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Kind Of Fuckin' Chicken

学生時代、金が欲しくて色々なバイトに手を出した。

居酒屋・Bar・マジシャン見習い、謎のダンボール運び、障害者施設の宿泊旅行の付き添い、フィリピンパブのお姉ちゃんたちの世話をする等々、細かいものをあげればキリがないが、腐った人間を沢山見たのは意外にも「ケン⚫︎ッキー」でのバイトだった。

なかでも店長の沼田(仮名)というやつが曲者で、オレの人生の割と初期に認識した「しょうもない」やつだった。

奴は日々全然働かないどころか、バイトの女子高生に対するセクハラ、部下や後輩に対するア●ウェイ製品の押し売り、勤務中の競馬、深夜にバイトを無償で働かせる労働契約違反など枚挙に暇がない。

競馬に関しても、テメェで馬券を買いに行かずバイトのお兄ちゃんに買いに行かせていた。

そんな光景が日常化していたなかで、あるとき、そのお兄ちゃんが沼田に指定された馬券を買い間違えてしまい、運が悪いことに、正しく買えていれば万馬券だったという事態が発生する。平謝りするバイトの兄ちゃん。

沼田は平気な顔で「いいよ。いいよ。大丈夫。だって、お前が払ってくれるんだろ?」とまさかの発言。

青ざめるバイトの兄ちゃん。
タダでさえ深夜残業代もちゃんと払われない職場で、馬券買い間違えの罰符まで支払わされるとは。さすがにこれはと思い、俺も沼田に詰め寄ったが、沼田はどこ吹く風の表情。

バイトの兄ちゃんは沼田とのやりとりを経て当選金額の半額を支払うということで落ち着いたらしい。
が、果たしてそれで本当に良かったのだろうか?

また、沼田は高卒で、大学生に対して異常な劣等感を抱いていた。特にMARCH以上の大学に通う男性には執拗なまでに粘着したし、高学歴女性は雇わなかった。

沼田は、己の劣等感を高学歴の男性をバイトとして雇い、奴隷のように扱うことで慰めていた。

沼田は「大学出た瞬間にお前らは良い会社に入って俺より偉くなるんだろう?」と、ことあるごとに発言していた。
一方で専門学校に通う人たちのことは何故だかとても見下しているという不思議な立ち位置にいた。

狂っていたのは沼田だけではない。

幾つかの店舗を統轄するSVというポジションのおっさんの頭も、チキンを揚げる油の如く「沸いて」いた。

店舗見回りの際にエアーガンを携行するという保安官スタイルが有名で、店舗に到着するやいなや、バイトや社員を狙撃するというガンマンぶりが印象深い。
近年では爆笑問題の太田さんくらいしかそんな話は聞かない。

そいつの後にきたSVもまたヤバかった。

自らが統轄する店舗の店長を集めて、業績が振るわない店舗の店長から罰金を徴収するという独自の租庸調制度を敷いていたし、強いていた。

他にもバイトの女性と不倫するやつ、バイトと女性を取り合うやつなど、クズのパーティバーレルみたいな職場だった。

とある商科大学から入ってきた新入社員は、あまりの職場環境の悪さにドン引きし、勉強に目覚め、のちに公認会計士になった。

人のモチベーションが湧くケースとしてはなかなか特異ではなかろうか。

爽やかな朝、立ち寄ったケン⚫︎ッキーでコーヒーを受け取りながら、過去の記憶が溢れ出してきた。

おしまい

Produced By じこったねこばす

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