Ikeda Hanako

インドネシアから発信するクロスカルチャー・メディア「+62」編集長。インドネシアに23…

Ikeda Hanako

インドネシアから発信するクロスカルチャー・メディア「+62」編集長。インドネシアに23年住んでいます。猫、バティック、書道、インドネシア料理。「ねことバティック」(www.batikucing.com)主宰。

最近の記事

ガムラン銀河鉄道

2022年7月1日に急逝した中野千恵子さんへ(トップ画像は高地伸幸さん撮影)  夜中にふと目が覚めると、誰もいないホームの上に立っていました。すると線路の向こうからすーっと汽車がやって来て目の前にぴたっと止まったので、思わず、ひょいと飛び乗りました。これまで、いろんな取材へ、ジャワの世界へと飛び込んで来た身軽さで。そこには、これまでに聞いたことがないほどに美しいガムランの調べが流れていました。  「あれ? ここは日本のはずなのに、どうして? これは何の音階だろう?」  

    • プラムディヤ「人間の大地」は、インドネシアの「竜馬がゆく」だ!

      インドネシア文学の最高傑作とされるプラムディヤ・アナンタ・トゥールの「人間の大地(Bumi Manusia)」。2019年に映画化され、Netflixでも見ることができます。原作と映画、一体どんな作品なのでしょうか?  私と「人間の大地」の最初の出会いは、大学院でフィリピン文学研究を志していた時。フィリピン史の大家の池端雪浦先生が「これ、読んだ方がいいですよ」と言って貸してくださった。一気に読んで、「(フィリピン文学)負けた」と思った。文学としての完成度と洗練度、ストーリー

      • OBON特別列車

        インドネシア・西ジャワ州チレボンのバティック作家、賀集由美子さんを送る気持ちで「チレボン銀河鉄道」を書いたばかりでしたが、もう帰って来てほしくなり、続編を書きました。NHKのドラマとなった「空白を満たしなさい」(平野啓一郎作)に出て来る「再生者」のように、たとえ期間限定でも帰って来てくれたら、どんなにうれしいか。 賀集さんが亡くなってちょうど一年の時、インドネシア人の友人のプトリが「賀集さんの夢を見たよ!」と興奮してメッセージを送って来ました。「夢の中で、賀集さんを抱き締め

        • チレボン銀河鉄道

          インドネシア西ジャワ州チレボンで2021年6月29日に逝去した賀集由美子さん、同7月5日に逝去した夫のボントット・コマールさんに寄せて。「こうだったらいいな」という願望を込めた、宮沢賢治作「銀河鉄道の夜」のオマージュです。「ペン子ちゃん手帳」の表紙に使った、賀集由美子さん作のバティックのブックカバーから着想を得ました。  そこは夜のチレボン駅でした。しかし、真っ白に塗られていたはずの壁は、淡いレモン色に光り、鼠色だったホームは柔らかな若草色をして、壁の色と調和していました。

        ガムラン銀河鉄道