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おわりに

 前著『社員が自主的に成長する「全員活躍チーム」の作り方』(幻冬舎)を初めて世に出してからおよそ3年が経ちました。
前著はチームに関する理論やチーム作りの手順、またリーダーの“在り方”など、管理職やリーダー向けにチーム作りに必要な手法とマインドの両方について本当に必要なエッセンスを簡潔に盛り込んだもので、幸いにも「職場でチームをどのように作っていけばいいのかがわかった」という声を多くいただきました。
 しかし、一方で、現場でチームをリードしていく管理職やプロジェクトリーダーは、実際には複雑かつ様々な難局にぶつかることが常です。
よって支援させていただいているお客様には度々助言をさせていただいていますが、そうでないリーダーのみなさまにも何とかお役に立てないかと考え、手法や成果ともに大きく影響する「リーダーの在り方」というテーマを中心に本書を執筆することにしました。
手法や形を真似して実行しても、機能するとは限らず、手法などを生かすためのマインド・考え方・感情、言い換えると「在り方・生き方」をさらに詳しく扱わざるを得なかったからです。
 本書の執筆を行った今年は奇しくも明治150年にあたり、NHK大河ドラマ『西郷どん』は明治の大英傑であり、日本のトップリーダーだった西郷隆盛の生涯を描いたものでした。その遺訓集である『西郷南洲翁遺訓』には、次のような教えがあります。
「何程制度方法を論ずるとも其の人に非ざれば行はれ難し。人有りて後方法の行はるるものなれば、人は第一の宝にして己れ其の人に成るの心掛け肝要なり」
 現代語に訳すと、どれほど制度や方法論を論じても、それにふさわしい人物でなければ上手く行われない。その人があってはじめて方法や制度は上手く機能するのであるから、人は第一の宝で自分がそのような人物になる心がけが大事である、という意味になります。前述の職場の現状と相まって、まさに本書が生まれるきっかけとなった言葉でもあります。
 人は思考と感情の両方を持ち合わせています。理屈・理論通りに人は動くわけではなく、感情や価値観としっかり向き合って部下育成やチームをリードする必要があります。
 これら”在り方”をテーマとして扱うに際し、どのようにみなさんにお伝えすれば良いのか、私にとっては高いハードルでしたが、何とかここまで進めることができ、あとはみなさまのお役に立つことを祈るばかりです。
 本書では、できるだけ事例を盛り込むようにしましたが、みなさまの職場ではそれらをヒントにして「知行合一」、自分に合うようアレンジし、実践して修正を繰り返し、自分なりのリーダーの”在り方”を探求していただけることを願っています。


 本書の出版にあたり、「はじめに」でも触れた恩師・有馬正能先生をはじめ、日頃「綜学」の学びの場でご教授いただいている林英臣先生、また様々な西洋知見を教えていただいた田近秀敏先生、そして、たくさんの議論におつき合いいただき、どのように書くべきかを深めていただいた総合法令出版の田所陽一様、編集協力の廣瀬智一様、そして弊社企画部の實光まみさんに心より感謝申し上げます。
 最後になりますが、西郷隆盛が大切にしていた「敬天愛人」という言葉は、企業や組織、チームに当てはめて言うならば、まさに「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を大切に(敬天)、そして(天が人を愛するように)人に誠実さをもって信頼関係を築く(愛人)という、リーダーが探求すべきことを一言で表すものです。
この「敬天愛人」を胸に刻み、みなさまが中心となって職場・組織に「全員活躍チーム」を作っていただければ幸いです。

小笠原健

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