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ヴァイキング関連書籍で最初に読みたい3冊

北欧神話関連本、サガの翻訳本の紹介は以前記事にしたので、今回はヴァイキング関連書籍(社会史、文化史など)のうち最初に読みたい3冊を紹介します。


熊野 聰 著 小澤 実 (解説・文献解題)『ヴァイキングの歴史 実力と友情の社会』創元社 2017年


右は旧版『北の農民ヴァイキング』平凡社、1983年


日本におけるヴァイキングの社会史研究での第一人者、熊野聰氏の著書は数多く出版されているが、すべてはこの本から始まっていると言っていいだろう。

私は10代半ばの頃、旧版の『北の農民ヴァイキング』を愛読していた。
ヴァイキングといえば「海の覇者、冒険者」であり、竜頭船で大海原へ乗り出して他国(とりわけブリテン島や西ヨーロッパ沿岸部)を襲撃・掠奪したイメージが強かったが、そんな彼らも故郷では農業や漁業を営む普通の人々であったことを知り、大層衝撃を受けた。
中世初期(ヴァイキング時代)、スカンディナヴィアの社会は都市が未発達で、経済生活の単位は「農場世帯」であったことから、ヴァイキングを「掠奪者」ではなく「農民」として捉え直し、彼らの故郷での暮らしぶりにも光を当てた画期的な本だったと思う。

2017年に出版された『ヴァイキングの歴史 実力と友情の社会』は、著者があとがきに書かれているように、「序章」、「本論」、「解説」、「文献解題」からなり、「本論」部分は『北の農民ヴァイキング』の改訂版とのことである。
また、小澤実氏が担当された巻末の「文献解題」が非常にわかりやすく、この本を読んだ後に興味を抱いたテーマの書籍・論文を探すのに便利。


レジス・ボワイエ 著 熊野 聰 監修 持田 智子 訳『ヴァイキングの歴史と文化』白水社 2001年



ヴァイキング時代の人々の生活を詳しく知りたいなら、彼らの日常を具体的に解説しているこの本がお勧め。
著者のレジス・ボワイエ博士はフランス人。北欧の歴史をはじめ言語や文学に関する研究者であり、日本語版は熊野聰氏が監修されている。

序章でビョルンとヘルガという男女の婚約から結婚までを語り、読者に当時のスカンディナヴィア人の人生に興味を抱かせ、楽しく読み進めることができる。
とにかくすべての章において記述が非常に詳しく、何度読んでも新たな発見がある本。
また、巻末の用語解説は、頻出するが覚えにくい用語を古ノルド語の綴り付きで解説されていて便利。

※表紙画像は2001年の初版本のもの。現在は新装版が出ています。


B・アルムグレン 著 蔵持不三也 訳『図説 ヴァイキングの歴史』原書房 1990年



こちらは発行年は古いものの、わかりやすい解説はもとより多数収録された図版が大変素晴らしいので、ぜひとも紹介したい。

写真もモノクロながら大きくて見やすいが、とりわけ魅力を感じるのは、オーケ・グスタヴソン氏による細やかな描写が特徴的な挿画。



敵地への上陸の様子


イングランドを襲撃したヴァイキングが仲間や船から切り離されて孤立、〈楯の壁(シールドウォール〉をつくるところ。イングランド軍はカイト・シールドを用いているので、11世紀前半か?


上記のような動きのあるイラストは、解説されている場面を具体的に想像しやすく、理解を深めてくれる。

ヴァイキング女性が使用した卵型ブローチの着け方



卵型ブローチの作り方


他にもヴァイキング船、武具、家屋や農場の様子、様々な日用品などがその模様に至るまで細かく描かれている。見ているだけでも楽しいが、ヴァイキング創作をする人は持っていて損はないと思う。

残念ながら現在は絶版の為、古書店で入手または図書館で探してみてください。


【番外編】

熊野 聰 著 『ヴァイキングの経済学 略奪・贈与・交易』山川出版社 2003年


ヴァイキングにとって、なぜ略奪と交易が同じ価値を持つのか。
現代人の感覚では理解しづらいヴァイキングの社会規範や慣習について、サガの内容を題材に解りやすく解説されています。


以上、ご参考になれば幸いです。

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