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メガバン体験記ー融資編

今度は融資業務について書いてみたいと思います。

融資はかなり幅広いので全てはかけませんが、根幹になる業務の流れを書いていきたいと思います。

私は30社くらい最初に持たせてもらって、それらの与信管理をしていました。与信というのは信用管理のことで、要はお金を貸して問題ない先かどうか見極める仕事ということです。信用を与えると書いて与信です。

融資には銀行が持っている資産を揺るがすことなくできる融資もありまして、それは他の期間の補償を得ながら融資できるシステムになります。当時はマル保とか信用保証協会付融資などと呼びましたが、ある条件を満たせば、銀行を窓口として銀行側はほぼノーリスクで融資ができます。なので、こういった審査は通りやすいため、小口ではありましたが、何件も新規の申し込みがありました。

融資の流れですが、まずは3年間の財表を入手します。3年経過していない場合はまた別のルートとなります。
そして3年間の財務諸表を見て、安全性、健全性、成長性などの項目にそってその企業を点数化していきます。

そして、その点数化した合計点から今度はあらかじめ定められた格付け表に照らし合わせて、融資の金額や金利が決定します。

当時は確か十段階くらいに分けられていたと思います。
一番下が破綻先、その次が破綻懸念先だったかと思います。
この辺の企業群になると、新人ではとても解析できず、ベテランの方々が管理することになります。

格付けが良い順に貸せる金額も上がりますし、金利も安くお貸し出しできる状態になります。極めてシンプルなシステムです。

これに加えて、貸し出しの内容によって、先々のキャッシュフローを生み出せる事業かどうか、未来の収益を見込める産業かどうかも加えてみていきます。
しかし、基本は担保主義で、貸せる範囲の担保があることが条件となっていきます。
担保とは、不動産や株券、その他金融商品などなど、お金や権利で差押できるものが対象となります。まあほぼほぼ土地でしょうか。

あとは、貸出先のいわゆる定性的資質、それは社長の人柄とか、家族構成とか親族関係とか、その他諸々の情報も点数に加味します。長年の取引先に関しては、脈々と続いているその企業の状況が掲載されています。

財表を入手し分析したら、次は担保の確認です。

不動産であれば登記所へ行き、登記簿を確認します。抵当がついていないかどうか、法的に転売不可能な物件ではないかどうかを調べます。

この法的に転売不可能という部分ですが、当時勤務していて驚いたのは、結構担保不適格な物件があるということです。
戦後のどさくさにルールを守らず登記した物件が数多く残っており、それは入り口の道路幅が規格外だったり、一部借地になっていたり、その他たくさんのルールに適用できていない不動産がありました。それらを法律要素に照らし合わせて1軒1軒保証会社と一緒に現地確認します。写真を撮り、必要に応じてメジャーで測ります。

そして、格付けも担保も問題ない、経営者としても問題ないとなったら、(他にもいっぱい確認事項がありますが割愛します、全部書いて行ったら分厚いマニュアルになってしまうので(笑))いよいよ融資なわけですが、融資の形態もたくさんあります。何に使いたいかによっても違いますし、抵当の付け方によっても違ってきます。根抵当、共同根抵当、・・・思い出してきましたが、まあ法律関係で覚えることが山ほどありました。。。
融資も枠を設けるもの(何度も借りられる)や一回限りのものなど様々な方法があります。

それらを決めていよいよ融資です。

まあとにかく中小企業のほとんどが銀行にそっぽをむかれるとおしまいなので、融資が無事に承認が降りるまで生きた心地がしないと言っていました。しかし、いくら銀行員に心象をよくしようとしても、かなりバッサリ数字と条件で切られてしまうので、銀行員と中小企業経営者との関係というのはかなり歪なものがありました。

交渉しても無駄なのに、付き合いの仕方でどうにかなるのではと思っていた経営者のかたが非常に多かったのを覚えています。正直どうにもなりません。

条件が悪くなり、支払いが滞り、不渡を2回出すと銀行停止処分となり、その時点で融資停止です。
その状況は全ての金融機関に通達されますので、そうなってしまうともうどこでも借りられません。

私も何回か銀行停止処分の取引先を管理したことがありましたが、支店にその情報がきた瞬間に、先輩とその会社様へ行きます。
そして、”はい、郵便物みて〜””日付見て〜””写真撮って〜””電気のメーター回っているか確認して〜”みたいに先輩は慣れていて、私は言われるがまま確認しました。すでに社長は夜逃げしていて、私は当時ドラマみたいだと心臓バクバクしていましたが、先輩は冷静に、じゃあ支店戻って内容証明郵便手配して〜と言って、それを手配し、送付してから何日?忘れましたが何日か経つと、破綻先管理部という本部の屈強な方々が来て(私には屈強に見えました(笑))戸籍や住民票、その他様々な手段でもって社長の居場所を探し、淡々と回収処理を行っていくという、、、ドラマのようなことも経験しました。

まあ脱線しましたが、とにかく強心臓でないと、銀行員は務まりません、人の生き死にがかかっていることもあるので、毎回動じていては身が持ちません。

キリが良いのでここで止めます。融資編でした。融資の物語は他にもあるのでまた良い時に再開するかもです。


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