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「無所属の時間で生きる」の読書感想文

城山三郎著「無所属の時間で生きる」を読みました。
自分が所属しているコミュニティから離れて出会った人達とのエピソードを綴る点はアルフォンス・ドーテ著「風車小屋だより」と似ている部分はあります。「風車小屋だより」には人里離れた岸壁の灯台の管理人の過酷な生活、寂れた旅館の疲れ果てた女将が描かれています。

それに対して、「無所属の時間で生きる」にはバブルを経験して、自信を持っていた日本の国民や経済人。そして、90年代初期に登場したギャルが登場します。
著者の城山三郎さんは街なかで周囲の迷惑を考慮せずにケータイで喋りまくる、マナーが成っていない当時の若者たちが中年期に差し掛かる頃には日本はどのようになっているだろうと危惧しています。そして、毎日の中に数分で良いので読書の時間を設ける。その効用について説いています。

ケータイはスマホへと進歩して街なかで周囲の迷惑を考慮せずに喋りまくりる若者は現在では絶滅危惧種です。最近では友人たちと電車で移動中やカフェで集合した時にもそれぞれが自分のスマホを操作して、会話らしきものが外部には窺い知れないのも日常の光景です。科学の進歩によりおそらくは著者が想像した未来とは違う世界が拡がる現在はどのように映るでしょう。興味があります。
ネットで検索するとどうしても膨大な情報の中の上澄み部分だけが浮き上がって表示されてしまいます。やはり、たまには普段は行かない図書館やカフェに足を伸ばして名前は聞いたことはあるけど敷居が高い。推しの評論家やユーチューバーが推していない作品に触れるのも良いことです。それこそが正に自分のコミュニティから離れる「無所属の時間で生きる」に近いことなのかもしれません。評論家やインフルエンサーのバイアスを外して、自分の眼で確認する。その時に自分が過去に読んでいた作品と現在読んでいる作品が頭の中で化学反応を起こす。私には検索よりも自分の脚で探すほうが相性が良いようです。
#読書感想文
#城山三郎
#アルフォンス・ドーテ



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