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四則演算を使「わずに」数字を作る遊び

高校数学が得意だった人でないと、読みこなせない内容となっております。御容赦ください。

昔、理系人間ばかりで8人で旅行していたときの話。

電車の中でトランプを広げるには少々混雑が過ぎる。しりとりのような単純なゲームは性に合わない。
そこで、他愛もないクイズに時間が費やされることになる。

「ねえ、これは有名だから知ってるかな」
「なになに?」
「4を4回使って、四則演算で0から10までの数を作るやつ」
「あー、はいはい」

これは知っている。

4+4-4-4=0
4×4÷4÷4=1
  ・・・

といった感じで、答えが0から10になるような式を作っていく遊びだ。

なお、10を作る場合のみ、
「それはルール違反なんじゃないの?」
といわれる「ズル」があるので注意が必要だ。

この遊びでひとしきり盛り上がった後、ふと誰かが思いつくように言った。

「じゃあさ、数字も四則演算も一切使わずに3を作れる?」

は?

数字も四則演算も使わないってどういうことだよ?

「答えはね・・・。[π]」

円周率パイにガウス記号を付ける。
ガウス記号とは、小数点以下を切り捨てるという意味だ。πは3.1415・・・だから、ガウス記号をつけると3になる。

「ははは、くだらねー」
「いや、これ他の数字も作れそうだよね」
「例えば?」
「2は、[e]」

eは「自然対数の底」といって、2.71828・・・だから、ガウス記号を付ければ2。

確かにできる。

「じゃあ6は、[e][π]かな?」
「いや、四則演算を禁止した以上、掛け算はダメだ」

つまらない遊びが始まった。数字と四則演算を一切使わずに、どれだけの数字を作れるか。

「掛け算はダメだけど、じゃあ『べき乗』は?」
「『べき乗』ならいいよ」
「なら8とか9は簡単に作れるよね」

8と9の作り方

「なるほど。だとしたら、掛け算を使わずに掛け算ができるよね」
「どういうこと?」
「例えば、[e]と[π]を掛けて6を作りたい。でも掛け算は許されない。こういうときは、べき乗を使って掛け算すればいいんだ」

6の作り方

なるほど。「eの2乗」をさらに3乗すると、「eの6乗」になる。
それを利用して6を作ったわけだ。

「掛け算が可能になったから、だいぶ広がったよね」
「ねえ、俺は2の累乗を全部作る方法思いついたよ」

2の累乗の作り方

なるほど!
ルートの数を増やせば、2、4、8、16、32・・・と好きなだけ2の累乗を作っていくことができる。

「と、ここまでいくとさ・・・」
「うん、足し算を作りたいよね」
「むしろ足し算さえできれば、もう自然数は全部作れるってことでしょ」

足し算を作る方法についてはかなり時間がかかったが、こんなアイデアが出てきた。

「ねえねえ、対数の世界では、掛け算が足し算になるよね」
「うんうん」
「それを使って、足し算を作れないかな?」

彼が言っているのはこういうことだ。

掛け算が足し算になる

例えば「A+B」を作りたければ、まずは「eのA乗」と「eのB乗」を作って、掛けてしまえば良い。そこに対数をつければ「A+B」の出来上がりだ。

「でも、掛け算は禁止されてるじゃん」
「いやいや、掛け算を無理やり作る方法は、さっき既に考えたじゃないか」
「あ・・・そうか!」

そういえばそうだった。先程私たちは、掛け算の作り方を既に発明していたのである。

掛け算の作り方

つまり、A+Bを作りたければ、
・まず「eのA乗」と「eのB乗」を作る
・これらの掛け算を、面倒だが例のやり方で作る
・その対数をとる
という手順を踏むこととなる。

何とも迂遠な方法だが、こうするしかあるまい。

つまりこういうこと

できた。
2の累乗は既に作り終えているわけだから、後は2進法を使えば全ての自然数が作れる。

一同、達成感とともにこの遊びを終えたのだった。

「じゃあ、例えば2024を作ってみてよ」
などと安易に言わないでほしい。とんでもない労力になるのだから。

ちなみに、0は作れるのか?

作れます。
sin π=0

変な話ですみません。
理系が集まるとこういう遊びでついつい盛り上がってしまいます。

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