見出し画像

国連CEFACT日本委員会 2021年度総会を終えて

【初出:月刊JASTPRO 2021年8月号(第508号)】

国連CEFACT日本委員会の2021年度の委員会活動として、2021年度第一回運営委員会を7月1日、総会(第33回)を7月29日にオンライン会議にて開催しました。議事の要旨を説明すると共に、この機会に、日本委員会組織について紹介します。

 

1.    国連CEFACT日本委員会について

<設立経緯>

EDIFACT前夜

国際貿易関係手続簡易化運動は、国連欧州経済委員会(UNECE)を中心に進められ、日本においては、1971年 貿易関係業界により「貿易関係書式標準化委員会(貿標委)」が設立された時から本格的に進められた。貿標委は、UNECEや各国の簡易化運動推進団体である、イギリスのSITPRO (United Kingdom Board for the Simplification of International Trade Procedures)、アメリカの NCITD (National Committee of International Trade Documentation) などの会議に参加し、国内の貿易関係書式の標準化・簡素化を推進した。この貿標委(the Simplification of International Trade Procedures)が後のJASTPRO(Japan Association for Simplification of International Trade Procedures)の母体となる。

EDIFACT日本委員会

しかし、国際的な動きをみると書式標準化は達成され、次の段階のコンピューター利用によるADP(Automatic Data Processing)化へと開発が移行していた。日本においても標準化に併せADP化を総合的に推進するために、UNECE勧告#4「各国貿易手続簡易化機関」に基づき、1974年財団法人 日本貿易関係手続簡易化協会(JASTPRO)が大蔵省、通商産業省、運輸省の3省共管により設立された。

1987年、それまでデータ交換に関する方式が欧州と北米では異なっていたが、UNECEが設置した欧州・北米の専門家の合同作業部会により、統一されたEDIFACT(Electronic Data Interchange For Administration, Commerce and Transport:行政、商業、運輸のための電子データ交換)が開発された。

これに伴い、UNECEは、各地域にラポーター(Rapporteur)の名称で呼ばれる専門家を地域毎に任命し、EDIFACTの普及とそれに基づく各種メッセージの開発の任にあてることとした。西欧、東欧、北米、豪州に続き、1990年 日本/シンガポール地域のラポーターとしてJASTPRO理事(伊東 健治氏)が任命された。これを受け、その支援組織としてEDIFACT BOARDが日本/シンガポール共同で設立され、さらにそのBOARDで検討される事項について国レベルでの合意を形成するために、両国はそれぞれ国内検討機関として「EDIFACT日本委員会」(JEC:Japan EDIFACT Committee)、「シンガポールEDIFACT委員会」を組織した。EDIFACT日本委員会は、貿易、製造、流通、金融、運輸等の各分野から約50の団体及び有識者で構成され、その審議を円滑に行うための組織として、同委員会の下に運営委員会及び作業部会が設置された。これら委員会の事務局がJASTPROに置かれた。

AFACTの創設

UNECEにおける貿易手続簡易化作業は、その下部機構である「国際貿易手続簡易化作業部会」(通称WP.4 (Working Party No,4))下に設置された2つの専門家グループ「データエレメント及び自動データ交換に関する専門家グループ(GE.1:Group of Experts No,1)」「手続き及び書類に関する専門家グループ(GE.2)」にて進められた。日本は、WP.4に、ECE規約第11条(ECE非加盟国であっても国連加盟国であれば、ECEオブザーバー資格で参画できる)に基づき参加した。

1991年 日本/シンガポールのEDIFACT BOARDへの韓国、中国、台湾のBoardメンバー及び準メンバー加盟に伴い、「Asia EDIFACT Board」(ASEB)に変更された。この組織は、1999年にAFACT(Asia Council for the Facilitation of Procedures and Practices for Administration, Commerce and Transport、後に Asia Pacific Council for Trade Facilitation and Electronic Business)に名称を変更して現在に至る。

CEFACT誕生

UNECEは、1997年 WP.4をCEFACT(Centre for Facilitation of Procedures and Practices for Administration, Commerce and Transport、後に2000年にCentre for Trade Facilitation and Electronic Businessに改称されるが略称は引き継ぐ)として発展的に改組した。

2007年 EDIFACT日本委員会(JEC)は、略称JECをそのまま残し、フルネームを「国連CEFACT日本委員会」に改称した。

 

<国連CEFACT日本委員会の活動>

日本委員会は、総会(年1回)及び運営委員会(年2回程度)で運営され、国連CEFACTに向けた審議、及び国連CEFACTが進めるプロジェクトや各種勧告に関する日本の関係業界の意見集約、関連する報告・計画の情報共有等を行うべく活動を展開している。

Head of Delegation

国連加盟国は、国を代表するHoD(Head of Delegation)を指名し国連CEFACTに登録している。HoDには、国連CEFACT総会に出席し、承認プロセスに参加する責務と国連CEFACT活動に参加する専門家(Expert)の指名する責務がある。日本は、3省(財務省、経済産業省、国土交通省)による1年毎の交代制としており、2021年度は財務省となる。

このため、3省(財務省、経済産業省、国土交通省)は、オブザーバーとして日本委員会に参加している。また、JASTPROは、Acting HoDとして、国連CEFACTの我が国唯一の窓口として、また、日本委員会の事務局として日本委員会、運営委員会の事務を担うと共に、作業部会における審査、評価に参加している。

4つの作業部会

日本委員会の活動は、実働を伴う以下4つの作業部会によって支えられている。

①    国連CEFACT標準促進委員会(JUS:Japan Committee for UN/CEFACT Standards)

国連CEFACT活動への参画方針等の検討。国連CEFACT勧告の評価、及び国連CEFACTへの提言。我が国発の提案を国連CEFACTプロジェクトとして申請する場合の審査や手続。国連CEFACTコードのメインテナンス要求の事前評価・申請などをJUS委員、JASTPRO事務局にて行う組織。UN/LOCODEについてはJapan Focal Pointとして国連CEFACTへの申請を評価している。

②    国連CEFACT観光部会

UNECEがEDIFACTを開発し普及に力を入れたことで、貿易分野のみならず旅行観光分野においても、コンピューター利用による商取引の国際標準化活動を推進する動きが始まった。

そこで1992年に運輸省(当時)の呼びかけにより、旅行観光分野の主要な協会・企業により設立された「国連EDIFACT旅行メッセージ勉強会」を母体として現在の「国連CEFACT観光部会」に至り、JECの下に組織されている。「NPO法人観光情報流通機構(JTREC)」が事務局を担い、独立した組織として国連CEFACTの活動に直接貢献もしている。今や情報通信技術の活用は、旅行観光分野の事業の生死を左右する重要な位置づけとなっており、標準化のみの観点から、より幅の広い電子ビジネスの推進に向け活動を展開している。この分野では、アジア太平洋地域の国・地域との旅行客の相互交流が多いことから、実務面でも深い関係があり、2010年にはAFACTにも旅行観光部会が設置され、国連CEFACTに参加していない国・地域の課題も踏まえ国連CEFACTの国連標準に反映する活動も行っている。

③    サプライチェーン情報基盤研究会

サプライチェーン情報基盤研究会(SIPS)は、国内におけるビジネスインフラ構築を進めてきた「次世代 EDI推進協議会」(国内のEDI促進のため経産省のバックアップで約60の業界団体で立ち上げた協議会でJIPDECが事務局)の成果(業界横断EDI仕様V1.1)を継承し、グローバルな情報連携との相互運用性を保ちながら、その成果を金流・商流の情報連携を含め、サプライチェーンに関る業務・業種に幅広く拡充してゆく 役割も担い、2015年に国連CEFACT日本委員会の下に設置された。実務面では、国連CEFACT活動への直接の貢献や国内業界団体と直接のコンタクトがある。国際連携、金流商流情報連携、国際/業界横断EDIの3つのタスクフォースにより運営され、標準化の基本である国連CEFACT共通辞書(CCL: Core Component Library)の実質的管理を担い、情報項目定義資料やビジネスニーズ根拠につき技術評価を行う。事務局として一般社団法人サプライチェーン情報基盤研究会(SIPS)が設けられている。

④  登録技術審査グループ

国連CEFACT標準に則ったEDI仕様の国内展開、及び我が国産業界の業務要件を国連CEFACT標準に反映させるメインテナンス要求の技術的信頼性を確保するため、2018年に国連CEFACT日本委員会の作業部会として設置され、次の成果物の技術審査を行う。

技術審査とは、国連CEFACTの技術仕様に合っているか否かの審査。国連CEFACT技術仕様には、XMLメッセージ規則のみならず、意味定義を含む情報項目定義手法(コア構成要素技術仕様)なども含む。

  • 国連CEFACT共通辞書メインテナンス要求書

  • 業界横断EDI辞書

  • 業界横断EDI参照メッセージ (主に日本の産業界向けに業界横断で共通に使用する情報項目により設計されたメッセージ。特定業界や業務分野で使用する実装EDIメッセージは、業界横断EDI参照メッセージに業務領域特有の情報項目を業界横断EDI辞書より選択追加することにより設計する)

  • 業務領域メッセージ (国連CEFACT標準に則った業界横断EDI仕様に準拠した特定業務領域をカバーするメッセージの公開)

 

2.    2021年度日本委員会第33回総会 要旨

7月29日(木)オンライン会議にて、20業界団体を含め27委員(委任7名を含む)の参加をいただき日本委員会第33回総会は成立した。

冒頭、日本委員会事務局(JASTPRO秋田専務理事)より、

委員に対して国連CEFACT日本委員会総会出席及びJASTPROに対する支援・協力へ謝辞と、貿易大国、IT先進国の一つである我が国が、国連CEFACTにおける議論に貢献できること、また日本の標準を世界の標準にできることを目指して、委員の皆様に心置きなく活動していただけるよう、事務局として取り組んで参る旨挨拶があり、国連CEFACT日本委員会 第33回総会の議事次第が承認され議題に進んだ。

役員及び監事選出においては、

委員長には、引き続き 早稲田大学名誉教授 椿 弘治氏(再任)、

副委員長には、新たに 三菱商事株式会社 鶴田 仁氏(新任)、

監事には、引き続き 一般社団法人全国銀行協会 小川 幹夫氏(再任)

に就任いただくことが承認された。

新規加入/退会の議題においては、

株式会社トレードワルツの新規加入が承認され、染谷 悟氏(株式会社トレードワルツ 取締役CEO室長 兼 グローバル&アライアンス事業本部長)に委員として参加いただいた。

また、一般社団法人 日本電線工業会の退会が承認された。

 

続く議題として、実働組織を含む日本委員会2020年度活動報告と2021年度活動計画が説明され承認された。内容は次のとおり。

 

1)    国連CEFACT総会・フォーラム

2020年度は、新型コロナ感染により、春のフォーラムや中止、第26回総会のみオンライン会議で行われ、8名の副議長が選出され、勧告としてはシングルウィンドウの確立に関する推薦事項とガイドラインなどが承認された。 

フォーラムは、秋のみ第35回フォーラムとして開催され、持続可能な繊維と皮革のトレーサビリティと透明性プロジェクト等が紹介された。

2021年度も引き続きオンライン会議にて、4月19・20日に第27回総会が開催され、議長のMs. Sue Probert氏が再任され、アジア太平洋地域ラポーターとして菅又 久直氏が選出された。勧告としては、#38貿易情報ポータル(TIP)、#46衣服及び履物分野における持続可能なバリューチェーンの透明性とトレーサビリティの強化等が承認され、#46は特に強調された。

総会に続き4月26日から5月7日まで第36回フォーラムもオンライン開催され、業務領域毎のセッションが持たれた。詳細は月刊JASTPRO 505(5月号)[1]、506(6月号)[2]に掲載した。

本年秋には、第37回フォーラムが10月4日~15日にてオンライン開催されることが決定している。

 

2)    AFACT

2020年度は、新型コロナ感染の影響により、例年開催される中間会議、総会は見送られ、AFACT継続のための運営会議のみ12月9日にオンライン会議で開催され、ホスト国マレーシアが2021年度も継続すること、旅行作業グループの議長が日本から中華台北に交代されることなどが決定された。

2021年度は、7月15日に中間会議がオンラインにて開催され、国連CEFACT総会・フォーラムの概要説明、情報共有に始まり、ブロックチェーン技術の貿易プラットフォームのインターオペラビリティについて説明され、アジア各国のプラットフォームの調査プロジェクトが提案された。また、日本発のプロジェクトである電子交渉eNegotiationが紹介された(近い将来、AI技術が企業システムに組み込まれ、一部の企業間取引における交渉事が電子的に実施されるようになることを考慮し、電子交渉を実装するためのプロトコルにつき、日本から国連CEFACTに新たなプロジェクトを提案している)。

 

3)    標準促進委員会

2020年度は、委員会の開催はなく、DMR提案審査、UN/LOCODEのJapan Focal Pointとしての活動を行った。

2021年度はDMR審査及びUN/LOCODE管理に加えて、国内コード表登録サービス(日本委員会は、国連CEFACTに登録されたコード管理機関)を開始する予定。

 

4)    サプライチェーン情報基盤研究会(SIPS)

SIPS主導で進めてきた国連CEFACTメッセージ構築ガイドラインをベースに、実装に役立つ情報/ツールの提供と導入スキルの普及に努め、国内への国連CEFACT標準の適用を推進した。更に、IoTやAPI-EDIなどIT技術の進化に伴う標準EDI実装法の調査研究を進め、国内外のDX(デジタル・トランスフォーメイション)の推進に貢献することを方針とした。国内外の商取引環境等の変化を捉え、新たな技術に対応するビジネスインフラの枠組みの中で、国際標準と連動する業界横断EDI仕様の新分野への展開を図るため、以下の3つのタスクフォースによる調査・研究を行った。

 

① 国際連携タスクフォース(リーダー:堀内一 UMLモデリング推進協議会)

新たな経済連携協定や貿易円滑化協定などの国際取引の枠組みの中で、商取引(売買・出荷納入に関わるEDI)、金融(支払・決済に関わるEDI)及び生産(製造サプライチェーンに関わるEDI)で使用される情報項目及び情報交換方式を標準化することで産業の情報基盤構築に資するタスクフォース。それを実現のため、関連タスクフォースと国連CEFACT日本委員会・標準促進委員会と協力して、国連CEFACTおよびアジア地域における国際連携調査研究を行う。

  • 国連CEFACTにおける国際標準化とその普及としては、国連CEFACT日本委員会の下、国連CEFACTにおける手法技術PDA(Program Development Areaのことで、国連CEFACTが決めた標準化開発促進の領域で、企画開発分野とも言う)、国際サプライチェーンPDA、およびライブラリ管理チームに参加し、日本提案を含む標準の策定・保守と普及に貢献した。具体的には、電子インボイスへの対応、貿易運輸関連EDI実装への対応のため国連CEFACT共通辞書へ日本提案を反映した。

  • 新技術に対応する国連CEFACTプロジェクト参加に関しては、国連CEFACT標準をユーザーニーズに合わせて展開することを容易にするため、SIPSが主体となって提案したXMLメッセージ構築ガイドラインが、2020年8月に完成し公開された。このガイドラインに対応するため、2021年度に国連CEFACT技術仕様(CCBDA、NDR)修正プロジェクトを推進すると共に、ユーザ間で使用する情報項目を決めるための企業間システム協同メカニズム策定のための新プロジェクトを検討する。また、汎用的な受信確認メッセージ標準化のためのプロジェクトを提案し、2020年12月に完成し公開された。

  • 2020年にSIPS会員により提案された電子交渉eNegotiationは、国連プロジェクトとして登録され、2021年度は、AI連携のための電子交渉メカニズムの標準化プロジェクトを進め業務要件仕様(BRS)と実装ガイドを完成させる予定。

  • 国連CEFACT標準の国内への適用については、EDIのAPI化プロジェクト(RDM2API)を評価し、国内実装の適否につき検討する。また、自動車業界スケジューリング改訂プロジェクト(Automotive)につき、国内のジャストインタイム生産を支える日本自動車工業会のEDI標準への影響を分析する。

 

②国際/業界横断EDIタスクフォース(リーダー:兼子邦彦 SCCCリアルタイム経営推進協議会理事長)

国内産業界の要件からの情報項目の国連CEFACT共通辞書(CCL)へ反映とCCLとタイムリーに連動する「国内用の業界横断EDI辞書」を保守管理し、当該辞書を核にした業界横断EDI仕様を国内産業界に展開するタスクフォース。

国内用の業界横断EDI辞書は、自動車工業会標準の一部であるトヨタWGのEDI、農業機械部品EDI、中小企業共通EDIなどで使われている。

  • SIPS業界横断EDI仕様の国際標準化推進(国内からCCLへ)としては、
    SIPS提案情報項目を反映した最新版の国連CEFACT共通辞書(2020年A版及びB版)の日本語版を整備し公開した。引き続き2021年A版及びB版を整備予定。

  • 国内産業界の情報項目要件(国内税制改定、農業機械部品EDI、電子インボイス、中小企業共通EDI)に基づき、国連CEFACT共通辞書への追加・変更要求を提出し、その統一を実施。

  • 国連CEFACT共通辞書を使用した国内使用メッセージ用のコード表を整備した。2021年度は、国連CEFACT標準に準拠するコード表を整備するため、国連CEFACT標準コード表の日本語化及び国内使用のためのサブセットを整備すると共に、国内業界で固有に策定するコード表及びID表の登録サービスを開始する。

  • SIPS業界横断EDI仕様の国内業界への展開については、
    我が国主要業界標準である流通BMS標準と国連CEFACT共通辞書とのデータ連携分析を進めた。
    流通BMS標準は、大手消費財量販店と納入業者(大手卸、大手消費財メーカー)の取引を対象としている。サプライチェーン上流にある消費財メーカー・中小卸や関連業界(惣菜、飲食など)の多数の中小企業のDX化を目指し、流通BMSデータと中小企業共通EDIとの連携を検討している。

また、国連CEFACT準拠の中小企業共通EDI標準の整備を支援し、国連CEFACT共通辞書との整合化分析を行った。
(ITコーディネータ協会にて、中小企業共通EDI準拠サービス/ソフトの認証制度を開始した)

農業機械部品EDIの標準化推進には、国連CEFACT共通辞書との整合化分析も行った。
(大手農機具メーカーが全農とのEDIを進めるために標準を策定した)

  • 会計ソフトベンダー中心の電子インボイス推進協議会にて国内インボイスの検討が進められた。SIPSは、中小企業共通EDIの観点から、国内インボイスEDIに国連CEFACT標準の採用を提言したが、海外の政府調達インボイスにPEPPOL(UBL)採用の国が多い理由から、PEPPOLの採用が決まった。PEPPOL採用については内閣官房IT総合戦略室が支援している(国内のPEPPOL Authorityは政府が担当)。
    SIPSとしては、PEPPOL版電子インボイスについて ①国内請求慣習及び税制への対応が難航、②受発注/出荷納入EDIとのデータ連携が無いなどの未検討分野があり、国連CEFACT準拠のサプライチェーンEDIメッセージとの連携をどうするかが課題と認識している。
    2021年度は、国連CEFACTメッセージ策定支援サービスを提供する。また、データ連携基盤ソフトウェアを整備し、メッセージデータモデル間のマッピングが容易に行える仕組みを構築できるよう、情報項目の相互変換のためのマッピングテーブル策定を支援する。

  •  2020年度に国内DX推進に関わる次のデジタル化分野につき行った調査(タスクフォース内の情報共有)は、
    経団連「サプライチェーン委員会」の提言、デジタルガバメント実行計画、IPA(情報処理推進機構)によるDX認定制度、TDBC(運輸デジタルビジネス協議会)の動態管理プラットフォーム。
    2021年度には、新規プロジェクトの調査として、スマート物流関連プロジェクト、貿易情報連携プラットフォーム関連プロジェクト、産業データ連携基盤関連プロジェクトを計画している。

 

③ 金流商流情報連携タスクフォース(リーダー:遠城秀和NTTデータシステム技術株式会社)

金融業界の決済高度化に向けた戦略的取組みに呼応した産業界への実装推進を技術的(商流情報項目の整備など)に支援すると共に、金流商流情報の利活用に関する研究を行うタスクフォース。

  • 金流商流情報連携基盤の推進においては、2020年度は電子インボイス対応の検討が中心となり、全銀EDIシステムとの連携推進についての進捗はなかった。
    2021年度は、支払通知メッセージ及びコード表の改訂、全銀EDIとの連携推進では、MIMEにEDI種別識別番号(CIEDI: Cross Industry EDI number)を新設、CIEDI登録サービスを提供するとともに、ISO20022導入ガイドの改訂(CIEDI利用ガイド)を計画している。

  • 金流商流情報の利活用分野の調査(タスクフォース内の情報共有)としては、以下を対象とした。
    ◎欧州電子インボイス標準(EN16931)
    ◎デジタル通貨(デジタル円、デジタル通貨)
    ◎トヨタコイン及びトヨタブロックチェーンラボ
    2021年度は、国内DX推進に貢献できる、金流商流情報連携を活用した応用分野の可能性調査を行う。

 

5)    国連CEFACT観光部会

2019年度に国連CEFACTに設置したプロジェクトと連携した活動を行うこととしてきたが、世界的に新型コロナ感染の影響が大きく、国際活動が困難であったために、2020年度以降、主として国内活動を行っている。

① Sustainable Tourism検討プロジェクト(STプロジェクト)

国連SDGsの指針を踏まえて、持続可能な観光に関する定義、基準、ガイドラインの作成を目的とするプロジェクトであるが、世界的コロナ禍の中で、旅行観光業界そのものが立ち上がらなければ検討が進まないという苦しさがある。2021年8月までは国連CEFACTでの活動が中断の状況である。

②体験プログラムTechnical Artifacts 検討プロジェクト(EPsプロジェクト)

各地域で事業化が進んでいる体験プログラム(EPs)を、国際取引に対応できるようにするため、EPsの技術標準を開発する。国際取引に必要な情報をBRS(ビジネス要求仕様書)にまとめ、整理した情報を国連CEFACTのCCLに登録する。本プロジェクトで定めた内容が、ソフトウェア開発者のメッセージ構築に活用し易いように使い方ガイドを作成する。

2021年度前半には国連CEFACT観光部会の成果として第1版を完成させる計画であり国内での検討を進めていくが、国際協調が困難となる中であることで工程の見直しも考えられる。

 

AFACT対応としては、TT&L WG(旅行観光作業部会)の2021年内の開催にむけ可能な検討をしていく。

新技術の検討と活用に関しては、今後の旅行観光の情報交換において、API, AI, Blockchain、データSecurity等の技術は重要な検討事項と認識された。

ARやXRなど仮想旅行の検討(トレードワルツ染谷氏のコメント)も考えていくこととする。


6)    登録技術審査グループ

技術審査として、2020年度は、国連CEFACT共通辞書メインテナンス要求、業界横断EDI辞書の公開(業界横断EDI辞書(日本語版)2020年A版・B版)、業界横断EDI参照メッセージの公開(受信確認メッセージV5)を実施。

2021年度は、引き続き、国連CEFACT共通辞書メインテナンス要求、業界横断EDI辞書の公開、業界横断EDI参照メッセージの公開(請求書メッセージV6)の実施を計画。

新たに、業務領域メッセージの登録として、中小企業共通EDI V4、金融EDI支払通知メッセージV6を計画している。

 

以上の内容が報告され、国連CEFACT日本委員会総会は閉会した。

各作業部会、タスクフォースは、年間5回から8回の会議が開催され、活発な議論が行われ、標準という面から世の中のDXやSDGsの下支えをしている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?