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アメリカの保守主義とは ?

アメリカの保守派を代表する講演家であり、作家、そしてプロライフ活動家でもある、ジョナソン・バンマーレンは、「2020年の大統領選挙の結果は、保守主義とポピュリズムの新たな融合の基盤を築いた」との副題を付けた論説を発表した。

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Photo:ジョナソン・バンマーレン 出典元

バンマーレンは、 普段、世界キリスト教会の宗教誌「ファースト・シングス」や、アメリカの政治・社会・文化に関するニュースや解説記事を掲載する「ナショナル・レビュー」、その他、アメリカの国益を守る外交について論ずる雑誌「アメリカン・コンサバティブ」などに寄稿している、人気作家であり講演者だ。

「真の再編成の到来!」

2019年7月、全米の保守派たちがワシントンDCに集まり、新しく創立する「エドマンド・バーク財団」のお披露目パーティーであり、トランプ時代における保守主義の未来について3日間を通して議論する「全米保守主義会議」に出席した後、彼はそう確信した。

会場には、かつてアメリカで栄えた地域が荒廃した後、貧しい白人労働者階級の悲惨な日常を描いた『ヒルビリー・エレジー』の著者であるJ.D.ヴァンスから、『ナショナル・レビュー』誌の創設者、20世紀後半のアメリカの保守運動の指揮者であった、故ウィリアム・F・バックリーの弟で、第一次レーガン政権の国際安全保障担当国務次官を務めた、ジェームズ・L・バックリーまでが参加する盛大なものとなった。

会議の最後は、彼を知ってる人なら誰もが認める「政治的に野心的で、信仰心の篤い保守派」、ジョシュ・ホーリー上院議員の、

「今こそ行動を起こす時です!」

の熱烈な呼びかけで、参加者全員がひとつの基本的なことに同意した。

それは、

「大企業と社会保守派の古い臭い共和党は死んだ。今こそ、新しい連合を作る時」

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Photo 出典元:Daily Kos
「全米保守主義会議」に出席したジョシュ・ホーリー上院議員

しかし、極めて重要な問題は、2016年のトランプの勝利が偶然の産物なのか、それとも再編成のウェーブがほんとうに来ているのかだ。

トランプは潜在的な新しい保守連合や、民主党基盤の断層の拡大を露呈させたのか、それとも彼のユニークなブランドであるセレブリティとエネルギッシュな講演集会がトランプを一過性の候補者にしたのか?

それがバンマーレンの疑問だった。

2020年の選挙結果が出た後、その答えを知ることができた。

「ブルーウェーブではなかった」

不正選挙など、いろいろと疑惑はあるものの、結局、形式的に、トランプは一握りの州でわずかな票差で敗れた。

しかし、共和党は予想外に議会レースで勝利し、ジョージア州の2つの決選投票に共和党が勝てば、彼らは上院を維持することができる。

「白人至上主義」と言われたトランプは、1960年のニクソン以来、共和党の大統領の中で最も高い「非白人有権者」のシェアを獲得し、2012年のロムニーの2倍、2000年のブッシュの3倍近い数を獲得した。

現実的に、共和党は前例のない機会に直面している。

プリンストン大学の教授(法律学)であり、ジェームズ・マディソン・プログラム(アメリカの理想と制度に関するプログラム)のディレクターである著名な保守派知識人、ロバート・P・ジョージ は、共和党へのメッセージを次のように伝えた。​

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Photo:ロバート・P・ジョージ 出典元

アメリカ合衆国の共和党(Grand Old Party)は労働者階級(および中小企業)のための政党になりつつある。 支持者はこう言う。 「私たちの道徳的、宗教的価値観を支持し、不公平な慣行や不公平な競争から私たちの産業を守り、それによって私たちの雇用を確保し、実質的な賃金上昇の合理的な見込みを確保し、社会保障や医療保険制度 など私たちが頼りにしているプログラムを守り、改善してほしい」。 これまでのところ、専門知識階級、『全体主義に目覚めた』左翼企業、超富裕層のための政党となった民主党に対して、白人労働者階級が大きく共和党支持に移動しいる。 今、共和党が目指すのは、マイノリティの労働者階級を獲得すること。 彼らの価値観や関心事は、白人労働者階級と瓜二つ。 明らかに、マイノリティの労働者階級(黒人や、特にラテン系の有権者)が共和党に向かっているのは事実であり、これは民主党を恐怖に陥れる。 民主党は労働者階級を基盤としていたため、中絶などの社会問題で共和党に対抗するという選択肢はない。 もしマイノリティが経済問題で共和党に好意的、あるいは少なくとも敵対的ではないと考えた場合、民主党は大きな問題に直面することになる。 長年にわたり、プロライフ運動を支持したのは、社会的に保守的なヒスパニック系や黒人系の有権者の多くであるのは知られていたが、にもかかわらず、彼らは一貫して民主党に投票していた。 これらの有権者の多くは、ジェンダー・イデオロギードラッグ・クイーン・ストーリータイムなど、民主党の百貨店的な社会問題の定義に嫌悪感を抱いている。このことから、失敗する可能性はあるものの、再編成は可能だ。ロバート・P・ジョージ

共和党はそのために、社会的にマイノリティーな黒人やラテン系の候補者を積極的に採用し、支援していく必要がある。

共和党の候補者は、マイノリティを含む社会的に保守的で経済的に大衆主義の有権者の票を獲得するために、あらゆるバックグラウンドを持った候補者を積極的に選出させるべきなのだ。

ジョシュ・ホーリー下院議員のような「賢い」共和党員はそのことを十分に理解している。

実際、2020年の結果は、長年続いた従来の政治的常識を覆した。

世界経済フォーラム常務理事、最高経営責任者、ロバート・グリーンヒルが唱える「人口動態は運命」という言葉は、マイノリティが民主党に完全に所有されていて、何があっても民主党の候補者に投票することを前提としていたが、2016年以降、特に2020年以降は、その可能性は覆されると、ジョージ教授は言う。

トランプには個人的に多くの欠点があるが、彼は経済エリートを含むアメリカのエリート層に幕を引き、労働者層の間に大きなギャップがあることを明らかにした。

フォーダム大学の神学・社会倫理学准教授で社会保守学者のチャールズ・カモシーは、長年にわたってこれを提唱してきたが、2020年の結果は彼の命題を裏付けるものにした。

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Photo: チャールズ・カモシー 出典元

「世論調査で最高率の無党派層に弱い共和党」

トランプは、何を支持しているのかさえ明確でなかった共和党連合を破壊し、再構築している。

民主党の内部は完全に混乱しており、ジョー・バイデンの目にはトランプを倒すための手段以外ほとんど受け入れられないと映っている。

カモシーに言わせれば、その可能性は明らかだと言う。

大きな政府と小さな政府という古典的な左派と右派の二元論はなくなったと指摘し、その代わりに、エリートマネー、エリートイデオロギー、ビッグテックに支えられた政党になりつつあるのが民主党なのだと。

一方、対照的に、共和党はポピュリズムと労働者階級の政党に「なりつつある」というのは、黒人やラテン系の労働者階級が大きな要因となっているからだ。

一つの出口調査によると、トランプと大衆主義を掲げる共和党は、近年に比べてはるかに良い結果を出している。

そこに、多民族の労働者階級の政党を作る真のチャンスがある。

プロライフに関するいくつかの本の著者であるカモシーは、「プロライフ」の可能性について特に熱心だ。

トランプの個人的な事に関わることは、特に若い人たちにとっては有害かも知れないが、彼の「システムを吹き飛ばす」メッセージで明らかになった断層は信じられないほど大きい、とカモシーは指摘している。

これまで何十年もの間、「プロライフ」運動は小さな政府の考え方が主流の政治的連合に属していた。

例えば、妊娠を規制するために政府が私生活に大きく介入するようなことが直感的に彼には理解できなかった。

母子家庭や幅広い家族を支援する社会福祉プログラムは一般的に検討されていなかったのだ。

また、自殺幇助を違法にすることと、高齢者や障害者へのケアを充実させることを同列に判断させる権利は政府にはないに決まっている。

共和党は、何十年もの間、「プロライフ」運動の自然な味方である黒人やラテン系の人々への働きかけができないでいる。

共和党は、リバタリアンの過去を捨て、生命保護と支援のために「すべてを兼ね備えたアプローチ」を構築する素晴らしい機会に直面している。

黒人やラテン系の人々の間で得られた利益を、特に宗教的信念、家族や教育のための社会福祉、生命の尊厳の問題に目を向けて、直ちに党を再構築するべきなのだ。

カモシーは、

「ロバート・P・ジョージ教授の『実用的な前進』の意見に同意し、共和党は耳をそのことに耳を傾け、さらにそれを凌ぐことをするべき」だと彼の確信を伝えた。

「エリートではなく、労働者階級からリーダーシップを育成すべき」

その意味するところは、自分たちを支持している人々の意見を無視したり、時代に逆行していると非難したりする、批判的で過激な富裕層やエリート層とは対照的に、労働者階級の知恵に耳を傾けることだ。

2016年の選挙は、従来の常識を覆し、ドナルド・トランプを中心とした政治的混沌を発足させた。

それどころか、2020年の選挙結果は、昨年の「全米保守主義会議」の「直観」が妄想ではなかったことを証明していると、ジョナソン・バンマーレンはそう確信したのだ。

「経済的ポピュリズムと社会的保守主義の新たな融合」

それが、可能にするかもしれないと。


参考資料:
WHAT IS AMERICAN CONSERVATISM
The Realignment Is Real

The Edmund Burke Foundation
The James Madison Program
ジェンダー・イデオロギー 
ドラッグ・クイーン・ストーリータイム
WAU MEDIA 「あなたの知るべきニュースでは?」
など

注:ジョナソン・バンマーレン氏の論説
WHAT IS AMERICAN CONSERVATISM
Results from the 2020 election have laid the groundwork for a new fusion of social conservatism and economic populism.
は、2020年11月12日|午前12時01分に「アメリカン・コンサバティブ」誌に寄稿されたものを参考資料として使用しています。












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