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血と骨

ビートたけし主演、戦後間も無い日本を生きる在日朝鮮人達の話。

主人公の金俊平は、強靭な肉体と冷徹な心の持ち主。バケモノ。鬼である。
自分の気に入らない者には暴力を振るい、周りの者をコキ使い、大金を稼ぐ。性欲のままに、女を犯して、我が道のみ行く。その道の上に邪魔者が入れば、暴力を振るう。
そう、ひたすらに胸糞悪い映画なのだ。
男らしさで見ていて気持ち良い、という感じではない。全くもって何を考えているのか分からず、次の一手に何が飛んでくるのか分からない暴力性。彼のあまりの理不尽極まりない凶暴さに、周りの人はストーリーが進むにつれて、疲弊していく。見てるこっちまで、体力を削られる。
途中で止めようかと思ったくらい、ずっと暗く暴力的で、救いようのないストーリー。

話が終わりに近づくにつれて、力だけを振るってきた金俊平の肉体が老いぼれていく。人間、誰しも老いるもの。鬼と言われた彼もまた、人間の逆らえない運命を辿っていた。
そんな時、周りから向けられた視線は侮辱的なものであった。哀れみなどない。ざまあみろ、といった感じだ。今まで散々不幸にさせられた周りの人が、手を差し伸べるはずもない。かつての勢いを失い、杖をついてヨボヨボ歩く彼の背中から、人の弱さを感じたと同時に、本当の強さとは何なのかを考えさせられた。

この映画のラストで、金俊平は全財産を北朝鮮に寄付し、連れに産ませた息子を半ば無理やり連れて、北朝鮮に帰国する。力を失った最後の最後まで、自分勝手極まりない。最後は、ボロボロの薄いとたん屋根の家で力尽きて、その命を引き取る。息子は、彼が息を引き取ったのを感じたが、表情一つ変える事なく、食事を続けた。死んでも何も思われないほど、彼は人生を自分の強欲に任せて生きて、家族を不幸にさせ続けた。終いには息子が隣にいてもなお看取られる事なく息を引き取ったのだ。誰にも喜ばれない人生。ひどく冷たく、虚しい。

人は皆、平等に生まれて死ぬ。
遅いか早いかの違いはあれど。

持てるものも、人それぞれ。
出来ることも、限られている。

生きる意味など、勝手である。
金俊平は、自分のために生きた。
それだけの事である。人の人生の意味まで問うつもりはない。

だけど死ぬまでの間に出会った人の人生と、
僕の人生が交わった時に互いの味方でいれることが、どれだけ尊いのか。

憎しみや、妬み、僻みじゃなくて、
喜び、笑い合えることが出来たら、
生きてて良かったと思える瞬間を
分かち合えることが、どれだけ尊いのか。

人間の手は、誰かに振るう暴力のために握るのではなく、誰かの手を優しく握るために開いておくものなのだと思う。

ずっと苦味ばかりな映画だったけど、
一度は見て良かった。
ビートたけしの演技に圧倒される。
国民的お笑い芸人の、別の顔。芸の達人。
本物の芸人だ。
次はHanabiとBrotherを見たいと思っている。

映画とか小説とか、結構すぐ忘れちゃうから
こうしてなんかの形で書き残しておきたいと
ずっと思っていた。
GEOで久しぶりに5本映画を借りて、見ているのでこれを機に書いていこうと思う。
ちなみに昨日見たタロウのバカも、あまり後味は良くなかった。残りの3本もあまり、明るい話ではない。
この5本の後は、少し明るい話を見たいと思う。笑

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