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「桜の樹の下には」の読書感想文

梶井基次郎著「桜の樹の下には」を読みました。
偶然立ち寄ったカフェの本棚に懐かしい漫画「イティハーサ」と同じ棚に置いてあり、つい手を取りました。
主人公が述べる桜の樹の下の話はとてもグロテスクです。しかし、彼が溪でみた光景は自然の法則に従った当たり前の光景です。それに他人とはかなり違う印象を持ちながら、その経験によって彼は他人の和の中に入っていけると述べています。主人公が溪でみた光景の印象を説明する部分は心を掻き乱します。それでも読後の印象がすこぶる良好です。
カフェで読んだあと、自宅に戻って青空文庫で再読しました。更に体調までも良くなりました。グロテスクな部分は非常に粘着質な描写です。それが散漫としていた私の意識を繋ぎ留めてくれたような感じがします。描かれている桜の木の下の光景を肉眼で見たら、気持ち悪くなってしまうでしょう。絶対に見たくありません。溪の光景を見ても何も感じることは今まではなかったでしょう。次からは少しだけ不安になります。しかし、活字で読んでいると頭がスッキリしてきました。散漫としていた意識がひとつの方向に向かっていったような感じです。
以前に坂口安吾著「桜の森の満開の下」をこの作品と混同して、読んてみたら、とても面白くて感想文を書いたことあります。この作品に辿り着くまでにかなり遠回りをしました。懐かしい漫画に導かれて手に取り、アイスコーヒーを頼んだカフェの壁には古い時計が数え切れないくらい吊るされていました。殆どの時計の時刻は不正確です。ですから3時の時報が、3分前、定時、5分後と正に時間差で迫ってくる状況でこの作品を楽しんでいました。読者の神様が存在するのかは分かりません。しかし、どこかにいるのなら不思議な読書体験をさせてくれた神様に感謝します。とても不思議な作品です。
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