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漆はオワコンか?

日本人の多くが、漆はオワコンと思っている。
(オワコンとは、かつて繁栄していたが現在では見捨てられてしまったり、ブームが去って流行遅れになったこと、および時代に合わなくなったことをいう。終わったコンテンツの略。)

私自身も漆に関わる仕事をするまでは正直そういう認識であった。
しかし、輪島の有名な塗師屋さんの社長が講演で「漆は近い将来消えてなくなる」と話されていたのには驚いた。20年くらい前の話。

業界の人がそこまでいうくらい衰退しているんだなと感じた一方、金閣や日光などでの修理現場を直接訪れて関係者から話を聞く中で、少なくとも文化財を将来へ残し、継承し、守るためには漆は絶対無くならないと確信した。このような日本の文化を作り、保護し、継承する仕事はちゃんとした一つの産業であり、その産業を回すためには漆は不可欠である。それを無くすということは日本の文化の終焉を意味することである。これは極論ではなく本当のことである。合成接着剤で金閣に金箔を貼ったり、ウレタン塗装した日光東照宮が容認される世の中になったら世も末である。でもそれでいいと考えている人も現に存在するのである。

漆はまさしく日本のアイデンティティーなのだが、それを知らない、気にもとめない人が残念ながら大半である。漆が日常のものではなくなってしまったからだが、本当は漆自体をある程度コモディティー化できればよかった。しかし、他の農林水産業のように採取・収穫の生産性を高めるという方向には向かわず、漆を使わずに漆っぽい色や質感のプラスチック製合成漆器や100円ショップにあるような製品を数多く生み出してしまい、漆器や漆製品の方がコモディティ化したのであった。
それを推進したのは当の漆業界であったりするのだが…

私の任務は、漆=オワコンと感じている人を少しでも減らすことである。そして漆生産を産業の一部に組み入れることである。残念ながら今行われているのははっきり言って既存の文化を残すだけの方向でしかない。観光で食っていくにしても大元の産業が自立していなければ見せかけの空虚なものでしかない。
産業とは人々が幸せになり、食っていく仕組みである。

国産漆を育て後世に継承するための活動を行っています。ご支援をよろしくお願い致します。