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詩集

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2019年8月の記事一覧

どこにでも行けるような気がした

風にのって
波にのって
音にのって
どこまでも
どこまでも
あの雲さえ
つきぬけて

ぼくたちは翼をもって生まれたのに
どうして地面を這いつくばっているのだろう

JAZZは何も語らない

言葉を持つ前の人間は
どうやって愛を伝えていたのだろう
サックスの湿った響き
トランペットの乾いた咆哮
ピアノのみずみずしいメロディ
ウッドベースの温かい足音
シンバルの力強い叫び
ああ これでよかったんだ
ぼくはぼくのままで
きみはきみのままで

素通り

今年も夏がきた
元気よくセミが鳴いている
「離れていくなら最初から近づいてこないで!」
「守れない約束なんていらない!」
とでも言っているかのように
ぼくはまるでアスファルトに転がっているセミの死骸
誰もが無言で横を通りすぎていく

なんでもない

なにもないところに家があって
何者でもない二人がそこに住んだ
何年か経って何かがあって
何者でもない二人は出ていった
一人は何かを言おうとして
一人は何かを置いていった
なにもないところに何かが残って
なんでもないような季節は巡る