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FIREBUG・スピークバディ代表対談。経営者は「幹はブラさず、枝葉は柔軟に変えていく」ことが大切

当社はエンタメの力で、スタートアップ企業のマーケティングをメインにさまざまなビジネスサポートを行ってきました。スタートアップ企業が直面する課題、FIREBUGだからこそ提案できるソリューションを、事業成長の後押しとなった事例を交えて紹介する対談企画「Startup STORY」。

第7回のゲストは、スピーキング特化のAI英会話アプリ「スピークバディ」を展開する株式会社スピークバディ代表取締役CEOの立石剛史さん。今回は立石さんがスピークバディを創業した理由、AI英会話を展開する理由について話を伺います。

サービス開発のきっかけは「英語をしゃべってくれるドラえもんがいてくれたら」という思い

佐藤:立石さんがスピークバディを立ち上げようと思った経緯について教えてください。

立石:私はもともと外資系の金融会社で7〜8年ほど働いていました。仕事を通して間接的に世の中に役に立っていたと思うのですが、直接的に役に立っている実感が湧かなかったんです。そこで起業し、BtoC向けの事業をやってみようと思うようになりました。

起業当時、事業テーマは明確に決めていなかったのですが、私自身、金融会社で働く中で最も苦労したのが“英語”だったんです。学生時代、受験もせずに内部進学でエスカレーター式に進学してきてしまった。高校生の頃、英語の先生から「あなたは学年で一番英語ができない」と言われてしまうくらいの英語力しかなかったんです。

金融会社に入社してからは、1年くらい本気で英語を勉強したら何とかなると思っていたのですが、いくら勉強しても全然話せるようにならない。外国人と一緒に働く中、英語が全然できず、気まずい思いしかしませんでした。こういう経験をしている人は自分だけでなく、実はたくさんいるのではないか。そういう人たちの力になりたいと思い、英語学習を軸に事業をスタートさせることにしました。

佐藤:なぜ、スピーキングに特化することにしたんですか?

立石:国内には英語学習の教材や英語学習アプリがたくさんあります。自分自身、それらを使って勉強を続けてきたのですが、どうしてもスピーキングだけは身につかなかった。リーディング、ライティングはひとりで勉強すれば身につくのですが、スピーキングには話す相手が必要じゃないですか。英会話の相手を見つけるのが、資金的にも心理的にも苦労したんです。「家に英語をしゃべってくれるドラえもんがいてくれたら」と強く思うようになり、その思いがきっかけとなり、今の事業を始めています。

人と話すことはそれなりのエネルギーも必要になりますし、特に初対面の人であれば良い関係になれるのか、なども気にしてしまいます。仮にそこが慣れてきたとしても、毎回自己紹介するのは飽きてしまう。これはオンライン英会話あるあるです。そういったものをなくし、純粋に語学力を伸ばすために話せるロボットが欲しいなと思ったんです。

佐藤:サービスを開発するにあたって、まずはどこから始めていきましたか?

立石:サービス開発を始めたのは、2014年ごろです。当時、今ほど音声認識の技術が発達していませんでした。そのため、最初はLINEみたいにチャットで英会話でき、ボタンを押せば音声認識もできるといったサービスをつくっていました。そのころから、「AI英会話をやりたい」と言い、シードラウンドで資金調達をしようとしたのですが、多くの人から「音声認識が無理だから絶対無理」と言われていましたね。

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後から課金ではなく、先に課金に変えた意思決定

佐藤:スピーキングに特化した英語学習アプリというのは、最初から決めていたんですか?

立石:英語学習するにあたって会話相手がいないことが、最も大きな課題だと思っていたんです。起業当初、事業テーマを英語にしたときは、多くの人から「英語学習は続かないことが課題だから、そこにフォーカスした方がいいのではないか」というアドバイスをもらいました。ただ、自分は学習を続ける根性はあるけれど、いくらお金を使ってもしゃべれるようにならない人を助けたいと思い、AI英会話の方に進むことを決めました。

佐藤:サービスを開始して、どのタイミングで課金を始めたんですか?

立石:プロトタイプ版のときからフリーミアムモデルを採用していました。無料でそれなりの機能は使えるのですが、一定以上の機能を使うためには課金するというモデルです。

佐藤:自分は課金サービスをつくったことはないのですが、無料から有料に切り替える瞬間は怖いと言いますか……。例えば、アーティストのライブは観客からお金をいただくので、いろんな責任を感じます。課金を始めたタイミングで怖いとかありましたか?

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立石:最初は追加のコンテンツをダウンロードするには課金が必要というモデルでやり始めたんです。当時は無邪気に「みんな英語学習をもっとやりたくなるはずだ」と思い、そういう設計にしたのですが、実際はけっこう逆でした。英語学習はゲームと違ってやればやるほどモチベーションが上がるのではなく、勉強を始めた瞬間はモチベーションがすごく高く、少しずつモチベーションが下がっていくのを何とか耐えながら続けているんです。

そういった意味では後から追加で課金するよりかは、最もやる気のあるタイミングでお金をいただく。お金を払ってしまったので勉強せねばならない、という形でモチベーションを維持してもらうのもひとつの方法だと考え、課金のポイントを移動させました。

幹はブラさず、枝葉となる部分は柔軟に変えていく

佐藤:最初はどれくらいの金額感で始められたんですか?

立石:最初は月額600円で始めました。Makuakeでクラウドファンディングを実施し、応援購入してくれた人にクーポンを提供するといった形でスタートさせました。
応援購入してくれた人の中から、ユーザーインタビューのために電話でお話をさせてもらったり、弊社のオフィスでお話をさせてもらったりしたら、自分が想像していたユーザー層とは別のユーザー層がサービスを使ってくれていたんです。

最初は東京在住でスーツを着たビジネスパーソンがメインで使ってくれていると思ったのですが、実際は地方の経営者が「周りに英会話のスクールがない」という理由で使ってくれていたり、地方の商社マンが「台湾や中国でビジネスをする際、接待を英語でやるのは大変。けれど社交的な性格でもないのでオンライン英会話も向いていない」という理由でたくさん使ってくれたりしている。想定していたユーザー層とは違ったな、と感じました。

佐藤:今はこれからの方向性などが決まっていっていると思いますが、最初は定性的な意見を聞きながら、仮説を照らし合わせて変えていった感じですか。それとも、最初のイメージ通りに進めてきた感じですか?

立石:「英語がしゃべれるドラえもんが欲しい」という軸は全くブレてないのですが、学習を継続させるための仕掛けやカリキュラムの作り方はかなり変えました。

例えば、最初はたくさんコンテンツがあった方がいいと思い、たくさん用意して提供したら「コンテンツがありすぎて選べない」と言われたんです。そうした意見を踏まえて、「今日はこれをやってください」といったようにカリキュラムを指定するようにしました。ヘビーユーザーからは「使い勝手が悪くなった」と言われるのですが、ライトユーザーの人たちにとってはカリキュラムが決まっている方がやりやすいので、そうしました。

また、「AI英会話だから1日何時間も話せるのがウリだよね」といった形でストイックに英語学習できる打ち出し方にしようと思っていたのですが、実際はそこまでやる人は少ないんです。きちんとビジネスとして成り立たせるためには、1日15分のカリキュラムでコツコツと長期間続けてもらえるようにすることが大事。1日の間に長く使わせすぎないような設計にするなど、細かい部分の工夫をしていきました。

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自己資本経営をやめ、外部資本を入れて良かったこと

佐藤:ちなみに、スピークバディを立ち上げたのはいつでしょうか?

立石:2013年5月に会社を設立したのですが、設立後に世界一周に行っていたので、最初の1年くらいはほとんど日本にいませんでした。世界一周しながら開発した英語学習のアプリが、App Storeの有料アプリランキングで1位を獲得したんです。その後、日本に帰国したタイミングで自分のプログラミングの先生だった人に1号社員として入社してもらい、そこから2人でサービス開発を本格的にスタートさせていきました。

当時はベンチャーキャピタルからの出資を受けずに事業を進めていこうとしていたのですが、いま振り返ると間違っていたなと思います。自分の思ったようにやりたい、ということもあって最初の2年くらいは自己資金でやっていたのですが、会社の規模感が全然大きくならず、設立から3年目くらいのときにスタートアップらしくやろう、と思い始めました。
それで2016年2月にEast Venturesなどからシードラウンドの資金調達を実施し、AI英語学習にフォーカスし、今までやってきているという感じです。

佐藤:創業されてから事業の軸は変わらず、ピボットもなくという感じですか?

立石:英語学習という軸は変わっていません。「AI英会話にフォーカスする」と決めたのはシードラウンドで調達したタイミングです。

自己資金でやっているときは、TOEICアプリや単語アプリをつくっていたのですが、なかなか上手くいかないなと感じていました。そうした中、スタートアップ業界のメンターや投資家と話をして、事業計画をAI英会話に絞ったのはとても良かったなと思います。

佐藤:ブレないものがあった上で、細かいテクニックなどでやり方は変えていける。いろんなスタートアップの経営者と話をしていて感じるのは、梅干しみたいに硬いものが真ん中にあり、その周りが柔らかい人ほど事業が上手くいっているなと思います。また、ブレないものがある起業家ほど、例えば株主から「IPOを目指す」などのお題をもらった方が新しい発想も出るので、すごく良いなと思うんです。

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立石:IPOを目指すことが正解でもないですし、自己資金でIPOを目指さないスタートアップがあってもいいと思います。ただ、自分の場合はIPOが目指すべき通過点として、お題が設定されたことで経営的にはやりやすくなったなと思います。

グローバルな組織づくりで意識してるポイント

佐藤:組織づくりで立石さんが意識されてることはありますか?

立石:弊社は外国籍のメンバーが多いので、ダイバーシティを意識しています。また、日本人メンバーも英語が得意な人が多く集まっており、留学経験者が半分くらいいるので、2〜3年前くらいから全社会議もすべて英語でやるようにしてます。
グローバルな組織を構築したことで、仕事で英語を使いたい人材も集まってきますし、外国籍のメンバーも採用できています。日本人エンジニアが足りない中で、外国籍のエンジニアを採用できるのはとても助かっています。

そうした組織を構築した経験を買ってくれて、最近は他社のグローバル化のサポートもしています。弊社は英語のコーチを派遣するパーソナルコーチングサービスも展開しており、メルカリなどのような組織から、メルカリのように会社をグローバル化させていきたいという会社からコンサルティングを依頼されることが増えてますね。

佐藤:どのくらいの組織規模でしょうか?

立石:フルタイムのメンバーは40人ほどで、業務委託やインターンを含めると60人ほどです。また、英語のコーチは50人ほど契約しており、すべて合わせると100人弱の組織です。

佐藤:そのうち海外の人はどれくらいなんですか?

立石エンジニアの組織は半分くらいが外国籍のメンバーです。

佐藤:外国籍のメンバーをマネジメントする際、どんなことを意識してるんですか?

立石:普段の会議から日英両言語を使用したり、Slackのチャットやスタンプなども国際的にしたりしています。また、外国籍社員には日本語コーチによる研修を提供しているほか、ビザ対応は専門の行政書士に依頼したり、英語の就業規則を用意したりしています。

佐藤:今後、外国籍のメンバーが増えていったらユニークな人事制度も増えていきそうですね。

立石:弊社では現在、有給休暇にプラスして、1年に10日間の無給休暇もとれるようにしています。外国籍のメンバーは年末などに2週間ほど自国に帰りたいけど、「有休が足りるか心配」という声が多かったので、無休休暇もとれるようにしました。また、海外ではよくあるサバティカル休暇(2年間働いたら3カ月は休める制度)なども導入しています。

佐藤:コロナが落ち着いてきた後の働き方について、どう考えていますか?

立石:まだ結論は出てないですが、リモートと出社のハイブリットになるのかなと思います。フルリモートだと社交的なメンバーが働きづらいという話があるので、そういったメンバーが集まる場所は必要になるのかなと思います。

語学系サービスの洗練度が高いアジア圏で勝てたら、世界でも勝てる

佐藤:現在の会社のフェーズについて教えてください。

立石:サービス自体が一定のお客様に受け入れられるPMF(プロダクト・マーケット・フィット)には到達したかなと思っています。今後はよりユーザーの裾野を広げて、スケールを目指していくことになると思います。アーリーアダプターにはウケてるけど、それをアーリーマジョリティにもウケるものにしていく。キャズムを超えていく段階です。

そこを超えると一気にサービスが広まっていくと思うので、認知を獲得していくためにFIREBUGに協力いただき、マーケティングにも力を入れています。

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佐藤:スタートアップにとってFIREBUGはどういう存在に見えていますか?

立石:今回、サービスのCMを制作するにあたって、いろんなクリエイティブ制作会社と話をしました。各社と話をする中で、マーケティング責任者が「FIREBUGでいきたい」と言ったんです。その理由を聞いてみたら、短期間でこれだけ面白いアイデアが出せるのは珍しいし、ありがたい、と。実際に、自分自身も絵コンテを見ただけで笑ってしまって。これは今までにないようなクリエイティブをつくれそう、こういう笑いが刺さるかもしれないと思い、ご一緒させていただいています。

佐藤:ありがとうございます。最後に今後のサービスの展開も教えてください。

立石:今後はAI英会話のポジションだけでなく、英会話アプリとして国内ナンバーワンのポジションを獲得し、それを絶対的なものにしていければと思います。パーソナルコーチングサービスは英語コーチングの会社が増えてる中、スピーキングに特化し、スピーキングが身に付くコーチングサービスとして、ナンバーワンを目指していきます。

また、アプリは海外展開もしやすいので、来年から中国などを中心に海外展開も進めていきます。世界一周をしたときに、世界各国の本屋に行ったのですが、日本ほど語学の教材が充実している国は稀有です。本屋で語学の棚が充実しているのは日本や韓国、中国くらいです。そういう意味では語学系サービスの洗練度は日本、中国、韓国が頭抜けているはずなので、そこで勝てれば間違いなく世界でも勝てるはずだと思います。

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