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ルークの「裏切り」は裏切りじゃなかった!?【ツイステ5章後編2考察】

はじめに

こんにちは、Twitterとnoteでタイプ論考察とディズニー研究をしております遊々自適です。

1/25にツイステ5章後編2が公開されて、はや10日経ちました。自適の率直な感想としては、「後編1は拍子抜けだったが、後編2は素晴らしく良かった」というのが正直なところです。しかし巷では諸々騒がれているところがあるのはご存じの通り。

その最大の要因は、

・VDCでNRCがRSAに敗北したこと

・ルークがネージュの隠れファンであったこと

の2点であるように見受けられます。

確かに、これまでのストーリーの流れを考えると、この2つはかなり意外な展開であったと思います。「あんなに頑張ったのに勝てなかったの?」「ルークはあくまでヴィルの味方じゃなかったの?」等さまざまな疑問が浮かんでもおかしくありません。

そこで今回は、

・なぜルークは2度「裏切った」のか?

・なぜNRCは優勝できなかったのか?

をディズニー『白雪姫』を参照しながら紐解いていきたいと思います。

5章を『白雪姫』と照らし合わせる

まずはディズニーの『白雪姫』のあらすじを軽くおさらいしておきましょう。

 昔あるところに、美しい女王と姫がおりました。魔女たる女王は姫の美しさを妬んで使用人のようにこき使っていました。
 そんな彼女の日課は魔法の鏡に世界一美しい人物を問い、自身の美しさを確かめること。しかしある時鏡はその問いに「白雪姫」だと答えるようになりました。世界一でないと気が済まない女王は狩人に姫の暗殺を命じますが、彼は姫を逃がしてしまいました。鏡の答えでまだ姫が生きていると知った女王は、その身を醜い老婆に変えて姫に近づき、毒リンゴで彼女を仮死状態にしてしまいました。
 姫が逃げた先で出会った7人の小人たちは悲しみ、来る日も棺を拝んでいました。ある日そこに姫が恋した王子が現れ、弔いのキスをすると不思議なことに姫は目覚め、王子とめでたく結婚するのでした。

このストーリーの上で、自適の着目点は3つでした。

①美しき女王(=ヴィル)がどのようにしてその姿を地に落とすのか

②毒林檎(=エペル)がどのようにして白雪姫を射止めるのか

③狩人(=ルーク)がどのようにして女王を裏切るのか

良かった点をいうと、原作でいう「鏡」が「ネットの検索結果」になっているのはさすがだと思いました。「魔法の鏡」に問いかける感覚はいまいちピンときませんが、それは自分の評価を気にしてエゴサしたりいいねの数を気にしたりするのとほとんど同じだと思えばわかりやすいです。

①に関しては、ヴィルが何かしら姿を変えてくれることを想像していました。『白雪姫』において女王の変身シーンは名物と言っても過言ではありませんから。しかしながら、身なりを変える、弱った演技をする…などしてネージュに近づくような展開は見られませんでした。

②に関しても、エペルのネージュにも似た「愛らしさ」で彼を一度は負かす展開を個人的に期待していました。白雪姫も一度はリンゴの毒牙にかかっていますから。毒リンゴの役割がエペル自身ではなく、エペルの地元で作ったリンゴジュースに置き換わってしまったのは少し残念でした。

今回大きく話題になったのは③ですね。ルークの「裏切り」が発生すること自体は5章が始まる前からわかっていた方も多いと思います。ただ、引っかかるポイントとしては、「後編1で毒を飲まされそうになったネージュを助けたのが『裏切り』じゃなかったの?」というところですね。上記のポイントを時系列に並べてみると、確かに③→①→②という順です。展開の順序からすれば③裏切りのシーンは後編1で終わったはずであり、さらなる「裏切り」が発生したことに戸惑うのも無理はありません。原作の流れから外れ、「狩人の裏切り」が、どんでん返しのために大きく利用されすぎてしまったような気がします。VDCでの勝利も逃し、ルークのとんでもない「裏切り」も判明し、なんだかすっきりしない終わり方だと感じた方も多いのではないでしょうか。

それでも5章は「ハッピーエンド」だ

しかし完全に後出しになってしまいますが、自適はVDCでNRCが勝てないことはなんとなく予想がついていました。さらにいえば、ルークの1票差で負けることも大方。それがなぜなのか自問自答してみたところ、

1.ルークの役割が物足りなかったから。

2.いつだって勝利は善のものだから。

1に関して、個人的に後編1までは正直物足りませんでした。①、②のシーンがなかったことに加えて、ルークの物語における役割が「毒リンゴのジュースからネージュを助けた」だけ…と考えるとあまり意外性もなく、彼の存在感に見合わない活躍に終わってしまったように感じていました。

ではなぜルークの「隠れネージュファン」が多くの人にとって衝撃的だったのでしょうか。彼の『白雪姫』のキャラクターとしての役割は純粋な「狩人」だけでなかったのは、今では巷でも言われているところです。しかしストーリー公開前に狩人のみを投影させていた人にとって、彼は完全に予想外の動きをしてしまった、というところでしょう。ではその予想外の動きは何としての役割だったのか?というと、それこそが「王子」だったのではないかと思います。

彼はツイステキャラの中でただ一人、無属性魔法を光と闇の両方で出すことが知られています。自適も最初は白雪姫を殺しかけたが森へ逃した「狩人」の二面性の表れだと思っていました。しかし、よく考えてみるとこの「森へ逃す」という行為は優しいようでそうではありません。中世ヨーロッパにおいて森は恐ろしいところです。齢13の女の子が着の身着のままで入って無事でいられる場所ではありません。彼は自分の手を汚したくなかっただけで、彼女の命を見捨てたことに変わりはないのです。つまり、ルークの「光」の面は完全に別のキャラに由来していることになります。彼は我々が思っていたより「王子」だったのです。

『白雪姫』で王子がしたことはただ一つ、恋した姫の命を助けることです。これをストーリー順と照らし合わせると、ルークの「二度目の裏切り」は裏切りではなく、彼の「王子」としての役目だったと考えられます。そうすると彼がネージュの大ファンだったこともうなずけます。だって王子は最初から白雪姫の味方だったのですから。RSAが勝利してこそ、彼は自分の役目を全うしたといえるのではないでしょうか。

2に関しては、単純に原作になぞらえたらそうなってしまうからです。これはディズニーが一貫して示してきた姿勢です。ただ、ツイステという物語を知ってしまった我々にとって、RSAが勝利した「いつものハッピーエンド」は、「悪にとってのバッドエンド」なのだと身に染みてわかるようになります。しかし、ツイステというアナザーストーリーがあったからこそ、我々は悪の女王に好意を持ち、応援し、敗北というある種「当然」の結果を嘆くのです。これは今までのディズニーにはなかった新たな「ハッピーエンド」です。悪が主役な故にみんなが悪に感情移入し悪を疑似体験している。表面上の勝利を逃したとしても、これは悪にとって初めての「救い」といえるのではないでしょうか。

まとめ

以上、5章における二大「納得いかない点」を解説しました。まとめると、

・ルークの隠れネージュファンは「狩人による裏切り」ではなく、「王子としての務め」だった

・「主役」という表舞台に立てなかった悪にとって、ツイステの物語とそれに熱狂する我々そのものがこれ以上ない「救い」である

これらの解釈によって、後編2でモヤモヤしていた方の気分が少しでも晴れれば良いなと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。



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