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営業職の「労働生産性」を上げる方法をマッキンゼーが発表

永吉です。今日は、大手コンサルファームのマッキンゼーが出した「日本企業の労働生産性」のレポートをまとめました。

レポート詳細
https://www.mckinsey.com/jp/~/media/mckinsey/locations/asia/japan/our%20insights/why%20is%20japan%20sales%20productivity%20so%20low%20japanese.pdf

日本企業の労働生産性はコロナ前の2018年時点で、就業1時間当たりの付加価値US$46.8なのに対して、アメリカはUS$74.7。1.6倍の差があります。

この労働生産性は、「営業ROI」を使って算出されています。

営業ROIとは

営業ROIとは、いかに少ない投資で大きな成果を出しているかを測る指標で、企業は指標から営業のパフォーマンスを判断することができます。

営業ROI:投資に対して何倍のリターンが得られるかを見た指標
営業コスト(投資):営業人件費、旅費、その他経費(営業活動を行うためにかかるコスト)
リターン:営業の結果として得られる粗利

日本企業の営業ROI平均値は、営業コストの2.5倍~10倍程度粗利を稼いでいます。マッキンゼーが持っているグローバル企業のデータ(約3,500企業)によると、グローバル企業の営業ROI平均は、営業コストの4~5倍の粗利を稼ぐのがグローバル平均となっていました。日本企業の労働生産性が低い要因は、営業ROIの低さが関係しているのではないかとマッキンゼーは予測し、それを裏付けるための説明を行っていきます。

下記図は、グローバル企業の労働生産性推移をグラフ化したものです。グラフからも分かるように、日本は主要先進7か国の中でも労働生産性が最下位の状況が約40年続いています。

マッキンゼーレポート資料https://www.mckinsey.com/jp/~/media/mckinsey/locations/asia/japan/our%20insights/why%20is%20japan%20sales%20productivity%20so%20low%20japanese.pdf

営業ROIを細かく分解していき、その詳細を日本企業とグローバル企業で比較してみたのが下記図となります。日本企業は営業コストがグローバル企業よりも高いのに対して、それに対する成果(粗利)が少ない結果、日本企業はグローバル企業の中でも、労働生産性が低い状況が続いていることが分かります。

マッキンゼーレポート資料
https://www.mckinsey.com/jp/~/media/mckinsey/locations/asia/japan/our%20insights/why%20is%20japan%20sales%20productivity%20so%20low%20japanese.pdf

日本企業の営業ROIが低い2つの要因

  1. 粗利率が業界平均に比べ大幅に低い

  2. 営業コスト率が高い

1.粗利率が低い理由

粗利率が低い要因は、製品の競合優位性が低く、価格を高く設定できなかったり、コスト競争力がなく、利益を価格に転嫁できない場合が考えられます。粗利率を低くしている日本企業に多く見られる事例です。顧客要望による、エンドユーザーへの無料での直接配送を請け負うことで、物流費が多くかかり、結果粗利率に影響してくる。

粗利率の改善方法としては、プライシング改革を提案します。プライシング改革とは、値上げ交渉、オプション販売、高利益の顧客へのポートフォリオ転換などを導入することで、粗利率の改善に繋がります。

2.営業コスト率

日本企業の営業1人当たりの売上高平均値が、グローバル企業と比較してかなり低い結果となっています。その理由は4つあります。まず、営業一人一人の役割が不明確のため、顧客数や案件数が低く抑えられてしまっています。例えば、チーム全員で顧客対応することが多いため、1人当たり担当する顧客数や売上が、グローバルと比較して低くなってしまっています。

もっと役割を明確化し、若手にも権限を委譲して活躍させることが必要です。

2つ目に、営業が受注後の顧客対応に時間を多く割くことが日本企業の特徴です。グローバル企業の多くでは、営業の役割は受注までであり、受注後はカスタマーサービス部門などが役割を果たします。日本では、「お客様第一主義」で、受注後も顧客から要望された詳細資料などを受け、会社の「顔」として最後まで責任を果たすのが営業という文化が強い傾向にあります。

ここでの、改善策としては、営業にはより多くの顧客数に対応できるように、受注後の業務はカスタマーサービス部などを置くことで、結果としてサービスの質が向上し、お客様により大きな価値を提供することができ満足してもらえる。

3つ目は、社内会議やそのための資料作成時間が、グローバル企業と比較して多い傾向があります。

改善策としては、経営トップが率先して資料枚数を大幅に削減し、限られた情報の中で意思決定を行っていく覚悟を持たなければ、社内資料が減ることは難しいです。

4つ目は、営業効率率である。グローバル企業はデジタル化により業務が効率化されている。日本はデジタル化が大幅に遅れており、ここで営業効率性に差が生じている。営業の効率性が低く、販管費率が高いということは、それだけで価格面での勝負が難しい。

今後、新興市場において日本がシェアを拡大して成長するためには、グローバル競合並みの効率性が必須となる。

営業コスト率を改善するためのアプローチ

①営業プロセスの徹底した見える化とシステム化

不明瞭な責任・役割分担により生じる重複業務を防ぐためには、まずは自社の状況を把握する必要があります。その上で、「あるべき営業プロセス」を定義し、そのプロセスごとの状況把握と管理がしやすいようにIT・デジタル化を進めることを行う。

②専門性・知見の集約と共通化

営業が培った知見やノウハウは会社の資産です。その資産を属人化させないために、ノウハウの公開、資料のアーカイブを行う社員への賞の授与など、少しずつ共有が評価される文化への転換を図ることが重要です。

③マネジメントの「腹決め」と意思決定のインフラ整備

経営陣が現場に頼り過ぎず、意思決定に必要なファクトを得るためには、データベース構築も重要である。顧客別に売上・費用の実績を紐づけて、顧客別の利益率を管理し、意思決定に必要な情報を常に取得できる環境整備を整えます。その意思決定を現場に落とし、現場が同じ目標に向かって動き出すことが重要です。

マッキンゼーレポートを読んでみて

日本企業の労働生産性がグローバル企業の中で順位が低いことを数字で知ることができた。労働生産性を改善していくためには、社員1人1人の責任レベルを上げること、経営者が現場に任せることなどが今の日本企業に必要だということも分かった。これまでの日本文化に沿った営業スタイルを続けることは、世界で戦うには難しくなり、近い将来では国内でも日本文化の営業スタイルでは、ネット時代には勝てないと思った。

ここで示したアプローチを企業で実践し、日本企業の営業ROIを上げることができれば、日本企業はグローバルで戦えると思う。日本の製品の品質は世界の中でもトップレベルだから。