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企業が障害者社員に期待するのは、成果ではなく法定雇用率なのか?

障害者は就職できない。

働き方も仕事も多様化してきている現在、その状況はだんだん改善しつつあるかもしれません。

それでも、障害の種類によってはまだまだ就職が難しかったり、入社後も職場で馴染みにくい現実があります。

そもそも企業は、障害者雇用に何を求めているのでしょうか?
成川さんに引き続きお話を伺います。

(執筆:ミッションパートナー ちひろ)

▼【精神・発達障害者雇用のリスク】インタビュー全シリーズへのリンクはこちら▼

精神・発達障害者は就職できない? その採用リスクを人事の目線で因数分解する。
企業が障害者社員に期待するのは、成果ではなく法定雇用率なのか?(本記事)
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多くの企業が障害者雇用に期待すること

ー企業が障害者雇用をする理由は何なのでしょうか?

(成川)
何よりも大きなモチベーションは、残念なことではありますが、もちろん法定雇用率でしょう。

従業員数の2.3%が障害者である必要がある。(2023年1月23日現在)
改定のたびに引き上げられる法定雇用率を達成するため、そして事業運営に悪影響を及ぼさないため、企業はなるべくリスクの低そうな障害者を雇用しようとします。

そして、これも本当に残念なことではありますが、少なくない企業が、障害を持つ従業員に効率も成果も求めません。

人件費が「費用」である以上、営利目的の企業としては費用対効果を求めます。
その「効果」が、健常者の従業員ならおカネに換算できる業務成果になるわけですが、障害者の場合は法定雇用率の達成自体が「効果」になる側面を持ちます。

ーそこにいるだけで価値がある。聞こえは良いようですが、それははっきりとした差別ですね。給与が支払われるのに期待されていない、というのはほんとうに辛いことだと思います。

(成川)
健常者社員と求められることが違うから、働く目的もズレてくる。
そういうわけで、健常者社員と障害者社員のあいだに溝が生まれてしまうこともあります。

身体障害者ならば、リスクが低いうえに、業種を絞れば健常者と同じアウトプットを期待できる。これが、身体障害者の取り合いになる背景だと考えています。

ー身体障害ではなく、精神・発達障害を持つ従業員たちが、健常者社員と一緒に仕事をするのは難しいのでしょうか?

(成川)
難しい場合もたくさんあります。
サポートする社員が疲弊したり、身体障害と違って見た目でわからないことが多いからか、成果を強いられている健常者社員から不満が出たり。

実際、精神・発達障害者は採用市場でも避けられがちで、まだまだ就職は厳しいものであるという現実があります。

就職が難しいために就労移行支援事業所に通う方の多くは、精神・発達障害者です。

就労移行支援事業所全体の利用者に占める身体障害者の割合が4.4%に対し、精神・発達障害者の割合は72.7%(※1)です。

18歳以上65歳未満の身体障害者が約101万人、25歳以上65歳未満の精神障害者が206万人であることを考慮しても(※2)、この数字の開きは「いかに精神障害者にとって就職が難しいか」を物語っていると言えます。

(※1 東京都福祉保健局 令和2年度データ
(※2 内閣府「障害者の状況」より

「健常者に近いアウトプット」という見方以外の視点

ーそれでは、企業にとっては障害者手帳を持っていることが価値で、あとは「いかに健常者社員並みの働きをしてくれるか」「人間関係のトラブルを起こさなさそうか」という視点だけで採用が行われるということですか?
なんだかすごく寂しい気がします。

そんな気がしますね。

多分それは障害者雇用の場だけでなく、健常者の採用のときも、大学名や年齢、出身地、性別などの「成果には関係のない項目」で判断しているのでしょう。

最近では、障害者雇用を推進することで、社員たちの間にダイバーシティ&インクルージョンの意識が生まれたり、障害者社員への配慮から新しい気付きや改革につながる事例もあり、グループ内でもたくさん応援の声を頂いています。

ただ、それは嬉しくもあるけど、障害者雇用を一生懸命やっているからOK、という次元ではダメで。

障害の有無に関わらず誰にでも得意と不得意があるはずだから、それを矯正せずにのびのび働けるようにしようよ!と言いたいんですよね。

それが出来るのなら、画一的であるよりも多様な人がたくさんいる組織の方が強くなるはずで、ほんとうの意味での DE&I が達成できるのだと思います。

ー違いを活かす仕事の作り方ができれば、大きな成果に結びつきそうですね! 次回は、JPTが実践するリスク管理と、成果への考え方を伺います。

→次回「内定承諾率100%の特例子会社が実践する精神・発達障害者雇用のリスク・マネジメントを公開します」へ続く

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