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【活動報告】生成系AI×和菓子×ハーブティの茶会プロトタイピングbyロフトワーク様(ヒューマンインタフェースデザイン委員会)

今回は、JEITAデザイン部会の中にある、「ヒューマンインタフェースデザイン委員会」の活動で実施した、生成系AI×和菓子×ハーブティの茶会プロトタイプ by ロフトワーク様との意見交換会についてご紹介します。


JEITAデザイン部会 「ヒューマンインタフェースデザイン委員会」とは?

ヒューマンインタフェースデザイン委員会は、デザイン部会の傘下にある、テーマ別の委員会の一つです。

UIデザインを軸とした最先端デザインの調査研究を行うことで、各社・社会への貢献を目指しています。

2023年度は、「AIとインタフェースデザイン」を共通テーマとし、4つのタスクグループ(以下TG)に分かれ、AIやデジタル技術がインタフェイスにもたらす新しい変化を多角的に見つめることで、インタフェースデザインが直面する今日的課題の発見と最新情報の探究に取り組み、業界共通テーマに対する新価値について検討を行っています。

HID委員会の紹介

初めに

異業種先進事例TGでは、IT ・エレクトロニクス以外の業種を中心に、AI やデジタル技術を利用した製品やサービス向けのインタフェースの先進事例を調査。

AIとヒトの境界線」をテーマに、AIを活用した製品・サービスにおけるAIとヒトのすみ分け、何をAIにまかせているかを調査し、そこからデザイナーとAIの今後の関係性/境界線について研究を行っています。

調査を進める中で、ロフトワーク社様が企画運営された「生成系AI×和菓子×ハーブティで新感覚の茶会をプロトタイプテクノロジーとの共創は、意外と「人の手」が重要だった」という記事を発見。

和菓子の取り組みは「生成AIで出したアイデアを人間の手で構築する」という点が我々のリサーチテーマと合致しており、実施された内容について深く取材することで、様々な学びを得ることができるのではないかと考え、ヒアリングのご依頼をさせていただきました。

当日レポート

代々木公園の商店街を抜けた坂の上に建つピンクの外壁の建物が、和菓子屋カフェ「かんたんなゆめ」さんです。2階の客席で、かんたんなゆめ店主の寿里さん、フードエンジニアの宮武さん、ロフトワーク・テクニカルディレクターの土田さんに、先日のイベントで出されたものと同じ和菓子やお茶をいただきながらお話を伺いました。

「かんたんなゆめ」さん
ピンクの外壁と緑のアクセント、ピンクのネオンが目印です。
2階の客席
掛け軸に書かれている「壺中日月長」は寿里さんの好きな禅語だそうです。
お話を伺った皆さま

和菓子について

黄色い練り切りは、AIで作ったデザインを寿里さんが手作業で再現したものです。レモン味で、クリームチーズ餡が中に入っています。上にあるピンクの花は和菓子では使わない技法を使われたそうです。
青色の水菓子は、AIで作ったデザインを宮武さんが3DCG でモデリングしてシリコン型を作り、寿里さんが寒天を流し込んだものです。味はライチ、ジン、レモンで、アンシャンテというカクテルから引用されたそうです。

出していただいた和菓子

プロジェクトのきっかけ

宮武さんがmidojourneyで和菓子を生成してみたところ良い画像が生成され、寿里さんに声を掛けてプロジェクトが始まったそうです。AIが陳腐化する前に発表しようということで、2023年6月にイベントを開くことに。イベントでは5種類の和菓子を作られたとのこと。
プロジェクトの動画が宮武さんのYou Tubeで公開されています

Midjourneyを使っての和菓子画像生成

宮武さんから、Midjourneyで生成したたくさんの和菓子の画像を見せてもらいながらお話を伺いました。プロンプトに時代名を入れたり、和菓子を見つけた場所を入れたり、動詞を入れたりして試行錯誤されたそうです。中でもcomputational wagashiで生成したイメージがよかったそうで、試食させていただいた2種類の和菓子もcomputational wagashiで生成されたものでした。
同じプロンプトでも出力が変わる一期一会感や、自分では思いつかないデザインが生成されることが面白いと仰っていました。また、大量に生成してよいものを選ぶことが大事ということで、作ることができるか、作りやすいかなどを寿里さんとやりとりしながら選ばれたとのことです。
AIが生成する画像を自分たちで再現するという目的があることで、AIが生成した画像の選択に新たな視点が加わることを感じました。

生成した画像を見せながら説明してくださる宮武さん

和菓子の再現

テーマからビジュアルや味を決めていくのではなく、ビジュアルから発想して味を決めていく、いつもとは逆の手順に対して試行錯誤されたお話を寿里さんから伺いました。
例えば、水色の和菓子はAIが生成した通りに作ると不透明感が石鹸みたいで美味しそうではなく、透明に仕上げたら見栄えがよくなったとのこと。また、再現する際に今のご自身の知識だと作れないものもあり、何度も教科書を開いたそうです。和菓子の教科書は中身が何十年も変わってないそうで、古くからの知識と新しい取り組みが合わさって作られた作品なのだと知りました。

練り切りを実演してくださる寿里さん 
宮武さんが作成されたシリコン型も見せていただきました

プロジェクトを行ってみて

異なる専門分野を持つお二人で何度もやりとりを重ね質問し合って再現するものを決めていったり、和菓子を作る際には寿里さんの個性や創造性が入ったことで、自分たちの作品だと思える、と仰っていたのが印象的でした。

茶っとGPTによるブレンドハーブティー

土田さんがロフトワーク食堂で発表されたアプリケーションです。不調やお悩みを入力すると、おすすめのハーブティーのブレンドや抽出温度、抽出時間を提示してくれるそうです。
提示されたレシピに沿って実際にブレンドしたりお湯を注ぐのは人間で、出力のチェック機能も兼ねているそうです。ただ、土田さんはAIが間違えるというところに面白みを感じていて、間違いを楽しめるのは今だけ、と作られたとか。実装についてはchatGPTに聞くことで、思ったより手軽に実装できたと仰っていました。
最初は緑茶のブレンドにしようとされたそうですが、緑茶のブレンドは難しく、味への影響が大きいとのこと。ハーブティーなら大丈夫ということで、ハーブティーのブレンドになったと教えてもらいました。お茶好きだという土田さんのこだわり故のハーブティーなのだと分かりました。

茶っとGPTの裏側も見せてくれながら説明してくださる土田さん

この日のハーブティーは、宮武さんの体調に応えたブレンドです。出力されたレシピに沿って淹れられたハーブティー。私も同じ体調状態だったので、効いている気がする…ような?どうかな?でも美味しい。飲みながら、茶っとGPTが何故このブレンドを勧めたのかを想像して話題にするエンタメ要素もあり、楽しいお茶会になりました。

茶っとGPT体験

最後に

気が付くと外は暗く、意見交換会の時間はあっという間に過ぎていました。
3人のお話を伺い、生成AIはあくまでインスピレーションで、「美味しそう」のような人にしか感じ取れない感覚を表現するには人の感性が必要ということが分かりました。また、AIの出力を実現するために色々頑張って試行錯誤されたことで、自分たちの作品として愛していらっしゃるのだろうな、と感じました。

夜になるとお店の表情も変わります。
寿里さんと宮武さんのお話をグラレコとしてまとめました

今回の交流会を実現にするにあたり、ご協力いただいた寿里さん、宮武さん、ロフトワークの皆さま、本当にお世話になりました。

JEITAデザイン部会に関する問い合わせ
   
   一般社団法人 電子情報技術産業協会
   事業戦略本部 市場創生部 志村・飯生・関・飯沼・飯野
   デザイン部会|JEITA

2023年度JEITAデザイン部会参加企業は以下の通り(敬称略)

OKIプロサーブ、オムロンヘルスケア、キヤノン、コニカミノルタ、JVCケンウッド・デザイン、シャープ、セイコーエプソン、ソニーグループ、TOTO、東芝、ニコン、NEC、東芝テック、パイオニア、パナソニック、日立製作所、富士通、富士電機、富士フイルム、富士フイルムビジネスイノベーション、ブラザー工業、三菱電機、横河電機、リコー、レノボ・ジャパン


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