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大富豪のお悩みお聞きします。

大富豪はいつも悩みを抱えて生きている。家族の中に必ずといっていいほど、病弱な者が1名はいる。それから、先代が不慮の飛行機事故で命を落としているパターンが全世界の大富豪の中で半数以上は占めているだろう多分。も一つおまけに、朝食には必ずといっていいほど、スクランブルエッグを食べなければいけないのである。

大富豪は幼少の頃から、半ズボンにサスペンダーと蝶ネクタイをしなければ、外に遊びに連れて行ってはもらえないし、勿論、寒いからといって近所の鼻垂れ坊主のように、鼻を垂らすことは絶対に許されないのである。

大富豪の奥様は、手料理を子供に食べさせたり、掃除や洗濯はさせてはもらえず、年がら年中、首のまわりにフリルが付いたワンピースの出で立ちで、和服を着るために、お抱えの運転手に、「いつもの美容院に行って頂戴」と言わなければいけないのである。

大富豪のお婆様は、周りの使用人から大奥様と呼ばれ、金色のネックストラップ付きの眼鏡を掛けて、一日の大半を居間のロッキングチェアに座って過ごさなければならない。何故かと言うと、住み込みのお手伝いさんから、「大奥様、お体に障りますよ」と心配した表情で、最低一日に3回は、そう言われるからである。なので皆が寝静まった頃、自分の寝室を抜け出して、息子夫婦の寝室のドアに耳をあて、「うちの息子夫婦は仲が良くてよかったわ」等と独り言を言うルーティンが定着するほど、退屈な生活を送らなければならないのである。間違ってもうちの母のように、「今日、階段下から上まで拭き掃除したから、腰痛いわ」等とは絶対に言えないのである。

最後に大富豪は死ぬ間際、家族を全員枕元に呼び寄せ、一人ずつ手をとりながら、遺言のようなことを格調あるワードで表現しなくてはならない。間違っても「今から死にまーす」等とギャグはとばせないのである。そして、最後に息を引き取る瞬間も手を抜かずに、専属の医師との阿吽の呼吸でタイミングを図りながら、目で合図をした後、息を引き取り、その後、医師が大富豪の脈を確認してから、「御臨終です」と医師が家族の方を向いた瞬間に家族が号泣するわけだが、号泣する順番も代々決められた順序で、先ずは奥様が「あなた」と言った、あなたの"た”あたりで子ども達が「お父さん」と、長男、長女、次男という順番で号泣し、医師がカバンを持って部屋を出ていくところで大富豪の一生はようやく終わりを迎えることができるのである。

大富豪という家柄は、次の世代からまた次の世代へ、格式と伝統を引き継いでいかなくてはならないのです。なので「わしが一代でここまでやったんやで」等と飲み屋の酔っ払いの小金持ちとは全く次元が違う、人生の悩みを抱えて生きているということを理解しておく必要があるでしょう。

『ローマは一日にして成らず』

ご静聴有難うございました。

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