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梅崎春生「記憶」の読書感想文

梅崎春生著「記憶」を青空文庫で読みました。
この小説は他愛のない会話と出来事で記憶の不思議さを簡易な言葉で表現したものだと思います。そして、小説の中のエピソードは共感しやすいものです。だから読みやすく、楽しめる内容になっていると思います。
主人公の彼は酒に酔うと壁沿いに歩いて、垂直に曲がります。正確に決められた順路を辿り、どんなに酔っても間違いなく自宅に帰り着きます。
そんな彼が友人との飲み会のあとに帰りの方向が近い知人に同乗してもらい、自宅に帰ります。口数の少ないタクシー運転手は彼にとって有り難い存在です。しかし、タクシー運転手に主人公の彼が帰宅の道順を巡って会話を始めてから雲行きが怪しくなってきます。 
後日、彼はタクシー運転手との一件を同乗した知人に説明して、お互いの記憶の相違から迷宮に迷い込んでいきます。
英会話教室ではお互いの話が噛み合わないことは良くあります。英会話教室の雑談でこんな発言がありました。

「両親の住んでいる仙台で牛タンを食べ飽きたのでマンボウを食べた。」

どうしてそんな話にたどり着いたのか全く覚えていません。しかし、会話とは不思議な生き物で楽しくもあり、可笑しくもあり、ときには喧嘩になったりします。しかし、煙の記憶が数日後には消えるように会話の記憶も消え去って、元に戻っている。そんな繰り返しを優しい筆遣いで描いているそんな作品でした。暇つぶしのつもりで覗いてみると意外とたくさん掘り出し物があるのが青空文庫の良いところです。
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