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住むように呑む〜熊本編(前編)

2024年春の「住むように呑む」は熊本でした。
「住むように呑む」とは、新しい酒場巡りのコンセプトです。一定期間、あたかもその街に住んでいるように、ゆるりと酒場巡りをします。私なりに「住むように呑む」の原則を下記のように整理しています。
① 4日以上、1つの街に居住すること(宿泊地の移動はしない)
② 観光は基本的にしないこと
③ 昼間は普通に働くこと(テレワーク)。ただし、午後半休やフレックスを上手に活用して、なるべく早い時間から呑めるようにすること
④ 現地の事前調査はあまりしないこと。
⑤ 宿の近くの街を歩き、気に入った酒場にふらりと入ること
⑥ 酒場の人やお客様から教えていただいた酒場にも足を運んでみること
⑦ 気に入った酒場は別の日にも再訪してみること
⑧ チェーン店は使わず地元の個人店でできる限り呑むこと
ざっとこんな感じでしょうか。なんか段々と定義が増えているような気がします。まあ、要は楽しくできればいいのです。

熊本は震災後に、古町の早川倉庫で開催された県内全酒蔵が集まるイベントに2年続けてお邪魔したのが御縁でとても好きになりました。「古典酒場」の倉嶋編集長のおかげです。倉嶋さんとともにゲストでこられていた吉田類とも、1年目は新幹線で、2年目は空港でお会いしました。1年目は、類さんと話しながら一緒に新幹線の改札を出てくる私を見て、倉嶋さんは新しいマネージャーかと思ったと話してました。
「飲むことが支援につながる」と題して発刊された「熊本酒援酒場」はその際に500円という破格のプライスで発刊された熊本の日本酒蔵と酒場を紹介する本です。ご興味があれば、是非どうぞ。

で、今回はその時にも一緒だった古典酒場部の仲間と、久し振りに熊本に行こうということになった次第です。金曜日の夜に集合なのですが、私の得意技の「早すぎる前乗り」を使い、日曜日に熊本入りしました。本当に早過ぎます。5日早い前乗りです。
熊本市内の花畑町電停近くのホテルに6泊しました。合計訪れた酒場はのべで38軒でした。ざくっとレポートをさせていただきます。

熊本には私のパワースポットの1つがあります。水前寺公園の古今伝授の間です。以前は自由に入れたのですが、今は喫茶スペースになっており、抹茶とお茶菓子のセットを頼まないと座敷に上がれません。熊本到着の日が晴れていたので、空港からのバスを水前寺公園で途中下車して、さっそく古今伝授の間に立ち寄ります。

もう昼時を過ぎていたので、その前に公園近くのラーメン屋でラーメンと揚げ豚足をいただきます。「豚美」(本日1軒目、通算1軒目)という店です。今回の旅の隠れ目的の1つは揚げ豚足を堪能することでしたので、カリカリ豚足というメニューの揚げ豚足に豚骨ラーメン、そしてスーパードライの中瓶です。ただ、残念ながらカリカリ豚足は私が求めるものとはちょっと違いました。でも、嬉しいです。

公園前にビリヤニ屋ができており、だいぶ気になりましたが満腹の自分がいました。
古今伝授の間は、インバウンドさんで賑わっていました。そんな中でいいポジションを得られたので、しばし瞑想という名の居眠りをします。抹茶ではなく、珈琲も頼めました。そして、ホテルにチェックイン。

この切り取られた景色が好きです

街の下調べは、ほぼしていませんが、山本屋食堂は以前から知っており、昼酒するなら初日かなと思い、即座にホテルから向かいます。藤﨑宮前という駅の近くのようです。不思議なところに駅があります。熊本電鉄です。乗ってみたい。ここにたどり着くまではなかなか面白いエリアです。路地をあれこれ寄り道していくのですが、小規模個人店舗の集積地です。客層が若そうな店が多いので、そういうエリアなのでしょう。そんな散策の中でなかなか凄い酒場をみつけました。「大橋電気」(本日2軒目、通算2軒目)です。私の好きな要素がてんこ盛りなのです。

手帳が手書きのメニューになっています

 ①昼の12時からやっている立ち飲み
 ②看板に「スパイス」の文字
 ③間口が広く陽光が差し込む中で呑める、まさに昼酒好適酒場
 ④痺れる店名
 ⑤伝わってくるクラフトビール愛
 ⑥内装もメニューも心が入ってる
などなどです。

このメニューを眺めているだけで呑めます

多分、この滞在中にあと2回は来ると思います。本当にここにたどり着いた自分は素晴らしい、褒めてあげたいです。「明日も来ます」と伝えたところ、明日から3日間は東京に行くので、若者が立ってますとのこと。そして、まさかその数時間後にその若者と合うとは、その時には夢にも思いませんでした。クラフトビールを3杯いただき、結構なボリウムの本格的なランプライスをいただいて退出します。結構、酔います。さっきラーメンを食べたばかりなので、腹も満ちています。よく食べれたな。ちなみに山本屋食堂は団体貸切でした。

ランプライス!

「大橋電気」を出てから、あれやこれやとあみだくじのように路地を行ったり来たりしながらホテル方面に戻ります。土地勘をつけるために街を徘徊して少し疲れたので、通りすがりの酒場に入ります。「天草海士宴」(本日3軒目、通算3軒目)という酒場です。店頭のホワイトボードに、しゃくと豚足と書かれていたのがこちらを選択した理由です。しゃくの唐揚げ、揚げ豚足を頼みます。気付けばいつものように揚げものばかりの注文です。お酒は香露の燗酒で行きます。気づいたらすぐにレモンサワーと辛子蓮根を追加で頼んでいます。ここの揚げ豚足も私が求めるものとは違いました。果たして出会いはあるのでしょうか。

揚げ豚足

ようやく外も暗くなります。腹ごなしも兼ねて街中をパトロールします。入ってみたいなという酒場をいくつか見つけますが、胃袋の具合的には無理そうです。ぴんと感じたバーはやっていません。そんな時に素敵な名前の酒場らしき店を雑居ビルの看板で見つけました。「小皿逆螺子」(本日4軒目、通算4軒目)、素晴らしい名前ではないですか。「大橋電気」に続いて名前に痺れてお邪魔することにします。小皿ならば食べられそうです。今日は店名買いの日だなと思いながら、少し勇気のいる4階の酒場に向かいます。螺子のニュアンスから、つげ義春の「ねじ式」を勝手に思い出し、何となくそんな感じの怪しげな酒場をイメージしていましたが、想像を根本から覆す酒場でした。見たことがないあでやかさです。

赤いショーケースに並ぶ小皿たち

カウンター上のショーケースに文字通り小皿が並んでいます。カウンター上のショーケースというと寿司屋をイメージしますが、違うんです。くっきりした赤色に並ぶ小皿は寿司ネタというよりはケーキのようです。思わず反射神経的にネグローニを頼んで、ショーケースから1品選びます。

たまたま話をしている中で大橋電気というビアバーに行ったという話をすると、バイトかなと思っていた若者が、「僕、明日から3日間、そこにいます」と返ってきます。さっき聞いた明日から3日入るという若者がこの若者なのです。熊本って、そんなに狭い街だっけ、というお話です。
これ以上は食べられないので、「近くにいいバーはある?」と聞くと寡黙なお兄さんから「甘いものは食べますか?」と不思議な質問が返ってきます。「YES」と答えると、「実はうちはもともと近所でスイーツバーをやっているんです」という話になります。それはもう伺ってみるしかありません。さらに聞いてみると、そのバーのオーナーは大橋電気のマスターの奥様なのだといいます。やはり熊本は狭い街なのです。

どこかでみた赤いショーケース。こちらはケーキが並びます

かなりふらふらと街を徘徊しながらそのバーにたどり着くと、すでにお電話を入れていただいたようです。ありがたいです。「CHEMIN D'INFINIT(シュマンダンフィニ)」(本日5軒目、通算5軒目)です。簡単には読めません。カウンターにご案内いただきます。そしてカウンターの上にはケーキのショーケースです。見てお分かりの通り、「小皿逆螺子」のショーケースと同じです。来店したお客様はまずカウンターのショーケースに来て、ケーキを選んでから席に座って飲み物を頼んでます。実に新鮮な光景です。ここは凄いスイーツバーです。このコンセプトは唯一無二。「小皿逆螺子」も唯一無二だと思いましたが、ここもです。熊本は凄い街です。

そして、しばらくすると先程の酒場にいた若者が来て働き始めます。そして彼とは明日もまた今度は「大橋電気」で会うはずです。いい加減酔っぱらったので帰ろうかと思う頃に、お隣のお客様からワインをいただきます。たっぷりと。こうなるともう1つケーキを行きたくなります。たいていのお客様が2つ食べてます。炭水化物ではなく、ケーキで〆る梯子酒もよいですね。

当たり前のように満腹でむかえた2日目。この日は午前中だけ仕事です。ですので、そそくさと午後から梯子酒に出かけます。昨日のリベンジで山本屋食堂に向かいますが、何と今日明日休業の張り紙。うなだれて街を歩いているときに見つけた「うな膳」(本日一軒目。も、通算6軒目)という鰻屋に入ります。

実は今回野熊本訪問のお楽しみの1つたった鰻屋の「ぬた屋」が電話が繋がらないので断念したのですが、鰻は断念できないので。瓶ビールとうな重御膳。御膳につく小鉢と香の物をアテ変わりに先に持ってきていただくのは親切てす。

そして、ここまで来たなら、また「大橋電気」(本日2軒目、通算7軒目)です。この日は雨てすが、雨にもまた似合う酒場です。1番のクラフトビールと砂肝マサラでいきます。予告通りにマスターは不在で、若者がワンオペします。しかし、彼とは昨晩、2つの酒場で出会っているという不思議な関
係なのです。

雨で街歩きもしにくいので、取り敢えず市電に乗ります。早目にお土産買ってもいいしなあなどと思いつつ、熊本駅まで行きます。ふらふらと歩いていたら、「富喜製麺研究所」(本日3軒目、通算8軒目)があります。NKCレーダーの最新号で紹介されていた製麺屋で、行ってみたいなあと思っていたのですが、なんと熊本駅にもありました。

かなり半端な時間でしたが、覚悟して食べます。業務用の大袋がいくつもディスプレイされています。いまでもこういうの見ると嬉しいです。知らない小麦粉もあります。そして麺も背脂も美味いです。六本木にもあるらしいので行ってみます。

もう満腹で市電で街中に戻ります。満腹の時は小皿です。でも、3時オープンのはずですが下に看板がありません。「小皿逆螺子」(本日4軒目、通算9軒目)は、今日はやっていないのかなぁと想いつつ、念のために4階まで上がってみると普通にやっています。

前日も看板が出ていなかったら絶対に来ませんでした。熊本滞在の内容も大きく変わっていたでしょう。でも、看板がでていないのに、次々とお客様が来ます。CCハイボールと、ピンクサワーを呑みます。

夕暮れ時でバーが開く時間ですが、ご紹介をいただいて行こうと思っていたところはこの日もお休みで、街中の角っ子の路面店「木煉瓦」(本日5軒目、通算10軒目)というバーに入ります。

多分、月島で教えてもらったバーです。聞いていた通り、当時のご高齢のマスターは引退しており、ご子息がカウンターに立っていました。いろいろと引き継ぎ話などを伺い、楽しく過ごしました。ここ壁のメニューがとても痺れます。

疲れたので、ホテルで30分休憩します。再度ホテルを出てから、それまで何度か前を通っていつも流行っているなあと思っていたホテル近くの酒場の入口のカウンター席が空いていたので入ってみます。「國枝鮮魚店」(本日6軒目、通算11軒目)てす。「亀萬」を冷酒でいただきます。何となく刺盛を頼みます。なかなかの盛りです。

酒は「七歩蛇」に移ります。そして、外に出ると「七歩蛇」の河津酒造の社長さんがおられました。「今、呑ませていただいていました」とご挨拶します。本当に熊本は狭い街のようです。ありがとうございます。
だいぶ食べて飲んだので〆です。昼間にチェックしていた夜だけオープンするカレー屋「くろやなぎ」(本日7軒目、通算12軒目)にきます。この日は22時オープンでした。薄暗い雑居ビルの1階の中のどんつきにあります。

中に入ったら意外と明るい店です。「鳥飼」を頼んでカレーを待ちます。まあ、よく飲み食べます。明日も頑張ろう。そうこうしているうちに、若者ので満席になります。

カレーで膨らんだ腹を少しはこなしてから寝ようとまた街中を徘徊します。アーケードの途中に「よるぱん」という店があります。文字通り、夜中にやっているぱん屋さんのようです。条件反射的に明日の朝食を買ってからホテルに向かいます。

3日目は朝から夕方までしっかりと仕事です。昼酒はできません。でも、住むよう呑むはランチも楽しみなのです。熊本ラーメンを求めて「黒亭」下通店に行きます。ホテルからすぐです。街中にもあるのですね。生卵2個で頼みます。仕事中なのでノンアルです。

秒速でラーメンを食べ、まだ十分に昼休みの時間があるので、近くの「アロー」に立寄ります。

熊本に来ると必ず立ち寄る喫茶店です。今回もありがとうございます。1日目の夜のまだそれほど遅くない時間にマスターが、タクシーで帰るのを見たので、ご体調を心配していましたが、お元気そうでよかったです。いつものコーヒーとはまったく別色のコーヒーです。今回もついおかわりをしました。

この時のお客様は皆様、県外の方でした。1964年創業でずっと1代でやっておられます。凄いことです。
ホテルにはHDMIケーブルを持ち込んで、テレビをセカンドモニターにして快適に仕事をしています。今回のホテルは椅子もビジネス仕様でとても快適です。この日も夕方までしっかりと働きました。住むように呑むは、家事や野暮用から完全に解放されるので、とても仕事が進むのです。さて、ここから呑みに行くところですが、長くなったので前編・中編・後編の構成にすることにしました。
ご興味があれば、次の中編も見てやってください。また、「大橋電気」も「小皿逆螺子」にも「CHEMIN D'INFINIT(シュマンダンフィニ)」にもお邪魔するのです。



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