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スポーツトレーナーの思考回路

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体系立てて学ぶことの大切さ

スポーツトレーナーまたはフィジカルコーチとして、身体のことや動きのことを勉強する機会はこの業界にいる人であればもう当たり前の行為だと思います。 講習会などを利用することも多いと思います。 いずれにせよ勉強の目的は、『選手への指導に活かすため』ですよね。 どんなに知識があっても、究極は選手のパフォーマンス向上の役に立たなければ無用の長物。どんなに物知りでも、どんなに論文を知っていても(書いていても)、”選手目線”で意味がなければ、(少なくとも私にとっては)無意味です。 ”答え

『構え』について

いろんなところで何度も書いてきたことだが、とても大切なことなのでしつこく書く。 「構え」について。 日本のスポーツでは、構えは非常に重要視される対象となっており、例えば野球だとバッティングの構えや守備の構えは特に指導が入りやすいところになっています。 野球をやっていた私自身も、構えについてはコーチや先輩から何度も指導を受けたタイプ。私はそれがとても嫌だった。 その時に感じていた違和感。それは「やたら外見ばっかり言うやん」でした。 肘の角度、脚の角度。腰の角度。角度角度角度。

『練習の質』を上げると、強い相手には勝てない

スポーツをやるほぼ全員が、“自分より強い相手”を追い抜く必要に迫られる。 いやいや自分はすでに最強だから、という人も少ないながらもいるかもしれない。 しかしそのカテゴリのチャンピオンでも、『その先』はある。 地区チャンピオンならば全国大会、日本チャンピオンであればアジア大会や世界大会。唯一、世界チャンピオンだけは自分より強い相手がいないと言えるだろう。 しかしそれは優勝したその時だけであり、その後も自分が最強という保証ではない。 すなわち、スポーツで勝利を追い求める行為とは、

怪我した部位は”被害者”

例えば、靭帯損傷や肉離れなどの怪我。 これらを「不運/運が悪かった」扱いをした瞬間、”見えなくなるもの”が非常に多くなってしまう。 膝を例にとると、靭帯損傷や半月板損傷など膝の怪我の下部構造として存在しているのが動作時の『膝へのストレスの増大と蓄積』である。 膝にストレスが集まるということは、膝単体での出来事ではない。つまり全身が関係する。 膝の怪我は膝が悪いのではなく、膝が”被害者”である。 膝が怪我するシーンに深く関係するのが踏ん張って身体を支える動作。 膝の怪我の多く

プロだからそうできるのか。そうしたからプロになれたのか。

私が普段個人的にサポートしている選手はほぼ全員がプロ選手だ。 競技はサッカーや野球など複数にわたっている。 違う競技だから、同じメニューでも異なるタスクや制約を付加する。 トレーニングの良し悪しは身体、動き、そしてパフォーマンスの変化として現れる。 いずれにせよ、一定の頻度以上で継続しなければそれらは変化しない。 どの競技でも、どのレベルでも、これだけは確かだ。 私が指導しているトレーニングは身体操作トレーニングである。 身体操作はコモドドラゴンのようなダイナミックなものか

トレーニングをどのように選ぶのかの考え方

アスリートが身体を鍛える際の手段として、筋トレはもちろん重要な役割を担う。 このブログを読んでくださっている選手たちも、筋トレをしたことがない人はほぼいないだろう。(筋トレはウエイトも自重も全て含む) ではそういったトレーニングの際のターゲットはどのように決めているだろうか。 そしてそのターゲットを鍛える方法はどうやって決めているだろうか。 この部分、『トレーニングの選択』というフェーズに該当するが、一般的に考えられている以上に、非常に重要だ。 そしてもちろんのこと、難解で

手段が増えたら重要度が増すのは『原理原則』

世の中にはあらゆるトレーニング”手段”が溢れているが、使える手段が多くなった時に重要度が一気に増すのが「選び方」。 努力をするのは当たり前だと位置付ければ、「何をやるのか」が成果の差を生んでいくのは明白だ。 手段つまりトレーニング方法がyoutubeなどで簡単に手に入る今だから、 ”何をどう選ぶか”が勝負を分ける。 何を選ぶかを考えるとき、何を基準に選ぶのか? テレビでやっていた。 トレーニング雑誌に載っていた。 有名選手がやっていた。 人気のyoutubeチャ

間に合わなかったのは、なぜか。

私はごく普通の中学生だった。中学校の野球部に所属し、プロ野球のピッチャーになることを目指して毎日の練習に夢中になるどこにでもいる中学生。 自宅で弟とゲームで遊ぶことも気に入っていたが、それよりも圧倒的に野球が楽しかった。少年野球をやっていなかったので、野球経験は学童保育所での”縦割り草野球”だけ。9人対9人が揃うことなんて皆無。常に変則ルール。なので中学校での入部時は同級生(少年野球出身が大半だった)よりも圧倒的に野球経験が足りなかった。もちろん野球エリートたちとは全く違う世

理解と疑似理解

理解することと知ることの違いはなんだろうか。 様々な視点での解釈があると思うが、私は両者の違いは自己破壊と再構築を伴うかどうかにあると思っている。 理解することは、入ってきた記号(言葉、映像など)を、自分が持っているデータと照合することで自分の中に新たな概念を構築するプロセスである。 この作業は足し算的な行為に思えるかもしれないが、同時にすでに構築されている自己概念の一部が必ず損傷、つまり自己破壊を伴う。 理解の対象が、その時の自己概念から遠ければ遠いほど、この破壊の範囲

トレーナーに必要な思考回路3|説得力

Vol.2では、スポーツトレーナーが同じ仕事を繰り返してしまう状況を切り口に、トレーナーが目を向けるべき問題意識と教育の視点について書いた。 その結果トレーナーが知らず知らずのうちに選手の成長および問題解決能力の向上を阻害していることについても触れた。 Vol.2 ▼ トレーナーに必要なのは、”問題解決型”の思考回路である。 トレーナーが関与することができる多くの問題にはこの思考様式を欠いてしまっては到底クリアできない。 どんなに知識があっても、身体が使えても、思考回路の

トレーナーに必要な思考回路2|問題意識

Vol.1では、スポーツトレーナーの仕事が『問題解決のサポート』であること、そのためには『理由化思考』およびそれを基に発せられる”できない理由ワード”をかなり意識的に避けるべき理由を述べた。 ▶︎理由化思考 自分が向き合うべき課題に対してできない理由を列挙する思考回路 できないことを正当化しようとする(無意識) トレーナーが最も避けるべき思考のスタイル これらはトレーナーという”他者が結果を出すことをサポートする仕事”において不可欠であり前提条件である。 Vol.1 ▼

スポーツトレーナーに必要な思考回路1

「スポーツトレーナーに必要な思考回路」について書いていこうと思う。 特にこれからスポーツトレーナーを目指す方々にとって少しでも役に立てば嬉しい。 ■スポーツトレーナーの仕事をひと言で表すと スポーツトレーナーの仕事は、選手やチームのサポートである。 何をサポートするのか。 それは「問題解決のサポート」だ。 問題解決。 問題を、解決する。 そのサポート。 スポーツに関する問題は多くの場合、選手自身の努力を必要とする。 だから私は「サポート」という位置づけを