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本物の桜

お花見のシーズンは花粉症の人にとっては地獄だ。ぼくも出来ることならこの時期はなるべく外出したくはない

桜といえばソメイヨシノが一般的だが、ぼくの中では桜といえば「山桜」だ。ソメイヨシノはたしかに綺麗だけれどソメイヨシノは人工的に作られた交配種で明治時代に急速に広まったとされている

それまでは日本の桜といえば「山桜」が普通だったのではないだろうか。ぼくは一時期、山桜の盆栽を育てていたことがあるが山桜はとても控えめに咲く。ソメイヨシノは花弁だけにエネルギーが集中したような咲き方をするが、山桜は幹や枝も含めてしなやかで女性らしい形をしていて総合的な美を感じる

本当の美や芸術は全体の調和だと思う。ほとんどの桜の名所は人工的に作られた。桜が見たいからといって他の植生を無視してソメイヨシノだけを増やせば、当然自然界のバランスが崩れる。その結果、毛虫が大量発生したりスズメバチが増えたのもソメイヨシノが関係しているのかもしれない

エノキとかブナとか他の木があって、その中に桜が咲いているほうが美しい。ぼくはソメイヨシノを見ても思考レベルで綺麗だなという感想しか沸かない。それと比べて山桜は腹の底からあたたかくなるような静かな感動がある。ああ、日本人で良かったなと。この美しさが理解できる民族に生まれることが出来て幸せだなと

文化が欧米化することによって脳や感性までが欧米化してしまうのは恐いことだ。例えば欧米人はスズムシの鳴き声を聴いても雑音にしか聴こえないらしい。日本人はそれを美しいと感じる脳を持っている。でも、このままいくと100年後にはそういう日本人特有の感性は失われてしまうだろう

山桜はそんな日本人が日本人であることを教えてくれる貴重な樹木だ。日本人が日本人であることをやめてしまったら、花の本当の美しさを伝えることが出来る人間がこの世界からいなくなってしまうのではないだろうか。

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