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中国のリアル「劇場版 再会長江」を日中夫婦で観た感想

中国江蘇省出身の妻と一緒に横浜のシアターで「劇場版 再会長江」を鑑賞してきました。ドキュメンタリー監督の竹内亮さんが中国の長江を遡り、源流の最初の一滴を目指す6300キロに及ぶ旅程を描く作品で、12日から日本でも公開されています。

何を隠そう竹内亮さんは、私にとって憧れのスーパーマン。もともと日本のドキュメンタリー制作会社の社員で、その後、奥様の故郷でもある南京に移り住み中国でドキュメンタリー制作を開始。自らディレクターとMCを務める中国に住む日本人、或いは日本に住む中国人に密着するドキュメンタリー「我住在这里的理由(私がここに住む理由)」は中国の若者中心に大人気で、私も中国人の友達に勧められて、こんな面白い映像を中国で撮ってる日本人がいるんだ!と感動したのを覚えています。今回の映画はこれまで動画で観ていた人にとっても注目の劇場版、著名人の皆さんの試写会レビューを見てもこれは絶対映画館に行かなければ!と心に決めていました。

ちなみに妻は身動きが取れないという理由で映画館が大の苦手…インディージョーンズの新作を観た時ですら文句たらたらだったのですが、私の説得の末、休日に無理やり引っ張り出すことに成功。結果的には横で観ていて笑ったり泣いたり…私以上に楽しんでいました。

「再会長江」はタイトル通り10年前に撮影した地を再訪しながら長江の源流を目指す壮大な旅ロケドキュメンタリーで、その土地土地の人物密着映像が10年前⇆現在で交互にカットバックしながら進んでいきます。同じく長江流域に住んでいた妻もちょうど日本に来たのが11年前だったので懐かしい地元の情景も重なって引き込まれたのでしょう。

この映画はドローン空撮を駆使した長江流域の美しい景色や10年で激変した中国人の暮らしなど様々な見どころがありますが、竹内亮さんの生き様がダイレクトに反映されているのが何より心に響いてきます。竹内さんが中国でゼロからのスタートを切ったのが32歳だそうですが、45歳になられた今、Weiboで525万人、SNS総フォロワー1000万人を超える超人気ドキュメンタリー監督に。

ダイの大冒険の登場人物・竜騎将バランの「今さら生き方は変えられん。大人とはそういうものだ」という名言がありますが、バランがそうだったように大人になっても新しい一歩は踏み出せる。あの時こうしてれば・・とか、考える前に今やれることを全力でやれ!というメッセージ性が「再会長江」を通してひしひしと伝わってきます。(勝手な解釈ですが)

同時に自分にも竹内さんのような人生を歩めるタイミングがあったのかな?とか色々ふけってしまいました。

竹内さんのインタビュー記事を見ると

竹内:おそらく、「中国に住んで怖い思いしない?」って思う人がいると思うんです。僕が住み始めた2013年なんて、反日デモがガンガン起きた直後のこと。そこから10年暮らしてますけど……日本人だから嫌な思いをしたことは、一回もないです。南京の人も、歴史を学んで、日本が過去に行ったことは良くないと認識している一方で、現代において何か言ってくることもなく。

――今聞いて、自分でも「へえ、そうなんだ」という気付きがありました。

竹内:「劇場版 再会長江」を作った目的の一つはそこです。10年前と比べて日本に中国人が増えたのに、私たちは彼らの生活を知らず、イメージだけで傷つけているところがあるのを払拭したかったんです。例えば「中国って空気汚いんでしょう?」とか、「独裁国家で何の自由もないんでしょう?」とか、結構言う人がいるみたいなんですよ。独裁国家で自由がなくて、閉じ込められている国だったら、ここまで経済が発展しないですよね。向こうの人は日本が好きで来てくれる人が多いのに、溝があるのはお互いの国にとって良くないんじゃないかと思うんですよね。

「日刊SPA!」2024年04月11日

僭越ながら僕を含め中国に住んだことがある人って、多かれ少なかれ竹内監督と同じ気持ちだと思うんです。ニュースで切り取られるのはやっぱり中国のネガティブ情報がメイン。それはそれで知るべきことではあるけど、もっと中国人や中国文化のポジティブな面も日本人に知ってほしい。「再会長江」はそういう意味でも僕達のような既に中国に興味を持っている人だけじゃなくて、中国にあんまりいいイメージを持ってない方にこそ推したい。

中国で暮らす人々のリアルを知ると、国や地域で政治・経済・文化、ライフスタイルまで何から何まで違うことだらけだけど、笑って泣いて仕事をしてお酒を飲んで…やっぱり人間本質は変わらないんだってことが見えてくると思うんです。

ネタバレを避けるため具体的なシーンには触れませんが、私個人的に一番考えさせられたのは同行している中国人カメラマンの方のある言葉と、中国と日本でWeChatのテレビ電話をつなぐシーン。

映画鑑賞のあと、妻の実家にいって家族とご飯を食べたのですが

相変わらずガチ中華

その場にいた家族が、中国江蘇省揚州宝应县の曹甸镇という見渡す限り畑や田んぼだらけの田舎にすむ二姨娘(妻の母の4姉妹の上から2番目の姉)とテレビ電話をノリで繋いだんです。

曹甸の田園風景

去年の9月、私は親戚挨拶回りで一度曹甸を訪れていますが、失礼な言い方だけど観光では絶対に行かない超ド田舎!当時はまるで別世界の出来事のように感じていて、そこで暮らす人達とはこの先一生会えないかもしれない…そんな感慨にふけっていてのですが、帰国後もWeChatの家族グループでつながっているし、こうしてテレビ電話であっさり対面できちゃうのが便利な時代になったなぁと思う反面、美しい想い出を砕かれたような寂しい気持ちにもなりました。

かつて憧れたチベット高原や新疆ウイグル自治区への旅、今からでも行きたい気持ちはありますが、SNSで世界が繋がっている今、抖音(中国でのTiktokの呼び方)を開けば地方の少数民族の暮らしや雄大な自然が人差し指のスクロール一つでいくらでも見れてしまいます。果たして、20代で中国各地をひとりで周った時のような感動が再び得られるのか?それを確かめるためにも、また時間を作って中華圏をじっくり旅してみたいなぁと。

そんなこんなで「劇場版 再会長江」観る人の視点によって様々な発見があるかと思います。お近くの映画館で是非!

以上、我推荐这部电影的理由でした!


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