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あほな大河ヲタがストックホルムに聖地巡礼に行った話

この記事は2019年10月、NHK大河ドラマ『いだてん』放送中に書かれたものです。
情報は当時のものとなります。スタジアムに入れるかどうかなど、当時の状況となり、現在のものとは異なっている場合があります。御注意下さい。

私は、大河オタである。

今更改めて説明する必要もないと思うが、「大河」というのは日曜夜8時からNHKでやっている歴史ドラマ枠作品群—通称「大河ドラマ」—のことだ。「ヲタ」っていうのはいろんな意味がありますが、今のところ「熱烈に何かを好きで、何かを推している人」でいいんじゃないだろうかと思う。意味が最近かなり変わってるので。
私の大河ヲタ歴は結構長い方だと思う。いやもっと昔からの猛者がいることは存じ上げておりますが。
年バレしてしょうがないが、物心ついたころに見た『独眼竜政宗』を初めとして、長年大河ドラマを見てきた。
(独眼竜までのものは総集編しか見られていなかったり、その後の作品でも事情により数作品見てないのがあるが、そこは許して欲しい。全部見られるようになったら見たい。NHKオンデマンドさんもうちょっと本気出して。あといったん上げたヤツ下げるのもやめて)
おもしろい大河も、つまらない大河も、普通の大河もあった。
しかし私はできるだけリアタイに近い形で全話見ることにしている。
何故かというと、ひとつには、1年に約50回という長丁場ゆえに、戦隊やライダーなどの東映特撮作品と同じく、数回見逃したら追い付くのが大変ということ。
そしてもうひとつの理由がある。
『北条時宗』放送時において、渡辺謙さん演じる北条時頼が死んだときに哀しみのあまり、視聴をリタイアしてしまったため、私はその後大河ドラマファン界隈で伝説となる「赤マフラー」を見逃してしまった。
赤マフラーとは、見た人には「ああ、あれか」という感じだが、時宗後、大河ファンの間では「史実ではもう死んでいるはずの歴史上人物が生き残ってドラマに出続けること」の意を持つようになった。いわゆる「大河伝説」のひとつである。
タッキー義経での「お堂ドッカーン」とか「ハリボテ弁慶」とか、江の「背後霊信長」とか、花燃ゆの「ニュータイプ以心伝心」などといった、後世まで語り草になるような大河の演出や展開のことである。
江での「心中の喜びを花火で表現するシーン」には感動すら覚えた。少女マンガでも今どきやらないぞ、アレ。
見ているときは「ハア?」となって一年間を棒に振ったことを怒ったり、大河ドラマストーリー(大河ファン必読のムック本のこと)をテレビに向かって投げつけたりするものだが、過ぎてしまえばそれもよい思い出になり、語り草となる。同じ大河を最後まで見た同志——同じ釜のメシを食った仲間のような——との語らいの中でしばしば思い出される。
「大河伝説」とはそういうものだ。
伝説はなにもマイナスなものに限らない。「包帯とったら西田敏行」とかは大河伝説の中でも珠玉のものである。あるいは当時の大河ドラマ板で、あるいは今ならTwitterで、人は大河について語りあう。
とまあそんな理由で、私はどんなつまらない(と私が思う)大河も最後まで見るようにしている。歴オタからは「我慢強いね!?」と言われている。
本当によく言われる。

そんな私がいま夢中になっているのが『いだてん〜東京オリムピック噺〜』である。おもしろい。とてもおもしろい。
なんといだてんの今の視聴率は5%前後だと聞くが、人口の95%がこれを見ていないなんて信じられない。その人は人生を50%くらい損していると言っていい。それくらいおもしろい。
クドカン氏の紡ぐテンポ良い台詞、書かなければならないものからは逃げない姿勢、最新の技術を駆使した今までにない演出、泣かずにはいられなくなるシーン作りなど、本当に本当に素晴らしい。
私は中盤のあたり、毎回泣いていた。
特に素晴らしかったのは、人見絹枝嬢の涙混じりの叫びのシーンである。悲痛な叫びと、穏やかな美しい光の中で踊る姿を刻んだあの一話は将来必ずや大河ヲタの語り草になると信じている。
そもそもの「初恋」であるところの『独眼竜政宗』からして、私は聖地巡礼をしていたのであった。
当時はもちろん子どもだったので、家族旅行の一環としてなのだが、『独眼竜政宗』については登場人物たちの墓や寺、神社などに行った。ひたすら行った。行き過ぎたため、「おまえに付き合ってると墓にしかいかない」と怒られ、我が家では「家族との旅行では歴史っぽい場所には行かない」という不文律ができた。
たとえどんなに他に行くところがなくても、大河聖地巡礼がらみの場所を提案することは禁忌となった。
炎立つのときに平泉や多賀城に連れて行ってくれた、歴史好きな母方の祖父が死んでからは、もっぱら一人かヲタ友と行っている。
『琉球の風』にハマっては再建なったばかりの首里城に行き、『炎立つ』では出来たばかりのえさし藤原の郷に行った。今ではいい具合に古びて、いいロケ地になっている藤原の郷だが、当時は素木の匂いもかぐわしい新築のセットであった。
『平清盛』では神戸に行き、『おんな城主直虎』では井伊谷に行き、『真田丸』では大阪城に行った。好きな大河は必ずといっていいほど聖地巡礼に行く。まあ、できるだけ、ではあるが。
単独行であったり、同行者がいたこともあったが、私にとっては聖地巡礼をすることは大河ヲタ活の中でも重要な位置を占める。
「ああここで推しが空気を吸っていたのね……」という歴史ヲタに特有のアレだ。「あれ? 『琉球の風』の主人公たち(啓泰と啓山)は実在の人物じゃないんじゃない?」とか言いたい人いるかもしれませんが、かれらは我々視聴者の心の中にいるんです……!!(駄目なヲタクのタワゴト)
だから、龍雲丸も居る、井伊谷に。
それと史実上のかれらについて調べること。
どの説が採用され、どのエピソードが削られたか。どんなキャラクターにされているか。
そこから見えてくる脚本家や演出家の意図を知るのもおもしろい。とある大河では悪役だった人物が、別の大河では主人公になっていたり、とにかく歴史創作と歴史を知ることは楽しい。
日本の歴史と関係のない場所は日本には存在しない。日本中が聖地になる。どこを旅したって何かにぶつかる。それはとても楽しいことだ。私は今も家族との旅行でもときどきこっそり抜け出して歴史っぽいポイントに立ち寄ったりしている。

そして『いだてん』である。
私はもともと当代の中村勘九郎さんのファンであった。
中村屋のお兄ちゃんとして、テレビの密着番組でも有名な方であったが、未だ勘太郎と名乗られていた頃、『新選組!』で藤堂平助を演じられたことで私のファン心は確定的になった。『組!』を見ていた人ならば、「へーすけの見切れ芸」に夢中になっていた人がいるだろう。
けっして画面の中央にはいなくとも、画面の片隅で、一瞬たりとも平助であることを止めない、勘太郎さんに私は夢中になった。あの頃の○ちゃんねるのへーすけスレ出身者が居たらお友達になりたい。中村勘太郎さんは藤堂平助という男の生と死をしっかと演じきった。
(そしてどうでもいいことだが、私は『さんまの大先生』に出ていた頃から前田愛ちゃんが大好きで、お二人がご結婚なさったときは「推しと推しがくっついた!! 信じられん奇跡!!(≧∀≦)」と喜んだものだった)
大河ヲタとして、勘九郎さんファンとして、『いだてん』は見逃してはいけない作品である。そしていだてんは現在も放送中であるが、放送開始時からどんどんおもしろくなっていってる。いや中身は戦争に向かってる超重めのシリアス展開まっしぐらであるからおもしろいというのは語弊があるかもしれないが、「見応えのある」という意味で、ここ数年の実験的・挑戦的大河のトップに君臨すると言っていい。
近現代という近いが故に書きづらい時代、史料が多く残っているが故の作劇の難しさ、たくさんの人物が関わる群像劇……と困難さを上げればキリがないというのにその困難を美しく飛び越えていっている大河である。
繰り返す。この大河を見ないのは、大河ドラマヲタ——いや、大河ドラマファンとして勿体ない。

閑話休題。
聖地巡礼の話に戻る。
私は勘九郎さん演じる金栗四三と生田斗真さん演じる三島弥彦が二人で世界に挑む、いわゆる「ストックホルム編」が一番好きだった。
まるで夢の中にいるかのようなハイキーな色彩に加え、二人の苦悩と喜びがしっかりと描かれた、素晴らしい数話だった。その象徴が、ストックホルム・オリンピックが行われたスタジアムである。
行きたい。
いや、でもな、外国やで。
私の中の関西人が冷静なツッコミを入れる。
ドラマの聖地巡礼で外国に行く。それはさすがにやべえんではないだろうか。
しかし調べてみたら既に何人かのツワモノが行ってらっしゃるらしいことがわかった。ヨーロッパ在住の方か、日本からの方かわからないが、すげえな。
あと特定班により、かれらが泊まっていたホテルの特定もとっくにすんでいた。すげえな、ホントすげえな。
そして9月末から10月初め、私はフィンランドにいた。
フィンランドに行くのは5月から決まっていた予定で、大河とは関係がなかった。フォロワーAさんとの二人旅であった。実をいうと日本にいるときから、「(フィンランド首都の)ヘルシンキからストックホルムまでどれくらいかかるんだろ?」と思ってはいた。飛行機嫌いなので、フェリーで見てみると、豪華客船で半日以上かかるのを知った。いやいやいや無理でしょ。単独行じゃあるまいし。私は心ひそかに諦めた。
しかしAさんは言った。
「慶さん、ヘルシンキの観光だいたい終わったからちょっと近隣に足をのばしませんか? どっか、行きたいところありません?」
なんと。なんと魅惑な言葉であろうか。私はつい呟いてしまった。
「…………ストック…ホルム……とか……無理です……よね…?」
「いいじゃないですか! 飛行機だと一時間で行けますよ! スウェーデンかわいい街だし、また行きたい」
なんとAさんは既に北欧諸国を回ったことのある人だった。
「国内旅行みたいなもんですよ!」とAさんは続けた。
「いいじゃないですか! どこ行きたいですか?」
「あっここ(スタジアム)と…ホテル…のロケ地に行きたい…です……両方とも地下鉄で3駅くらいのとこ…で…帰りは駅まで歩けるくらいで…」
「行きましょうよ! LCCだと安いし!」
私には彼女が天使に見えた。いや天使だったマジで。女神かも。
こうして、日帰り弾丸ストックホルム行きが決まった。

てなわけで、10月某日、私は某LCCに乗ってストックホルムに向かった。
天使のような女神のようなAさんも一緒である。
まあこの乗ったLCCが行きに二時間半遅れて、帰りに二時間半遅れて、予定が大きく崩れ、ヘルシンキ帰ってきたときにはへとへとだったんだけれどもそれはどうでもいいので割愛する。ただし、ノル○ェージャン航空、おまえは許さない。
ストックホルム・アーランダ空港に到着し、アーランダ・エクスプレス(成田エクスプレスみたいなもん。超速い)に乗る。
20分ほどで、ストックホルム中央駅へ到着する。EU内の旅行なので、出国・入国審査はなしでいい。


地下鉄T-Centralen駅から赤い14番線に乗り、北へふた駅。Stadion駅で居りて地上に上がれば、すぐにスタジアムは見えてくる。はずだ。あと隣に音大があったので、楽器持ってる音大生めっちゃいた。


関係ないが今回の旅、すべてグーグル兄さんに助けていただいた。兄さん無しではどこにもいけなかったに違いない。


ストックホルム駅構内にあったオリンピック記念碑。


きた…


きた……


キター!!!!!!!(≧∀≦)


これたぶんマラソン選手たちが出ていくあたりの門。


中から時計台を眺めて。


左右にこういうブースあったのですが、弥彦の応援してるときこんなところにいましたよね! 100メートルやってるメインスタンドから遠いってことだったので、こちら(左側・下の写真)かな? と思いましたが、また後でオンデマで確かめてみます。


これ登ってくるところでしょ!?


これはプレス席(机がある)。


これは貴賓席。

空の青さとトラックの赤、グラウンドの緑の3色の美しさに見とれる我々。もうどこから見ても美しくてですね…。


こんな感じのとこで弥彦がぽやんと内側を見るシーンありましたが、そこは現代のとは形が違っているようでした(内側に事務室みたいなのがあった)。


で、でかっ…


でかい正面入り口。ちょうど紅葉の季節だったのでまたそれも美しくてですね…。

正面入り口から旗立ててたあたりを真っ直ぐ見て。

右を見ても…


左を見ても…


階段下から上を見ても…美しい…。


バーもありーの。


トイレもありーの。

どうでもいいんですが、フィンランドではあまり思わなかったのですが、スウェーデンは我々が想像する「ザ・北欧!」な感じの金髪碧眼イケメン&美女であふれており、かれらの足の付け根は我々の腹ぐらいなんじゃないかと思う程の足の長さで、当然トイレも高く、「トイレが高いんだよ!」て泣いた弥彦の気持ちがわかりました…足が浮くんだよ!(泣)


トラックでは陸上やってるような子どもとか、ミリタリー的な方とかが、練習なさっておられました。


本当に美しい…。ずっと見ていたいスタジアムでした。

そして次は!!


そして我々は赤い14番線とは逆に行く、13番線に乗り、Centralen駅を通り過ぎて次の駅、Gamla Stan駅へ。それから地上に出ると、ストックホルムでも人気の観光地、旧市街エリアへ。ここあたりは『魔女の宅急便』のモデルになったことでも有名なエリアだそう。



ここだ!!!!

ストックホルム大聖堂のほぼ隣、コレクターズ・レディ・ハミルトン・ホテルが弥彦が飛び降りようとした大使館(の設定になっていたホテル)でした。後述しますブログさんの記事を見ますと、屋内は別のホテルかスタジオではないかということでした。
すぐそばに大聖堂があり、大変歴史のある建物の並ぶ、観光地エリア。


スウェーデンの町並みはいろとりどりでめちゃくちゃかわいかった…。


運河に沈む夕陽。


そして歩いてストックホルム中央駅に戻ってきました。もう感動。


駅舎の天井がこんな感じ。


何から何まで美しかったぜスウェーデン!!!!(まあ行ったとこ2ヶ所だけですけれど)


あと、スウェーデンに行ったら、是非スウェーデン式パンケーキを食べてみてください!!(誰とどこに行ってもグルメ旅になる私)薄いクレープみたいな感じ。

てなわけで日も暮れたので、我々は中央駅からまたアーランダ空港に戻り、ヘルシンキに向かったのでした…。ただしそこでまた二時間半の待ちぼうけをくらい、飛行機の離陸が遅れに遅れ、ヘルシンキ・ヴァンタア空港から電車乗って、ヘルシンキついたの夜の1時過ぎてましたわ!! 


おまえだけは許さないノ○ウェージャン航空…!!

(グーグル兄さんに聖地巡礼情報を入れてくれてた皆さん、本当にありがとうございました!!)

たとえ大河ドラマでなくても、すぐれた創作作品を見たときには、その登場人物が生きていた場所や舞台となった場所の雰囲気が知りたくなるものだ。いだてんでは熊本や浅草、明治神宮も聖地になる。
行ってみましょう。見てみましょう。
きっとおもしろさが数倍になっているはず。
まあフィンランドに『かもめ食堂』や『ムーミン』の聖地巡礼で行く人もいるし、いーじゃんねえ!!
まあ遠いので無理にとはいいませんが、ストックホルム・オリンピック・スタジアムことスタディオン。
皆様も立ち寄る機会があれば是非行ってみてください。
それだけの価値はある、本当に美しいスタジアムでした。
美しい美しいってそれ以外の語彙はないのか。ない!
これで終わりだよ!(治五郎先生風に)

P.S.このブログの写真ほとんどあいほんてんで撮りました。補正一切なしです。ヘタなデジカメより色綺麗よ、あいほんたん…。

【20191216追記】
最終回ラストで再び見られたストックホルムスタジアムことスタディオン、美しかったです! ここにホントに行ったんだなあと我が事ながら感動しました。
そして残念ながら先日焼失してしまった首里城が再建なることを祈ります。
サントリー美術館の図録『琉球 美の宝庫』を買うと全額が首里城再建のための資金となるそうです!
https://www.suntory.co.jp/sma/info/d/004752.html
『琉球の風』再放送も希望だよ! 頼むよNHK!(治五郎先生風に)

【20231013追記】
はてなブログからnoteに転記。『琉球の風』のBOX出ましたイエイ! 
その後『いだてん』は再放送を一度されたのち、オンデマンドからも削除。噂では権利関係でそう簡単には再放送できないという話を聞きました。
BOX出てますので、是非BOXでどうぞ!!


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