「全ての元凶は親が私を生んだから」という理屈にも頼れない年齢になってきた

何か自分に不都合な出来事が起きた時、表題の理論を言い訳に使って生きてきた。当時(恥ずかしいことについ最近まで)言い訳とも思っておらず、むしろ正論だと思っていた。周りは本当のことを言わず気を遣っているだけだ、生きることに意味もないのに親に感謝する意味が分からない。

そう思っていた私も、さすがに人のせいに出来る年齢でもなくなってきた。とは言いつつ未だにそう考えてしまっていることもある。

生きることが辛い、将来が不安だという話をすると親はこう言った。

「人生そんなものだし、私の老後の方が心配よ」

まぁ老後は心配だろう。だがあなたの老後の問題は私の問題でもあるので、私の将来の不安にあなたの老後も内包されるのではなかろうか。私の方が不安であるし、人生そんなものなら産まないで欲しかった。そんなことを思っていた。

あなた方が自分の意思で産んだのだから、子供を幸せに育てる義務があるはずだ。その子供が現在幸せに思ってない時点で育児の失敗、親の責任ではないか。

このように他責思考で生きることで自分が被害者であること、努力しないことを正当化してきた。

ところが最近、なんとなく生きるのが辛いなと感じた時に、「生まれなきゃこんなことにならなかったんだけどな」と思った。

これは今までの私とは少し違う。思春期の頃なんかは、上記のように思ったときはその後に、親はなんで自分を産んだのだという怒りと責める気持ちになっていた。

しかしこの時はただ生まれたことを嘆くだけで、それが誰かのせいだと考えたり、怒りの感情が湧かなかった。

まぁ、そんなこと言える年でもないしな。と思うようになっていたのだ。歳をとると「若いっていいな」、「10年前だったらな」とか考えるようになるらしいが、「親が私を産まなければ」と考えなくなるというのもあるあるの一つなのだろうか。

散歩している時にこのようなことを考えていると、そもそも「親が私を産んだのが悪い」というのは理論として正しいのだろうかとふと思った。今までは正しいけど倫理的に良くないからみんな言わないと思っていた。

が考えているとこの理屈も大して正しくない気がしてきた。

親は私を産む意思があって、その選択をした。そしてその選択を子供である私が非難している。つまり親の選択の結果、産物である私がその選択を失敗だと言っているのだから、確実に失敗である。

思春期の私は「そもそも生きることが嫌だ。生きなきゃいけないのは産まれたからで、それは当然親が産んだからで、つまり元凶は親だ。生まれたから人生の過程として仕事、受験、人間関係の苦しみが生まれた。生まれなければそもそも苦しむことがなかったのだ。」と思っていた。

それに対して、私が生まれたのは親の選択だが、その親も当然その親の選択の結果だという反論がある。親が私を産んだことを非難するなら、親を産んだ祖父母を非難して、さらにその祖父母が生まれたことを非難して、永遠に非難するのかと。だから親を非難するのはおかしいという反論だ。

これに対して、私は「親には意思があるのだから、親がその連鎖を止めればよかったのだ」と考えていた。確かに親はさらにその親が産んだが、最終的に子供を産むという選択をした親が、その選択をしなければこんなことにならなかったのだ。だから先祖代々まで非難する必要がない。ただ、私の親が私を産んだ、その選択が良くなかったのだと。」

そう考えていたのだが、ただ、親に意思があるのと同様に私にも意思があるのだから、例えば仕事で失敗をして、受験で失敗をして、人間関係で失敗をしたとして、そうなる選択をしたのは自分であって、そうならないような選択も出来たのではないか。つまりその失敗の原因を親のせいにするのはおかしいという当然のことに最近気がついた。

今まではいや、結局私の意思がどうとかの前に親が産まなければ良かった。と考えていたが、親の意思を非難すると、結局先祖代々まで非難しなければならなくて、さすがにそこまでいくと責めたところでなぁという気分になってくる。私には意思があるけれど、その私の意志は親が産まなければ存在しなかったものだから親が産んだのが悪い。ただ親が産まれたのは仕方がない、親が悪いとは言えない。

結論、私が生まれるまでには意思と選択の連なりがあって、それらを責めることは私にも備わっている意思と選択をも責めることになってしまうので、やはり私は苦しくてもその苦しみを他人に背負わすことなく、生きていかなければならないのだなと思った。

こんな当たり前なことに気づくのに大分時間を使ってしまった。気づかなかった、気づかないで済んでいたのは、親に甘えているからかもしれない。

わかったところで人生が楽になることはないが、大人になるというのはこういうことの積み重ねなのかもしれない。

いつか、人生が楽になるような考えに辿り着ければいいな。少なくとも、そう思えている間は生きていける。

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