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8/10 ニュースなスペイン語 Gesto del Rey(1):国王の振る舞い(1)

国王フェリペ6世(Felipe VI)のある立ち振る舞いが、スペイン国内の政党に賛否両論を引き起こしている。

今回は反対意見を紹介しておこう。

フェリペ6世は現在、コロンビアの大統領就任式(Toma de posesión;Investidura)に参列しているのだが、写真(右側)に見るように、歩兵隊が行進する間、起立せず(no se levanta)、着席したまま(permanece sentado)なのである。

さらに、拍手(aplaudir)もしていない。

行進する歩兵隊たちの手には「シモン・ボリバルの剣(espada de Simón Bolívar」と呼ばれる、コロンビアにとって象徴的(simbólico)な剣が抱えられていたのである。

ボリバルは言わずと知れた、ラテンアメリカの英雄だ。スペインからの独立戦争で解放者(Liberador)とあがめられた人物である。まぁ、見方を変えれば、旧宗主国スペインにとっては、反逆者(insurgente)の代表ということになる。そうした人物の剣を前に、国王が起立も、拍手もしなかったのは偶然か必然か…?

国王のこうした振る舞いに対して、いち早く批判ののろしを上げたのは、王室に日頃から厳しいポデモス党(Podemos)だった。

党首のイオネ・ベラーラ(Ione Belarra)は次のようにツイートした:

わが国の役割は民主主義によって定められたプロセス(注:大統領が決まったこと)に対して敬意と支持を示すことだった。しかし、起きたこと(注:国王が座ったままであること)は説明が付かない。謝罪に値する(Nuestro papel era mostrar todo el respeto y apoyo al proceso democrático recorrido. Es inexplicable lo ocurrido y merece una disculpa)。

さらに、痛烈なのは、同党の報道官ペドロ・エチェニケ(Pedro Echenique)で、

(フェリペ6世は)起立しなかった唯一の国家元首だった。世界中のテレビにその姿が晒されてしまった。問題はこの立ち振る舞いを決めたのが、(同行していた)外務大臣か否かだ(…fue el único jefe de Estado que no se levantó y se vio en todas las TV del mundo. La pregunta es si esa decisión estaba refrendada por el Ministro de Exteriores)。

とツイートした。

スペイン国憲法(Constitución Española)第64条(artículo 64)では、国王の決定は、担当大臣(今回のケースでは外務大臣)によって制御(refrenado)されなければならないと定められている。

つまり、国王の一存(decisión personal)で、着席か起立かを決めることはできないはずだから、外務大臣の入れ知恵があったのではないかというのが、エチェニケが言わんとするところだ。

他にも、ポデモス党員の中には

この人は恥を撒き散らしている。民主主義的に選ばれたわけでもないこの人は、他国の民主主義に敬意を払うことも知らない。ブルボン王朝の恥、再び(La vergüenza que nos hace pasar un señor que ni es elegido democráticamente ni sabe respetar la democracia de otros países. La vergüenza borbónica una vez más)。

などとツイートした者もいる(国会報道官のアントン・ゴメス・レイノ(Antón Gómez-Reino))。

また、バスク州の政党ビルドゥ党(Bildu)のジョン・イニャリトゥ(Jon Iñarritu)は

変なことをよくやるな!この人を国の代表として派遣したは良いけど、国際社会の笑われものになっちゃった。国王ってのは、一体、何の役に立つの?(¡Menudo papelón! Envían a este señor a representar a su Estado y acaba ridiculizándolo ante la comunidad internacional.¿Para qué sirve un rey?)

とツイートした。

まぁ、どれもこれも、ひどい。

こうした反君主制の政治家たちを見るにつけ、日本の皇室を取り巻く政治家が、いかに、慎ましいかが分かるし、日本での皇室が比較的、落ち着いていることに安堵する。

写真は歩兵隊を前に着席し続けるフェリペ6世。他の元首たちは起立し、拍手しているのが確認できる。ちなみに今回、コロンビアの大統領に就任したのが、グスタボ・ペトロ(Gustavo Petro(写真))だ。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20220808/rey-investidura-colombia-espada-bolivar/2395006.shtml