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日々是暴食★トラウマめし【第35食】スジャータ村に散歩に行って激辛ブータン料理を食べた話

 スジャータ村に散歩へ行ってみた。 

牛多めな村のはずれ

 釈迦は6年続けた苦行に疑義を抱き前正覚山を下りた。その後ナイランジャー川で沐浴し、半死半生の状態で倒れていたところ、そんな姿を不憫に思った村娘のスジャータに乳粥をもらい体力回復。あまりの美味しさに感動し、これまで続けてきた絶食では悟りは開けないことを知った。

 後に釈迦は比丘たちに「中道」の大切さを説いた。極端はよくない、中を行けと。自らが体を虐めることでは聖者の目覚めに至らなかったことが中道を知る契機となったが、そのきっかけはスジャータの乳粥なのである。

 スジャータといえば「褐色の恋人」のキャッチフレーズのコーヒーフレッシュが有名だが、そのネーミングはこの故事からきている。もちろん、村に訪れた私は「スジャータ~、スジャータ~」と口ずさんだ。

ナイランジャー川に架かる橋。水は干上がっていた

 干上がったナイランジャー川にかかる橋を渡る。釈迦が悟りを開いたのは12月8日だが、私が訪れた年末はとくに朝夕が冷え込んでいた。川で体を洗ったのが11月だとしても相当寒かったと思う。もしかしたら釈迦は風をひいて、鼻でもたらしていたのではないか?

 川を渡り切ると小さな集落がある。ここがスジャータ村だ。小さな片田舎だが、スジャータを祀るスジャータ寺には観光客がひっきりなしに訪れていた。ガリッガリに痩せた金ピカの釈迦に粥をあげる娘さんの人形がかわいい。

参拝者で賑わうスジャータ寺
ガリガリなお釈迦様に乳粥をあげる場面が人形で再現

 スジャータが住んでいた家の後には巨大なストゥーパが造られていた。彼女が生きていたのは約2500年前。このストゥーパが造られたのも1000年以上前というからインドのスケールのデカさは半端ない。

スジャータが住んでいた家の跡はストゥーパ(仏塔)になっていた

 村をブラブラ。神様の牛がそこら中を闊歩し、子供たちが走り回る。裏路地は観光地ではないインドの田舎の風景がそのままあって実に楽しい。遠くに、田んぼのあぜ道を2頭のヤギを連れて歩く女性が見えた。電線がある以外は2500年前から変わらない光景かもしれない。釈迦はここにいたのだ。

昔から変わらぬ風景
長閑な風景が広がる
村の子供たち

 村のホテルでは観光客向けに乳粥を提供しているらしいがパスした。むかしネパール人の元嫁が牛乳で米を煮た夕食を作ってくれたことがあった。「たぶん日本人の口には合わないよ」と前置きされたが、実際美味しくはなかった。ぐずぐずに米が牛乳が溶け、たぶん砂糖も入っているんだろうか、変に甘くてダメだった。というトラウマがあるのでパス。

お坊さんが道を行き交うブッタガヤ
蛇使いが聴衆を集めてパフォーマンス
商店には野菜も。長期滞在なら自炊もアリ

 ブッタガヤの中心部に戻って夕食にありつこうとレストランを物色。急ごしらえで建てたように見える飲食店がそこいらにあるが、これはダライ・ラマの説法に訪れる坊さん向けのレストランなのだろうか? 

 当然ながらチベット系の店が多いのだが、ブータン料理は食べたことがないのでフラっと入ってみた。

掘立て小屋のようなブータンレストラン

 メニューは英語表記なので何となく雰囲気だけは伝わる。何を頼んだか覚えていないが、ブータンディッシュから何かのライスセットを注文。あとは写真から当時の記憶を紐解くしかないが、とにかく辛かったことしか覚えていない。

価格は安く300円あれば何でも食える

 ブータンでは唐辛子は野菜にカウントされる。高地で土地が痩せているのもあるだろうが、使われる食材はかなり質素な代わりに唐辛子をじゃんじゃん使う。そのためブータン料理は世界一辛いとも言われる。

 常に下痢気味な自分にはかなりリスキーだが「食べてみたい」という興味の方が勝つのは旅行あるある。高地でも収穫できる赤米、それに唐辛子と何かの野菜の炒めもの。それに辛いソース。このセットでおよそ250円くらいか?

赤米と辛い炒め物のセット。料理名は忘れた

 正直赤米の味はよく覚えていないが、白米よりは確実にボソボソしている。それに炒め物を乗せて一緒に食べたが、とにかく辛い。外は寒いが汗だくだ。甘いチャイが無ければ食べ切ることはできなかっただろう。

よくわからない食い物だがとにかく辛い

 しかし不思議なことに腹を壊すことはなかった。ブータン料理は油をそんなに使わないらしく、案外全体的にオイリーなインド料理よりも胃腸には優しいのかもしれない。代々木上原には日本人向けに洗練されたブータン料理専門店があるので、食べてみたい人は言ってみるのがいいだろう。

 ブッタガヤは観光地なので食べる物には全く困らない。カレーが飽きたらパスタや中華料理も食べれる。

豆菓子を売るお母さん
香ばしくて美味しい
チベット風焼きそば。客は坊さんばかり
ちょっと硬めのモモ
見た目があまり良くないが味は中々いけるチキン雑炊

 ブッタガヤには3日ほど滞在した。チベット僧はオールドスクールな格好とは裏腹に、カフェで甘いフラペチーノを飲みながらスマホで誰かと喋ってたりする。海外まできて托鉢するわけないし、そもそもインドに来れる外国人のお坊さんは金があるんだろう。

カフェでくつろぐお坊さんたち

 一方でインドの貧乏の度合いはリアルだ。お坊さんたちは身なりもよく綺麗。路上にいる皆さんの生活は中々に辛そうなのが伝わる。露天でみかんを買ったが少女が欲しいというので半分あげた。自分にできるのはそれくらいでして。

路上にたむろする人々
果物の露天商
みかんを分け分けした少女。本当はお金が欲しかったっぽい

 深夜3時、凍てつくホームからバラナシ行きの列車に乗った。

夜のブッタガヤ駅はかなり冷える

インド編<続く>

【写真・文】バーガー菊池
岩手県出身。花巻東高校卒。 実話ナックルズ編集部在籍の編集者。不良からエロまで何でもやります精神の何でも屋。注射を打ちながら毎晩暴飲暴食を繰り返すハゲ巨漢。