日米国防

日米防衛相会談を終えて 改めて浮き彫りになった日本記者のレベルの低さ

トランプ政権の閣僚として、初めて日本に訪問したマティス国防長官。元海兵隊員であり、日本にも駐留した経験のあるこの人物が国防長官に就任したことは、日本とってはこのうえない適任者だろう。

私達、一般国民は有力政治家の発言に振り回され、「過去の政権のやったことだから」という無責任な言い回しで、翻弄されてきた。それがこれまでの日本政治であったし、トランプ大統領の発言である。

オバマ大統領の政策すべてを否定し、TPPや難民問題では早速手を付けて、過去の政権が行ってきたルールには従わない姿勢を全面に打ち出している。それは日米同盟のあり方についても言及されてきた。在日米軍の駐留負担費は世界でトップなのにもかかわらず、「全額負担せよ」と言い張る。そのような大統領が任命した国防長官が日本にやって来るということで、普段、安全保障に興味を示さない大手マスコミと自称平和主義者も、さすがに注目せざる得なかったのではないだろうか。

紳士的かつ信頼できる器のマティス氏

結論から言えば、マティス国防長官の誕生は大当たりだ。ここまでの適任者は日本側からすればいないように思える。非常に有能で、紳士的である。国際情勢を完全に理解している。発言にもあったように、東アジアの緊張状態がいかに深刻であるかを、十分に理解している。

また、稲田大臣に対しての振る舞いもお見事で、日本世論を意識してか、稲田大臣を立てているかのように、まるで「この会談の成功は稲田大臣以外では成り立たなかった」と言っているかのような、紳士的な言動であった。

肝心の政策論では中国を名指しで批判。尖閣諸島は日米安保条約5条の適用内だということを明言し、南シナ海における力による現状変更は明らかに国際法上の違反だと明言。さらに北朝鮮に対しての対応の強化も確約した。

日本側の懸念事項だった在日米軍駐留経費については、「日本はお手本だ」と言ったとおり、十分な経費負担を行っていることを認めたうえで、「このままで満足してはいけない」と楔を入れたが、それは日米の今後の交渉の中でまとまっていくだろうと楽観している。普天間飛行場の辺野古移設を実現させて、グアム移転など、米軍再編にも力を入れて他の分野で十分カバーできるからである。

日本記者の質問レベルの低さに失望

問題なのは日本メディアのレベルの低さが改めて証明されたことである。NHKと時事通信の記者が稲田大臣とマティス氏にそれぞれ質問したのだが、先立って行われた会見で言ったことをもう一度聞くような質問しかしない。世界に恥をさらしているようなもので、非常に恥ずかしく、腹立たしい。予定調和の質問など、我々国民は求めていないのである。情報を提供する側として国民をバカにした質問であった。

一方で外国記者にも質問が許され、AP通信とフィナンシャルタイムズの記者に質問機会が与えられた。感想から述べればさすがである、の一言だ。APの記者は「米国は昨日イランへの制裁を発表したが、それは軍事攻撃を視野に入れてのことなのか」とぶつけた。私は生中継で会見の模様を見ていたのだが、この質問には正直、「この場でイラン関連の質問をするのか!さすが!」と思ってしまった。一気に場の空気が引き締まる最高の質問であった。またフィナンシャルタイムズの記者も「今後中東への派兵は増強していくのか」など、まさに国際情勢に関する的を射た質問を投げかけた。日本の記者は本当に情けないと思う。

私なら「対中戦略として偶発的衝突があった場合には、そのまま戦闘へとなだれこむのか」「尖閣防衛のために自衛隊や米軍の派遣、出動は考えていないのか」などの質問をするだろう。

先ほどのフィナンシャルタイムズの記者は、稲田大臣に対して「米軍が北朝鮮に先制攻撃を行う場合、日本は加担するのか」という質問をぶつけていた。稲田大臣はうまく逃れてはっきりとした見解を示さなかったが、十分にありえるシナリオなので、しっかりと用意しておくべきだった。朝鮮半島有事は現実になりえることなのに、日本の記者はなぜ質問できないのだろうか。国際情勢を舐めているのだろうか。あらゆるシナリオを想定して、それを国民に提示すべきなのに、本当に情けないというしかない。

トランプ氏も日米同盟はひっくりかえせない

トランプ氏が厚く信頼しているマティス氏自身が、ここまで日本に対して積極的に関与してくることは、日本にとって大きな材料を手に入れたといえる。いくらトランプ氏であっても日米同盟を基本とした東アジア戦略を簡単にはひっくり返せないだろう。

中国、北朝鮮の現状を考えたとき、東アジアが火薬庫であることは誰でわかることである。強固な同盟国である日本に対して、安全保障面では絶対に強く出ることはできない。

対中戦略を考えたときに、前線基地である沖縄の存在は絶対に必要不可欠である。駐留負担費などただの脅しに過ぎない。日本が今後、駐留費を増額する必要は絶対にない。なぜなら中国を抑えることこそが米国の利益につながるとトランプ氏自身が思っているからだ。

そのメッセージをマティス氏に託して、マティス氏は紳士に対応した。私はそう思っている。

(大阪発・Mitsuteru.O)

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