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バカ耳

音楽が好きで、11歳くらいから聴き始めて、40年ほど聴く音楽のジャンルは変遷しているが聴き続けているのだが、いまだに音質の良し悪しが全く分からない。

聴き初めの頃は、聴く耳がまだ育っていなかったので、ステレオとモノラルの違いも分からなかった。イヤホンを使って初めて左右で鳴っている音が違うことに気づいた。

ピストルズを初めて聴いた時も、ノイズにしか聴こえなかった。そもそも、その当時、何を基準に好きな曲とそうでない曲を区別していたのか分からない。
とにかく、洋楽を聞いている自分カッコいいと思っていただけなのかもしれない。

それでも、1年も聴いていると歌メロやギターリフ、シンセのフレーズなんかが聴き分けられるようになった。のだが、まだこの時点では、各パートを聴き分けられる耳にはなっておらず、ただ単に分かりやすく引っかかりやすい曲を好んでいたにすぎなかった。

それが、中学生の頃くらいから、大体のパートが聴き分けられるようにはなってきた。ピストルズがノイズにしか聴こえなかったのが、同じギターを何個か重ねられているのでガチャガチャして聴こえていたせいだということに気づいた。
そして、ベースの存在感を感じられるようになったし、ドラムの16ビートの複雑なリズムもなんとなくわかるようになった。

しかし、そのあたりでぼくの耳の成長は止まってしまったようだ。

レコードやCDを聴いていて、録音の悪い盤は分かるのだけれど、ある程度のクオリティ以上の良し悪しが全く聴き分けることができない。それより何より、レコードとCDの音質の違いすら分からないのだ。
よく、CDでは人間の聴こえる範囲以外の音はカットしてあるから、レコードの方が含みを持たせた音でいい音なのだと言われるが、まあまあのヘッドホンを使って聴いても区別がつかない。
デジタルリマスターとか言われても、音圧の違いくらいは分かるのだが、音自体の違いがわからない。
昔のMP3の音源とCD音質の違いなら分かったが、ハイレゾ音源と非圧縮の音源もDACを通して色んなヘッドホンやイヤホンを試して見ても、聴き分けられない。

あきらかに安物のヘッドホンならともかく、モニター用のエントリークラスのヘッドホンと、ミドルクラスのヘッドホンでも音に違いがあるのが感じられない。かろうじて低音が効いているとかなら分かるのだが、紹介記事にあるような、「ボーカルが前へ出てくる」だとか、「高域の広がり」だとかが全くわからないのだ。
スピーカーもラジカセの音とコンポの音の違いは分かるけれど、ヘッドホンと同じでそれほど違いがわからない。
ハイエンドのヘッドホンやスピーカーを聴けば分かるのかもしれないが、そもそも手の届かない物なので、比べようもないし意味がない。

ライブハウスなんかでも、どこが音が良いというような話題になっても、知ったかぶって話していたが、ボーカルがはっきりと聴こえるとか、低音が潰れているとかなら分かるが、箱の響きがいいとか外のモニターから出る音質のいい悪いは全く分からない。

悲しいかな、音楽だけが趣味と言える唯一の娯楽なのに、バカ耳で細かい違いがわからない。良い音を聴き分けられる能力があれば、もっと深く音楽を楽しめるのに、それが出来ないことがとても悔しい。

ほんとに、自分はどこまでも中途半端な人間なんだと、絶望してしまう。

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