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対話型AIとの未来に向けて

最近、ChatGPTとBingAIなどの対話型AIで遊んでいて、日々その精度や賢さに驚いている。

これは未来を変えるな〜とか、人間の仕事をどんどん少なくしていくなーとか思うことは色々あれど、今はただ、これらになにが出来てなにが出来ないのかを探りながら純粋に戯れてるのが面白い。

↓戯れている図。

↓図解とかもできちゃう。現状ほぼ使い物にならないし、断られることも多いけど、将来的な可能性を感じるに十分なアウトプットではある。

こうした対話型AIが、インターフェースとしてのシンプルさと日毎に高まっていく成果物の品質を推進力として、未来の知のあり方を大きく変えていくであろうことはほとんど議論を待たない。

すでに様々な活用方法が世界中で発明されていて、集合知的に積み上がっていっている。それらを眺めているだけで、新たな時代がどんどん開けていくような高揚感を覚える。


一方で、(専門家以外にとっては)彗星のごとく画期的に登場した並ならぬ知性に対して、ある種の拒否反応とも言うべきか、一抹の不安や恐ろしさを感じてしまうのもまた事実ではある。

ChatGPTが人間の直接的な脅威となるようなストーリーとしてもっともありうるものは、人間が現状やっている知的労働の大半をこれらが実行できてしまい、仕事が奪われる、というものだろう。

はじめは、そうだな、おそらく、ChatGPTをAPI経由で使うビジネス向けのDXツール(のSaaS系ベンチャー企業)がたくさん登場するだろう。カスタマーセンターを持つ企業のCX(カスタマー・エクスペリエンス=顧客体験)最適化のためのチャットbotとか、SNS投稿/運用の自動化サービスとか、自社メディアの記事支援とか、リサーチ業務の支援とか。

そうしたものを介して、自前でChatGPTを業務フローに組み込める限られた企業を超えて、あらゆる業種の多くの業務が少しずつ自動化されていく。そうして人手が浮いた業務から、まだ人手がいる別の業務へと配置換えが起こってゆくけれど、更にその先の業務も徐々に自動化されていく。どの部署においても、人が処理すべき仕事量が減っていく。全社的に人が余ってくると、企業は新規採用の枠を減らし、欠員の補充を行わなくなる。厳しいコスト削減圧力を背景に、人件費よりもITシステム投資を増やしていく。雇用市場が回らなくなり、町には失業者が溢れていく。。。

悲観的なシナリオでいけば、こんな感じだろう。「過去に同様に危惧されてきたテクノロジーが例外なく人の仕事をむしろ拡張し増やしてきた」という反論は、今度の"知能"が仕事上で人間にしか出来ない領域の大半をカバーしてしまっている場合にはクリティカルなものになりえない。どんな新たな業務においてもAIのメリットの方が上回れば、企業はそちらを選択するだろう。世の中の業務の大半は、作業者自らが思っているほどにはクリエイティブなものではないし、AIに出来ないほどクリエイティブな仕事、ひいてはAIに出来ないほどクリエイティブな生産-消費は(今よりも増えはするにしろ)そこまで多く必要なものではないだろう。

これが短期的に起こるとも思わない。例えばこれらAIの学習元の大規模データは、専門的な業務での利用になればなるほど確保が難しくなる。そもそも多くの事柄のデータ化がまだまだ足りない―日本では「DX」の旗印のもとやっと軌道に乗り始めたばかりだ―し、データのオープン化への障壁やデータ行政/法制等もまだまだ遅れている。

ただ、この未来はおそらく50年先よりもずっとずっと手前にやってくるだろう。ChatGPTがかような衝撃を持って迎えられた事実のうちに、その可能性が十分に表現しつくされている。人類は、AIの労働による利益分配の問題をベーシック・インカム等も交えて議論し始める時期に差し掛かっているのかもしれない。


ただ自分としてはむしろ、対話型AIの直接的な影響ではないにしろ、その普及による情報圏の変動とそれに影響される人類の知のあり方の方に目を向けていきたい。対話型インターフェースが当たり前になったとき、インターネット上の情報取得の動態がどう変わっていき、それが人間の知識や知的生産の方法をどう変えていくのか、といった点である。

見たところ、現行の対話型AIは巨大資本と手を結び「一次情報」と呼ばれるものを焼き尽くす可能性を秘めている。知の編纂の歴史性と過去への敬意、そして系譜学という相対化の叡智すら、人類は失うことになるかもしれない。しかし他方において、まさにその一次情報こそが、対話型AIの最も重要な存在基盤であるというジレンマがあるように思われる。

まずは手始めに、対話型AIの持つ「知性」がいかなる基準において知性たりうるのかという問いから。

これからの時代を生きる人びとにとって、このテーマと向き合うことは、ほとんど生存のための必要条件になるだろう。


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