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KIRINJIの歌詞から「短歌」のヒントを得るわたし

魔法みたいな言葉でつづられている日常の風景や感情の機微。

わたしは大人になるまで「歌詞」というものに注目してこなかった。というのも、例えばJ-POPを聴いても、メロディや伴奏しか入ってこないのだ。おそらく、子どもころからピアノやオーケストラで演奏していたこともあって、基本的に歌詞のない世界で音楽をたのしんでいたからだと思う。そもそもテレビっ子でもなかったし、同世代で懐メロの話になっても、ほとんど話についていけないし、カラオケに行っても歌詞を覚えていないので、レパートリーが乏しく一緒にうたうことができない。

はじめて歌詞の意味をこころから理解したのは、26歳のとき。当時仕事をやめたばかりで、朝ドラ「とと姉ちゃん」を見ていた。その主題歌が、宇多田ヒカルの「花束を君に」だった。ちょうど宇多田ヒカルが音楽活動を再開するときにつくられた曲で、亡くなった母・藤圭子への想いが歌詞に込められている。はじめて聴いたとき、そのやさしく力強い言葉の一つひとつが、わたしの中に入ってくるのを感じた。そして祖父のことが重なってしまい(まだ存命中ではあったが)、涙を流さずにはいられなかった。宇多田ヒカルはただのすごいアーティストじゃなかった! と感動したと同時に、わたしはそこからはじめて歌詞をきちんと聞くようになったのだった。

今年に入って短歌をはじめたこともあって、より言葉に敏感になってきたと感じる。とりわけKIRINJIの歌を聴くときがそう。KIRINJIのことは全然知らなかったのだけど、好きなひとが聴いていたのをきっかけに自分でも聴くようになった……というよくあるパターン。音楽性はさることながら、とりわけ歌詞がわたしのこころを鷲掴みにした。日常の風景や感情の機微が魔法のような言葉でつづられていて、夢見心地になったり、とことん感傷に浸ったり、とにかく歌詞に並べられている言葉すべてにセンスを感じる。これはひとに共感してもらえるかわからないけれど、なんだか穂村弘の世界観にも似ている(少なくとも堀込兄弟の歌声とほむほむの地声は似てると思う)。

いつもSpotifyの「This is KIRINJI」を聴いていて(たっぷり4時間分)、とくに好きな曲はこの「愛をあるだけ、すべて」という2018年のアルバムに収録されている。短歌づくりで言葉の組み合わせを考えるときも、KIRINJIはインスピレーションを与えてくれるので、いまのわたしにとってかなり優先事項が高い生活必需品。なかなかファンのひとに出会えないので、とりあえずおすすめすることからはじめてみたい。そんなわけで、番外編でした!

愛をあるだけ、すべて
KIRINJI
Universal Music/2018年

This is KIRINJI by Spotify



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