グルニエ

不動産屋の前に置いてあるフリーの住宅情報誌を見ていた。物件の紹介で、特徴や設備のアピール欄に「グルニエ」と書いてあった。特定の一つだけではなく、いろいろな物件にだ。何だろう、グルニエというのは。後ろの用語解説にも「グルニエ」の欄には「グルニエ」と書かれているだけ。全く説明になっていない。

リゾートの高級ホテルなどでは、ウェルカムフルーツなる洒落たものがある。客の到着に合わせ、すぐに食べられるフルーツが部屋に用意されているサービスだ。それを参考に不動産業界で考案されたのが、ウェルカムグルニエだ。引っ越し先の新居にグラタン的なホワイトソースのかかった食べ物、グルニエが準備されているサービス。熱々で湯気を立てたグルニエが新居の床に置いてある。喜び頬張る家族。子供達もニコニコ。グルニエ付きの家に引っ越してきて良かった。そんな瞬間がそこにある。

地中海に面したスペインの小さな村、グルニエ。グルニエでは、昔から屋根に海草を隙間無く敷き詰める習慣がある。そんな習慣を現代の建築に取り入れたのが、グルニエ工法だ。グルニエ工法は、最近の建築界での流行りだという。
グルニエ、茎ワカメの産地としても有名な村だ。

一流フランス料理の店にて。
「お客様、イセエビの茹で加減は如何いたしますか」
「うむ、グルニエで出来るかね」
「かしこまりました」
生でありながら火が通っているグルニエ。一流料理人にのみ許された業だ。フランス料理に日本料理の技法を取り入れて生まれた技法。それがグル煮えだ。

昆虫や蛙が木の枝に刺されて干物のようになっている物を見かけることがある。秋の終わりに多いモズのはやにえだ。一方、一年中いつでも見られるのは、鳩のグルニエだ。木の枝に厚揚げや豆腐が刺さっている。鳩の謎の習性だ。

「グルニエ」
コーカサス地方の言葉で「こんにちは」を意味する。「グルニエ」のある家、それは「こんにちは」のある家。家族がお互い向き合っている家。グルニエハウス、それは理想の家。

何だかよく分からないが、熱々のグラタン的な物が置いてあったり、ワカメがびっしり張り付いていたり、半生の厚揚げが刺さっている家。でも家族はニコニコ。グルニエの家は、みんなの心の中にある夢の家だ。

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