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【レベルムーン PART TWO】深イイ感想

後半、ネタバレありです。

▼はじめに:

いの一番に言っておきたいのは、すごく良かったです!

現時点でのザックスナイダーの集大成と呼ぶのに相応しい映画です。はっきり言いましょう。THE・ザックスナイダー最高傑作です。少なくとも私は一番好きです。

スターウォーズに代わる新たなスペースオペラとして完璧な仕上がりだと思います。後半は1時間近くずっと戦闘が続きますが、シチュエーションが多彩で全く飽きさせません。

期待はしてましたが、まさか私の中でDawn of Justiceを超えてくるとは嬉しい誤算でした!物語の深さではSucker Punchの方が優るのは変わりませんが、123分にアクションとロマンスと悲劇を程よくパッケージしたSF大作として完璧なバランスだと思います。

ここでは詳しく書きませんが、一部スーパーマンやバットマンやワンダーウーマンのように見える人物やショットもあって、ザックが意識してやってるのは間違いないと思いますが、そういう楽しさ(DCEUで悔しい思いをした人はカタルシスも?)を感じることもできます。

▼美しい撮影:

まずは何を差し置いても映像の素晴らしさを語りたいです。

撮影監督はザックスナイダー自身です。盟友ラリーフォンのエッセンスも受け継ぎつつ、彼自身の感性でフィルムに記録された世界。アーミーオブザデッドではやりすぎだった被写界深度の浅さが本作では良い感じに調整されて観やすかったです。趣味全開からエンタメ作品として丁度良い塩梅を取れるように進化したということでしょうか。(偉そうでスミマセン;)

CGもふんだんに使ってますが、建造物を実際に爆破してる映像も多くて迫力が凄まじいです。ノーラン監督と同じくらい話題になっても良いと思うんですけどねー。アクションシーンが上手いノーランって説明されたら、それだけでどれだけ凄い監督なのかって思いませんか?(笑)

小麦を収穫するシーンも大変に美しいです。映画300でスパルタの戦士たちが守ろうとした大地。映画七人の侍で農民たちが力強く後世へとつなぐ水田。ザックのVEROに時々投稿される美しいショート動画のような趣きがありました。

CGではない実物をカメラで撮ったものが一番美しい。そんなザックの信念を感じます。

#ネタバレ

注意🚨🚨🚨

ここから先は内容に深く言及するので、映画を未視聴の方はここでブラウザバックしてください。

まだの人はNetflixを契約して映画を観てください!


▼泣き虫の戦士たち:

この映画でよく泣く戦士が3人います。コラ、ネメシス、そしてタイタスです。

こんなに主人公チームが泣く映画は珍しいのではないでしょうか。

タイタスは本当によく泣きます。戦いの前夜に打ち明け話をした時もそうですが、最後の勝鬨の時にも皆笑顔なのに彼だけは男泣きしています。屈強に見える男にも弱い内面がある、酒を飲むフリをする理由でタイタス本人も言ってましたが、こういう弱さを真っ直ぐに描けるザックが実は一番強いと私は思います。そしてこれは映画監督のキャリアで一度完全に挫折したザックだからこそ描けるものだとも言えるでしょう。

間違った政治をする帝国に反旗を起こして敗れ、そこで部下たちを皆殺しにされて、それでも支えてくれる仲間の手を借りて、ついに勝利をもぎ取ったタイタス。

本物の映画を求めないワーナーブラザースにMOSとBVSをぶつけて敗れ、そこでジャスティスリーグとDCEUを破壊されて、それでも支えてくれるファンとNetflixの手を借りて、ついにレベルムーンを完成させたザック。

優れた監督は自身の内面を登場人物に投影しますが、まさにタイタスはザックだったのです。そしてヴェルトの村人たちはスナイダーファンなのです。勝鬨で「タイタス!やったぞ!」と叫んだ爺さんは私たちだったのです。

それではネメシスはどうか?彼女が泣くのは常に死んだ娘を思い出した時です。もう言わずとも解りますよね。ネメシスの涙に投影されているのはオータムンを思い出しているザックです。

逆にザックの「もう泣かない」という決意を込められた戦士もいます。それがタラクです。彼は「母の教えでは少年が男になるのは父が死んだ時であり、それで王子は王になるのだと;それが私が最後に泣いた時だ」と言います。タラクとタイタスは陽陰の関係のように常に並立して描かれます。

戦士の一人には泣きたくても泣けないロボットが居るのも、またザックの一面でしょう。心では泣いていても、泣いているように見えない、見せたくてもできない自分。

このように、ザックの内面にある様々な強さや弱さが7人の戦士に異なる形で投影されているのが本作の醍醐味であり、強い主人公が求められるアクション映画でありながら、主要人物の弱さを隠さないのが本作の特別な点だと言えるでしょう。

▼あの人物が死んだ意味:

この映画で死が描かれる3人の主要キャラに着目します。

まずネメシス。彼女を演じるペ・ドゥナは東洋人ですから、完全にオータムンを意識してますね。そしてアーミーオブザデッドで娘が父を殺すという逆転現象として描かれたように、本作でも死んでいく親を子が見届けるという形で立場を変換して描かれました。どんな理由があっても、子が親より先に死ぬのは絶対に良くないことだというザックの強い意志を感じます。しかも本作は血が繋がってないから、ますますザックとオータムンの関係に見えます。

パート1の段階では、アジア人というだけで簡単に結びつけるのは良くないと思って書かなかったのですが…パート2を観て確信しました。ネメシスは愛娘オータムンですね。そしてこの少年はザックです🥺

次にガンナーです。彼が外見からしてザックとそっくりなことから、彼こそがレベルムーンの世界に飛び込んだザックを表しているというのはパート1から明白でした。コラという伝説級の元兵士と出会い、宇宙を旅して様々な仲間に出会っていくガンナーは、まさに物語を創作するザックの意識そのものだと言えます。そのガンナーがまさかの戦死してしまうとは。これは思い切ったことをしたなと感心しました。作者が作者の分身を殺すなんて。

これを私はこう受け取りました、つまり今後のパート3以降ではザック自身が監督しない可能性もあるのだという示唆だと。映画の中ではコラたち、つまり創造主ではなくて彼が作り出した子供たち、がパート3以降に続くであろう次の目的を持って旅立つ決意が描かれて終わります。ザックの影響を受けて現れた次世代の映画作家に道を空けたよ、というザックからのメッセージでしょう。

このように、ザック本人と娘のオータムンを退場させたのは、とても大きな意味があります。

そして3人目は、最重要でもあるイッサ姫です。物語中盤でスカーギバー(コラ)によって殺害されたと描かれたイッサ姫が、実は死んでないとタイタスが衝撃発言をします。それを聞いて希望を感じるコラ。

いや、生きているという言葉を額面通りに受け取るとそれは語弊があって、イッサ姫自身は実際に死んだのだと私は思います。撃たれて倒れた彼女から光みたいなものが消えていましたから。

タイタスの言葉の真意は、イッサ姫を特別な存在ライフギバー(もちろんスカーギバーの対義語です)たらしめていた《何か特別なもの=命そのもの》は、今も宇宙の何処かで別の形で存在している、という意味でしょう。

これもやはりザックという作り手から離れてレベルムーンは存続できる可能性を示唆しているのだと、私は思います。

▼編集/物語:

パート1では私でさえ「ぶっちゃけ多いなあ」と感じたスローモーションでしたが、パート2では本当に必要なシーンだけに厳選された印象です。

あと同じくパート1ではゲームの強制イベントのように「こなす」感じが私は少し苦手だったのですが、パート2では一つのシチュエーションから有機的に繋がっていくので純粋に楽しめました。

そして夏に公開されるというR指定版では大きく印象が変わる予感がするので、そちらも楽しみです!

レベルムーンは公開前からR指定ディレクターズカットがすぐ後に出ますと予告されてる異常な映画です。このためにいつもは無償の愛を捧げるスナイダーカルトでさえも「ディレクターズカットを観るまでは手放しで褒められない」と様子見してしまっているんじゃないだろうか、と思えるとそこだけ少し損をしてそうな気はします。

トータルで考えれば、まずはPG13で門戸広く配信して数字をしっかり稼ぐのは大事だと思いますけど。

▼スターウォーズのような世界観:

スクエニのゲームのラスボスみたいなデザインの宇宙船動力部といい、その階下で石炭らしき燃料をシャベルで釜に投げ入れてるタイタニック号みたいな労働者たちといい、目の前で王家が殺害され始めても演奏を止めないこれまたタイタニック号みたいな音楽家たちといい、まるでギリシア神話の登場人物のような布を身に纏って復活したノーブル提督といい、良い意味で強引なこだわりとレトロ趣味が無秩序に混ざった世界観がスターウォーズみたいでめちゃ面白いです。

レベルムーンの殺された王家をスカイウォーカー家に置き換えて、帝国の兵士をクローンかドロイドに変更すれば、そのままスターウォーズのシークエル三部作にできたのに…ディズニー社が逃した魚は大きかったですよ!(SWでは人間が大量に殺し合う描写はたぶん使えないのでそこだけ配慮が必要でしょう)

ザック版スターウォーズ妄想:
ルークが殺された!これによってスカイウォーカーの家系は途絶えた。またしても宇宙のフォースのバランスが崩れる危機。しかし救世主はどこか別の形で生まれているはずだ。新たなる救世主を探す旅が始まる!

直接的にデザインが似てるんじゃなくてテクノロジーが理解不能という点が似てるという意味ですよ。

▼ちょっと変なところ:

●セクシーショット

コラがガンナーの胸毛を触って遊ぶシーンだけは、どうにかならなかったかと思っちゃいました。(苦笑)

これも映画全体がR指定だったら、そこまで気にならないような気もするのですが、いかんせんPG13に調整されたマイルドな作品の中では、妙にリアルで浮いて見えてしまいますね。

●キャラ被りのあの人

あと、パート2で村一番のプレイボーイから偉大なる戦士に昇格したダンも気になりました。演じたStuart Martinはアーミーオブシーヴスでブラッドを演じた俳優でもありますが、問題はこの2つの映画は同じユニバースだということです。他人の空似ってことで押し切るのか。…それとも?

(了)

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