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「やる気がある」人も実はいろいろ、コンピテンシーを使って違いを考えてみた

「やる気がある」という表現。
 
「やる気がある」ということが当たり前ではなくなっている今、「やる気がある」人材が重要であることに疑いの余地はありません。
 
しかしながら「やる気がある」といわれる人達の中にも、いろいろな種類の「やる気」の持ち主がいます。異なる「やる気」の種類があるにも関わらず、すべて「やる気」と一括りにされてしまっていることがあります。「やる気」の種類を適切に理解せずに、「やる気」がある人ということでみんな同じように活用・登用してしまうと、適切な成果につながらないだけでなく、せっかくの貴重な「やる気」と役割がミスマッチを起こすこともあります。
 
それでは「やる気」の種類はどのようにすれば見分けることができるのでしょうか。その方法のひとつがコンピテンシーです。コンピテンシーとは、成果に結びつき、測定可能で、開発することもできる特徴があることから、人的資本経営時代にもますます重要になると以前に記事に書きました。

今回はコンピテンシーを使って、異なる「やる気」の種類と、「やる気」の種類に応じた適切な配置について考えてみたいと思います。



達成重視

いくつか種類がある「やる気がある」人の中で、最もわかりやすい「やる気」の種類は、達成重視です。達成重視を「やる気」として持っている人は、現状に満足せず、自分自身や組織の目標を自ら高い水準で設定し、達成するまで粘り強く取り組みます。
 
達成重視は特に経営職には期待したい特性です。誰かに言われたから、ステークホルダーに期待されているから、ということではなく、自分の意志でとにかく企業の価値を向上させたいという飽くなき欲求をもつ人は、経営職として大変心強い存在といえます。
 
逆に達成重視ではない「やる気がある」人では、一時的に高い成果を追求する行動を選択として発揮することはできても、継続的に事業成長を期待され続ける経営職の役割を担うことは早晩つらくなってきます。また周囲の成果に対する熱意を高めることも難しいでしょう。
 

顧客サービス重視

二つ目の「やる気」の種類は、顧客サービス重視です。
 
顧客サービス重視の「やる気のある人」は、社内外の顧客のニーズを迅速かつ正確に察知し、それに応えようとします。
 
営業や開発などのフロントの役割であっても、財務や人事などのバックの役割であっても、専門性で価値を提供するプロフェッショナル職に特に適した「やる気」の種類です。顧客サービス重視の「やる気」を持つ人は、誰かに言われたからでもなく、自分のためでもなく、他者のために最善を尽くします。
 
顧客サービス重視の「やる気がある人」は、やる気があるように周囲からはみえないこともあります。それは組織の目標のためや、自分の成績のために行動を起こさないように見えるからです。高い能力をもっているにも関わらず積極的に見えない、しかし内外のお客様のためには全力を尽くす。そうしたやる気の発揮をする人は顧客サービス重視のコンピテンシーをもっている可能性が高いでしょう。
 

組織へのコミットメント

達成重視でもなく、顧客サービス重視でもない、しかし社内では大変「やる気がある」と見られる三つ目の「やる気」の種類は、組織へのコミットメントです。組織へのコミットメントをコンピテンシーとして持つ人は、組織目標の理解に積極的に努め、ときには自分自身の考え方や利益を犠牲にしてでも、組織のニーズを満たすことに全力を尽くします。
 
会社から見ると、組織へのコミットメントをもった管理職は大変心強い存在に見えるでしょう。自身を犠牲にしてでも、いわゆる身を粉にして目標の達成を目指す。会社の全体最適のために自部門の部分最適を無理に追求しない。
 
逆に組織へのコミットメントは高いものの、達成重視や顧客サービス重視が高くない人は、事業環境が不安定で何を目標とすべきかを自律的に考えることが求められる環境では、やる気を発揮することが難しくなります。自分を目標に合わせて貢献することを目指すため、そもそもの目標がわからないと献身のしようがわからなくなるためです。
 
 
 

コンピテンシーを理解することでハートに火をつける

このように一言で「やる気がある」といわれる人達も、コンピテンシーの観点からはまったく異なる特徴をもった人たちに見えます。
 
自他の「やる気」の種類を理解することは、ハートに火をつけるためにとても重要です。自分のやる気に火が付くのは、自ら目標を設定する達成重視なのか、他者のニーズを満たす顧客サービス重視なのか、はたまた組織のニーズを満たす組織へのコミットメントなのかを理解しておくことで、自他を動機づけして「やる気」を高めやすくなります。
 
自他のコンピテンシーを適切に理解することの大切さは、ハートに火をつけるだけではありません。「やる気」を適切に発揮するようにリスクを管理する目的でも大切です。
 
たとえば、達成重視のやる気をもつ人は経営職に適していると書きました。しかし達成重視の「やる気」をもつ経営職も万能ではありません。
 
最大の欠点は、達成のために何かを犠牲にするという特性です。世の中に「結果を出すためといってもまさかそこまでやらないだろう」というような不祥事が後を絶たないことと、達成重視の強い経営職の存在は決して無関係ではありません。
 
自分としても、周囲としても、どのような「やる気」で動いているのかをコンピテンシーを用いて適切に理解することは、行き過ぎた行動を抑えるリスク管理としても重要です。
 
このように「やる気がある」と一括りにするのではなく、コンピテンシーを使って適切に「やる気」の種類を理解することで、やる気を高めるとともに適切にリスクを管理することにも活用できます
 
最後まで読んでいただきありがとうございました!


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