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沢木耕太郎さんのラジオ特番に生電話出演しました

「深夜特急」ってご存知ですか?
ノンフィクションライター・沢木耕太郎さんの著作で、ご自身が香港からロンドンまでを主に乗り合いバスを乗り継いで旅した時の紀行文です。

僕が大学一年生の頃、最終巻の「第三便」が出版されて、カッサンドルの有名なポスターを装丁に使った斬新なデザインの本を書店で見かけて買ったのですが、当然第一便と第二便を読んでいないとと意味がないので、バイト代をつぎ込んで全部揃えたのでした。もう寝る間も惜しんで読みふけりました。
沢木さんは長身でかっこいいので当時から若者の憧れ的存在で、文章も読みやすく素晴らしい。旅に関する著作の他に、特定の人物にスポットを当て、新たな視点で紹介するという作品も多い方です。

前にも紹介しましたが、沢木さんの最新作「天路の旅人」を読み、ありきたりな言葉になってしまうのですが、深い感銘を受けました。沢木さんが手がけられてきた「旅」と「人物」の両方をミックスさせ、その集大成のような趣のある大作です。新聞の書評や出版社の冊子でもよく取り上げられているので、それも取り寄せて読んだりしていたら、12月の中旬頃に、沢木さん出演のラジオがクリスマスに放送されるということを知りました。

J-WAVEで長年恒例になっている長寿番組だそうで、年に一度沢木さんがDJとして出演されるのを楽しみにしている人も多いと聞き、僕は恥ずかしながらこの番組を全く知らなかったのですが、Radikoで聴けるから聴いてみようと思い、専用のウェブサイトを覗いてみると、沢木さんにメッセージが送れるらしいのでなにか書いて送ってみようと思い立ちました。

J-WAVE Christmas Special

沢木耕太郎~MIDNIGHT EXPRESS 天涯へ 2022~
https://www.j-wave.co.jp/special/sawaki2022/


「天路の旅人」は盛岡でインタビューが行われ、盛岡の風景を感じさせるシーンも時々出てきます。それが地元の者としては大変嬉しく、これをメールしてみようと書き出しました。

沢木さん、こんばんは、メリークリスマス。
僕は盛岡に住んでいます。「天路の旅人」を本当に一字一句を噛みしめるように読ませていただきました。地元にこのような壮大な旅をした人が住んでいたなんて、地元でもほとんど知られていませんでしたし、沢木さんが取り上げてくださらなかったらさらに忘れ去られていたことでしょう。ありがとうございます。
本には盛岡のシーンがたびたび登場しますが、西川さんと沢木さんの出会いと別れが雪の盛岡・開運橋であったこと、とても印象深かったです。開運橋はまさに盛岡人にとって出会いを別れを感じる場所なのです。
今もちょうど盛岡はしんしんと雪が降り積もっています。西川さんがあの橋を渡って去っていく様子が僕の目に浮かびます。

このメールを送ってすぐに、なんと番組の担当の方からメールが来て、ぜひ番組で取り上げたいのと、沢木さんと電話でお話していただけますかとのオファーが!こんな私でいいのかと少し不安に思いながらも、あの沢木さんとお話ができるワクワク感の方が強く、即承諾しました。

番組が24時からスタートして、これからこの番組に出るのかーと思いながら待っているとあっという間に出番となり、沢木さんとの電話が繋がり、生でお話しました。盛岡の雪の状況はどうか、私の漆の仕事のこと、開運橋のこと。5分程度でしたがあっという間でした。最後に沢木さんが「またね!」と言ってくれたのがなんだか新鮮で嬉しかったなあ。

3時間ほどの番組の最後に、沢木さんが「「批評する側でなく、何かをつくる人になれ」、「作り終える幸せを味わってほしい。何か1個作る、そうしたらその作品を見ると幸せになる。」と語っていたのがとてもしみじみと胸に来るものがありました。これは物書きだけではなくあらゆる分野に言えることとおっしゃっていましたが、私の手掛けていることにも当然通じるので、クリスマスの夜にこのような言葉を聞けたのは、沢木さんとお話できたことと共に大きなプレゼントに感じたのでした。


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