
感覚的には半分くらいがリピーターという感じです。彼らは Old Studentとよばれ、New Studentと明確に区別されます。
Old Studentはより高い課題を与えられ、研鑽に励みます。

コースに参加するだけでは不十分で、その後も継続的に、日常的に瞑想することで初めて真の効果が実感できるものでもあるようです。

このように、100人の多種多様な男女が10日間、「心の浄化」を求めて修行に集まるのがこのコースなのです。

戒律とスケジュール

10日間、自分自身の内面に深く深く向き合うために様々な戒律があります。

外界との接触は一切禁止です。パソコンも携帯も最初にスタッフにすべて預けます。
これで参加者は日常から完全に切り離されます。仕事が気になって仕方ない私は、これが恐怖でしかなく、スマホを預けた瞬間から地獄の日々が始まりました(笑)。

また、10日間は「Noble Silence(高貴な沈黙)」という約束があり、一切の会話を禁じられます。
アイコンタクトや筆談もダメで、ひたすら自分と向き合うことを求められます。

読書も禁止、また感じたことをメモするのも禁止です。せっかく思いついたアイデアをメモできないのは、本当に辛いです。

ひたすらに自分の自然な感情に向き合うために、そうした思考を規定するようなものは排除されるのです。

筋トレや運動も心を乱すのでダメです。許されているのは適度な散歩のみ。
また男女はエリアが明確に分けられて、接点を持つことはありません。
もちろんお酒やタバコ、性的な行為、なども一切禁止です。

毎日繰り返し散歩した小道

食事は1日2回、朝6時半と11時に出され、それ以降は夕方にお茶が出る以外は何もありません。
食事の内容も野菜中心のもので、肉・魚類などは出てきません。
簡素な食事ではありますが、タイの味付けでカレー風味だったりと、結構おいしい食事だったので食事が不満でストレスになることは幸いありませんでした。10日間過ごした今ならヴィーガンになれそうです笑。

ただ、運営は各センターのボランティアによって賄われているので、この辺りは施設によってかなり異なるかもしれません。

10日間過ごした部屋。簡素な部屋です。

スケジュールは、基本的に10日間ずっと同じです。

まず朝4時に起きて、一日が始まります。朝と言っても、まだ完全なる闇です。
そこから6時半まで瞑想。ようやく夜が開け始めます。
朝食を取って、午前中また瞑想。
11時から昼食と休憩があり、13時からまた瞑想。
17時のティータイムを挟んでまた瞑想。
夜19時半から1時間ほどのゴエンカ氏の講話(動画)があり、それを聞いて21時に修行が終了。
虫やカエルの声と静寂に包まれながら、眠りに就きます。

ようするに、「ただ瞑想するだけの日々」です。

瞑想もつらいのですが、とにかくこの単調な毎日に「飽きる」のが自分はつらかったです。
実際、耐え切れずに途中離脱する人も毎回数人はいるそうです。

休憩時間といっても、部屋の掃除をして、簡単な洗濯(洗濯機は無いので手洗い)をすると、あとはもうやることが無くなります。

普段、時間を惜しんで過ごしている自分からすると、何もすることが無い、何もしてはいけない、というのは本当に苦痛です。

「飽きた」「つまらない」という感情が湧いてくると、それが増幅して様々なネガティブ感情をさらに生んでしまい、頭の中を支配していきます。

そうやって自分の中で暴れまわる感情と向き合わせるために、こうした戒律があえて存在しているんだと思います。

私が参加した目的

じゃあ何故そんなつらいコースにそもそも参加したのか?について書いていませんでした(笑)

ひとことで言うと、心身ともにリセットしたいという思いからです。

会社を始めて10年目になり、色々と自分の中に抱えるものが増えてきました。

業績のプレッシャー、お金の不安、組織のストレス、自分自身への否定的な感情。

小さな会社とはいえ、経営しているとそうしたものをそれなりに感じながら日々を過ごしています。
別に心を病んでいるわけでは全くないのですが、不安や心配事はしょっちゅう夢に出てきます。

そういう色々な荷物を、一旦降ろしてみたいな、と思っていました。

「リーダーの成長は、会社の成長」とよく言うように、自分自身が次元を高めて、もっとダイナミックに挑戦していかないと、これ以上会社は成長しないんじゃないか。

コンフォートゾーンに逃げこんでしまいがちな自分に喝を入れて、小さなことを気にせずにまだまだ大胆に挑戦していきたい。

そういうメンタルを手に入れるために、興味を持ったというのが大きいです。

また、自分は10分たりとスマホを手放せない「スマホ中毒」だと思っていて、それも「デジタル・デトックス」したいという目的もありました(笑)

そんな目的を持ちながら、大自然の中でゆっくり時間を過ごして心身共に健康になる機会を持てたら、、というのが私の参加動機でした。

10日過ごしてみて、これらは本当に得られたのか。

結果、ある程度は得られたように感じています。

長くなりましたのでここで記事を分けて、どういう瞑想方法を学んだのか、どんな学びを得たのかについて書いていきたいと思います。

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