ぱずう

柄じゃないけどこういうのしか書けない。自分で上げるのは恥ずかしいと言う旦那の代わりに上…

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柄じゃないけどこういうのしか書けない。自分で上げるのは恥ずかしいと言う旦那の代わりに上げます

最近の記事

【小説】タシカユカシタ #9

「君はもう『惜別の部屋』の中にいるんだ。さっき体験プログラムを起動させたって言っただろ」 「えっ」 「この『惜別の部屋』は、あの大楠を基点として学校を範囲内として創られた小さな世界なんだ。だから君は、この学校から出られないし、この『惜別の部屋』から出るには、体験プログラムを終了させるしかないんだ」 「子供っていうのは、みんないろんな夢を見る。テレビ番組のヒーローになりたがったり、空を飛んだり、ぬいぐるみと話をしたり…でも大きくなるにつれて、そんな夢も見なくなる。見ていた

    • 【小説】タシカユカシタ #8

       合成されたような音声が、浩太の頭の中に鳴りひびいた。 「これでよしっと」  そう言ってジャックは、円盤を傍らの空間に浮かせ、あぐらをかいたまま、すうぅっとまた浩太のそばに寄ってきた。 「君の願いを、かなえなきゃね」  急に声が、頭に直接ひびいてくる感じが無くなり普通に耳に届いた。 「えっ、ね、願いってなんのこと」  おどろいて、浩太はたずねた。 「さっき、君は呪文をとなえたじゃないか。その願いをかなえなきゃ」  ジャックは、きんぴかの歯を見せて、にっと笑った

      • 【小説】タシカユカシタ #7

         屋上のうす汚れたコンクリートの上に降り立つと、浩太は両ひざに手をついて前かがみになって、はあはあと荒い息をはいた。強い風が、びゅっと吹いて浩太の髪を乱した。 『どうしたのおぉ?そんなに急いで、鬼ごっこおぉ?』  顔を上げなくても分かる。きんぴかの浩太が、すぐそばにいる。逆さまで… 『逃げてもだめだよ。僕は君なんだから。どこにでもついていくよ』  くすっと笑う。 『ただし学校の中だけだけどね』  そう言うと、浩太からすうぅっと離れた  浩太は、恐る恐る視線を上げた

        • 【小説】タシカユカシタ #6

           どうしてゆかが下だってきまっているのかな  てんじょうがゆかのほうが、おもしろいのに  けしきはみんなさかさま  くるまはみんな上をはしりまわる  てんじょうがゆかだとみちもない  みちがないからそらの上をさかさでふわり  そらが、じゅうたんみたい  ビルのおくじょうにふわりととうちゃく  なかにはいってかいだんへ  かいだんの上はつるっとしてて、すべりだいみたい  ろうかからしきりをまたいでへやにはいる  まるでしょうがいぶつきょうそう  シャンデリアが下から生えてガラス

        【小説】タシカユカシタ #9

          【小説】タシカユカシタ #5

           その日、浩太はいつものように家を出た。いつもとちがっていたことといえば、家を出る前に昨夜発見した天井の落書きに目を向けたことぐらいだ。  ゆか 『どっちが上か下か分からないでしょ』  ふいに昨夜、夢の中で聞いた由香の言葉を思い出した。 (あの夢はなんだったんだろう)  鳥の体を持った由香が出てきて、浩太自身は竜になって空を飛びながら夢をみていた。本当によく分からない夢だ。 「何してるの。早く学校にいきなさい」  美幸は、もたもたしている浩太に向かって言った。美幸自

          【小説】タシカユカシタ #5

          【小説】タシカユカシタ #4

          臨時保護者会のお知らせ   ○○の候、益々御清祥のことと存じます。さて本校PTA役員会並びに教師会におきまして、来たる○月○日(日)に臨時保護者会を開くことに相成 りました。議題は、次のとおりです。 議題  大楠の伐採についての事情説明  以前より本校の課題でありました、本校中庭に貯立する大楠の老齢化による倒木の危険性を鑑み、この度、大楠を伐採する運びとなりましたので、その事情説明を行います。父兄の皆様のそろっての参加をお願い致します。 「先生!これ、どうゆうことで

          【小説】タシカユカシタ #4

          【小説】タシカユカシタ #3

           その夜、浩太は夢を見た。  舞台の幕が開き、モーニングに蝶ネクタイ、仮面をつけてマジックハットをかぶったおどけたマジシャンが、ポケットから赤いスカーフを取り出す。  それをもう一方の手の上にかぶせて、またスカーフを取ると手のひらに上に赤い正方形の箱が浮いている。  その赤い箱にズームアップする。上面がふたのように開き、その中からブリキのおもしゃのようなロボットが出てきて赤く細長いじゅうたんを上から下にするするとのばし、それが階段になる。  その階段をロボットが下りはじめる。

          【小説】タシカユカシタ #3

          【小説】タシカユカシタ #2

          「あの大楠ってさ、なんかアンテナみたいじゃない」  由香は大楠を見上げたまま、そう言った。 「アンテナ?」 「そう、この学校、丘の上にたっているでしょ。その学校の真ん中にあって、校舎よりあんな高く枝を大空に向かって広げているのよ。何か世界に向けて発信してるみたい」  浩太も並んで大楠を見上げた。 「よくわかんないけど…そういえば村瀬さん、この木、絵に描いてたよね」  以前絵画コンクールで、由香が大きな賞を取ったとき、みんなの前で披露された絵を浩太は覚えていた。 『

          【小説】タシカユカシタ #2

          【小説】タシカユカシタ #1

          天井の文字  ゲームにあきた浩太は、リビングに大の字に寝そべった。 「ちょっと、そんなとこに寝転ばないでよ。邪魔でしょ。ゲームしないのなら、自分の部屋で寝なさい」  たたんだ洗濯物をかかえた母の美幸が、足で浩太をこづきながらそう言った。  浩太は、それには答えず天井をじっとみつめていた。 「ゆか」  通り過ぎようとしていた美幸は、浩太のつぶやきを聞きとがめた。 「ゆかってだれよ‌‌‌?どこの子?恋の悩みなら相談にのるわよ」  浩太は、体をおこして、うざったそうに

          【小説】タシカユカシタ #1