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時空を超えて同じ悩みを抱える、ジョーとわたし

150年前を生きるジョーと今を生きるわたしの悩みが、ぴったりと重なるその瞬間。

昨年公開された新しい「若草物語」には、正直あまり期待していなかった。筋金入りの90年代育ちのわたしにとって、ジョーは永遠にウィノナであり(ジョニー・デップのタトゥーかよ)、誰も代わることができないと信じていた。ところが、いざ観に行ってみると、なんとわたしは劇場で号泣してしまうのだった。

シアーシャ・ローナンが演じるジョーは、とにかく落ち着きがない。うれしいことがあったときの瞳の輝きにドキドキさせられ、おなかの底から湧き上がるような怒りのエネルギーにハラハラさせられる。観ているほうも忙しいが、結局はジョーのテンポに巻き込まれて、いつの間にか彼女の気持ちに寄り添っていることに気づく。

本作は時系列が複雑に絡み合って進んでいくので、途中で迷子になる可能性もあるだろう。一方で、その演出は感情の波が一気に押し寄せてくる起爆剤にもなっており、わたしはその仕掛けにまんまとハマって涙を流した。そしてその演出を底辺で支えていているのは、アレクサンドル・デスプラの息を呑むような美しさを帯びた音楽だ。

(ここから若干ネタバレ)終盤でジョーが泣きながら母親に訴えるシーンがある。「どうしようもなく孤独なの!」……ここにきて急に、150年前を生きるジョーと現代を生きる自分の悩みがぴったりと重なってしまい、ハッとする。結婚だけが女性のしあわせではないと頭では理解しているのに、結局のところ孤独を感じてしまうのだ。この作品を観て、特にこのセリフが刺さったというひとは絶対に多いはず。

しばらく前、小学校時代ぶりに小説の『若草物語』を読んだ。原作者のルイーザ・メイ・オルコットは自分の半生をこの作品に描き、ジョーに自分の魂をそそいでいる。彼女自身も活動家であり、さまざまな社会の不条理と闘ってきたことからも、この作品が単なる小説で終わることなく、当時を生きる少女や女性たちを勇気づけてきたのだろうと想像できる。

そして、21世紀。「その生き方で、本当に満足している?」と、オルコットに問いかけられつつ、どこか応援してもらっているようなわたしがいる。

ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語
監督/グレタ・ガーウィグ
出演/シアーシャ・ローナン
製作/米国(2019年)


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