カラマデ

コロナ前などはセルフレジはそれ程普及していなくて、スーパーやコンビニエンスストアのレジでお金を手渡すと「……円からお預かりします」と言われていた。
例えば、「千円からお預かりします」というようなことを言われたのだが、この「から」の意味が分からない。「千円お預かりします」ではダメなのだろうか。なんなのだろうこの「から」っていうのは。何を意味するのだろう。

「こちらサンドイッチ一点で460円になります」
「じゃあ、これで」
「1000円からでよろしいですか」
「はい」
「はい、それではサンドイッチ1000円からのスタートです」
「えっ」
「はい、1000円、はいそちらのお客様は1100円、はい1500円、1500円。はい2000円、2000円、はい、もういませんね。それでは2000円で立ち読みしているお兄さんが落札です」
コンビニ店内で突然始まるオークション。買おうと思っていたサンドイッチが見知らぬ人に2000円で売りわたされる理不尽さ。でもサンドイッチに2000円は高いと思うぞ、立ち読み兄さん。

「サンドイッチ一点で460円になります」
「じゃあ、これで」
「1000円からでよろしいですか」
「はい、それでは、1000円からお前の子供まで預かった。返して欲しければ、カラアゲ君をお買い上げ下さい」
「えっ」
「買うのか、買わないのか」
「じゃ、じゃあ、一つ」
いつの間にか子供まで預かるコンビニ店員.そして、驚きの安さの身代金。

「サンドイッチ一点で460円になります」
「じゃあ、これで」
「1000円からでよろしいですか」
「はい」
「1000円からあなたの心までお預かりします」
「えっ」
「お釣りの540円のお返しですが、あなたの心はお返しできません」
「ドッキーン」
冴えない店員なのにときめくのは何故だろう。1000円から始まる恋があってもいいじゃない。そんな恋する乙女の初恋物語。

と散々書きつつも、以前に会社の研修で店のレジに立っていたとき、時々、自分で気付かず「から」を付けていたことは秘密だ。

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