見出し画像

会津塗の良さを語りたい(1)歴史編

工芸好きの旅人、はるかです☺

歴史の話は好きですか。
詳しいわけではないですが、旅行に出かけた場所の過去を掘り起こす作業はわたしにとってはけっこう楽しかったりする。

この記事では福島県会津若松市の「会津塗」の歴史についてまとめました。輪島塗や津軽塗よりも早くに生産が始まった会津塗。会津若松は、歴史好きの方にとっては、思い入れが深い土地かもしれません。
会津塗を軸にした新たな視点をもって同地への思いを馳せてください。

「会津塗」の記事は歴史編と技術・材料編の2回に分けました。(具体的な技法が気になった方はぜひ次回の記事もみてね👀)


会津塗の歴史

①植林によって、漆の生産が始まった室町時代

越後山脈や奥羽山脈などの山脈に囲まれた福島県会津若松市。

輪島塗・津軽塗よりも早い時期、室町時代に会津塗の生産に先んじて漆の生産が始まりました。漆の木の種は硬い果皮に覆われており、自然に漆の木を増やすのは非常に難しい。しかし、この地は、盆地特有の気候と山に囲まれた環境。漆づくりに適した場所でした。

そこで会津藩の藩主は、漆の木の植林を始めます。

漆の樹液から取れる漆は防腐力や抗菌力が高く、漆を塗った漆器は暮らしに取り入れられ、漆器づくりも広まっていきました。

②秀吉の命令でやってきた蒲生氏郷が「会津塗」を産業として成立させた安土桃山時代

産業として、会津塗がはじまったのは安土桃山時代。

豊臣秀吉の命令で会津藩藩主となった蒲生氏郷(がもううじさと)によって、基盤が作られていきました。千利休の弟子を務めていいた蒲生氏郷は、弟子の中でも特に優れた利休七哲に数えられる文化人。この人、会津に来る前は日野椀という漆器の産地として有名な滋賀県日野の領主でした。

蒲生は、会津入りに際して木地師(キジシ)や塗り師など(前身である)日野出身の漆器の職人を会津に招き、高い技術力を会津の職人に広めました。

「塗大屋敷」と呼ばれる漆器の伝習所では、職人の育成や技術の向上がなされ、会津藩からの保護を受けるようになりました。

③会津徳川家の保護のもと、蒔絵技術など隆盛を遂げた、江戸時代

江戸時代(1643年)に会津藩藩主となった保科正之が、漆の木の保護育成を奨励し、会津漆器を保護したことで、さらに産業として発展していきました。江戸初期、会津藩で20万本ほどだった漆の木は1700年頃には100万本を超えるほどとなりました。(5倍!)

その後、5代藩主松平容頌の家老田中玄宰(たなかはるなか)が京都から蒔絵師を招きました。新しい蒔絵技術の到来です。

さらに、江戸のみならず長崎を通じて中国やオランダへ輸出したことで、会津漆器産業は世界的にも注目を集めるようになりました。

このようにして、江戸時代には会津徳川家の保護により、塗りや加飾の技法も多様化し、会津塗の文化が花開きました。

④戊辰戦争の苦悩と再起、明治・大正時代。そして、戦後。

室町時代から安土桃山、江戸時代と発展を遂げた会津塗。時代のうねりがこの地に至ります。

1868年に戊辰戦争が起こると一時的な衰退を余儀なくされました。会津藩は、旧幕府軍につき、新政府軍と戦いました。新政府軍が勝利し、戦場となった会津一帯は焼け野原となり会津塗は壊滅的な打撃を受けてしまいました。
しかし、1872年パリ万国博覧会に出品されるなど明治の中頃には再び日本有数の漆器産地として復興を遂げることができました。

大正時代になると、一部の機械化に成功するとともに漆の技術が高級化したことで地場産業として盛り返します。この頃には、高級漆器と大衆漆器の差別化が行われ、会津塗の需要が高まりました。

戦後には、アメリカ向けの輸出がヒットし、高度経済成長期には素地をプラスチックにした手軽な会津塗りが生まれるなど、さまざまな試みが行われてきました。

戦火で途絶えてしまわれるかと思われた伝統技術は、職人の高度な技術と会津漆器を愛する人たちのアイデアによって現代まで受け継がれてきました。

⑤会津塗のこれからと挑戦、若手を育てる令和時代

会津塗は、1975年に経済産業大臣指定の「伝統工芸品」となり、2019年にはその技術が会津若松市の指定無形文化財に指定されました。

現在は、椀や花瓶、茶器などの伝統的なものに加えて時代や生活様式の変化に合わせ、酒器やカトラリー、アクセサリーなどさまざまな形で、手に取ることができます。

また、伝統産業を後世に受け継いでいくには、後継者となる職人の育成が肝要です。会津若松市では、会津漆器の職人を目指すための技術講習会が、週3回行われるなど後継者を養成するための活動も行われており、今後の会津塗にさらなる期待が高まります。

今回、参考にしたのはこの記事です。

日本工芸スタッフ。日本の伝統工芸に魅了され、その美しさや技術に感動する日々。旅行が大好きで、新たな文化や素敵なものに触れることが大好きです。このnoteでは、日本の工芸文化や旅先での出会いを通じて感じたことや、見つけた情報をシェアしていきます。一緒に工芸品の魅力に迫りましょう!


この記事が参加している募集

日本史がすき

一度は行きたいあの場所

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?