ガガーリン

宇宙飛行士はロケットに乗るときにオムツをはく。長時間トイレに行けないかったり、打ち上げ時にかかる重力で漏れてしまうのが理由らしい。
宇宙に行ったことのない一般の人は、宇宙へ行くのにオムツが必要だと思わないのが普通だと思う。恐らく、人類で初めて宇宙に行ったガガーリンも、宇宙へ行くまでオムツが必要だとは分からなかったと思う。
宇宙空間を漂いながら、こんなはずじゃなかったと頭をうなだれる汚れたパンツのガガーリン。宇宙服の機密性もその悲しさを加速させる。そして、地球に生還したときには、みんなにばれないようこっそりパンツ処分したことだろう。
しかし、ガガーリンは次の宇宙飛行士のためにオムツが必要であると伝えなければならないと思ったはずだ。オムツのことを伝えなければいけないけど、自分のパンツが酷いことになったという秘密は守りたいという葛藤。それとなく皆に伝えるために苦労したことは想像に難くない。

「ガガーリン君、宇宙はどうだったかね」
「はい、非常に素晴らしかったオムツ」
「えっ」
「いや、地球は凄く美しかったオムツ」
言葉の語尾にオムツを付けて必要なことをそれとなくアピール。

会議のテーマはガガーリンの宇宙へ出張報告。出席者に資料を配布するガガーリン。資料は紙の代わりにオムツに印刷されている。

地球生還パーティーに招待されたガガーリン。豪華な立食パーティーで隙を見て皿の上にピーナッツを並べて書く「オムツ」。

「あー、この部屋暑いなあ」
と額の汗をタオルで拭う。前髪の隙間からチラリと見えるのは額に書かれた「オムツ」の文字。

オムツが必要だとメッセージを伝えるのに苦労したガガーリン。「地球は青かった」と感動的な言葉の裏でパンツは凄いことになっていたガガーリン。地球の青さよりも気になるものがあったガガーリン。本当にいいたいことは地球の青さとかそんなことじゃなかったガガーリン。
そんなガガーリンの思いは、今でも宇宙飛行士のズボンの中で生きている。

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